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厨房工事費の相場が分からない人へ|金額より先に考えるべきこと

こんにちは。
REDISHで飲食店の開業サポートを担当しているYです。
飲食店の開業相談を受けていると、かなり高い頻度で出てくるのがこの質問です。

「厨房工事って、結局いくら見ておけばいいんですか?」

ネットで調べると、
「100万円〜」「300万円〜」「1000万円超もあり得る」
…と、正直かなり幅が広くて、調べれば調べるほど分からなくなる方も多いと思います。
実際、相談の現場でも、

  • 見積もりを見ても高いのか安いのか判断できない
  • 業者ごとに金額が大きく違って不安になる
  • 後から追加費用が出ないか心配

といった声をよく耳にします。
結論から言うと、
厨房工事の費用は「設備そのもの」よりも、 「どんな考え方で設計するか」で大きく変わります。
同じ規模・同じ業態でも、考え方次第で数百万円単位の差が出ることは珍しくありません。

この記事では、
✔ 実際の相談現場でよくあるケース
✔ 厨房工事費が跳ねやすいポイント
✔ 最初に知っておかないと後悔しやすい考え方
を整理しながら、見積もりを見る前に知っておいてほしい視点をお伝えします。

そもそも「厨房工事費」とは何の費用か?

厨房工事というと、「シンク」「コンロ」「冷蔵庫」といった厨房機器そのものの価格を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、実際の厨房工事費はそれだけではありません。
開業時に必要となる厨房工事費は、大きく分けると以下の要素の集合体です。

  • 厨房機器の購入・搬入・設置費
  • 換気・排煙のためのダクト工事
  • 厨房専用の空調工事
  • 給水・排水工事(グリストラップ含む)
  • 電気工事(動力・容量増設含む)
  • ガス工事(配管・容量変更)

つまり厨房工事費とは、
「厨房機器+それを“安全に・問題なく使うためのインフラ一式」
にかかる費用だと考えると分かりやすいでしょう。
たとえば、高性能なコンロを導入しても、

  • 排気能力が足りず煙が充満する
  • 電気容量が足りずブレーカーが落ちる
  • 排水設計が甘く、営業後に詰まる

といった状態では、「料理ができる厨房」とは言えません。
この全体像を理解していないと、

  • 見積書を見ても「高いのか・安いのか」判断できない
  • 「これは別途です」「想定外です」と後から追加工事が発生する

といったトラブルに陥りやすくなります。
厨房工事費を見るときに重要なのは、金額の大小ではなく、「どこまで含まれているか」。
まずは「厨房工事費=設備+インフラの総額」という前提を押さえておきましょう。

厨房工事費の中で一番お金がかかるのはどこ?

結論から言うと、多くのケースで厨房設備費(機器+設置)です。
飲食店の開業費全体を見ても、厨房関連だけで内装費の4割前後を占めることは、決して珍しくありません。
客席は最低限でも営業できますが、厨房は「機能不足=営業不能」になるため、どうしてもコストが集中します。

設備の揃え方による大まかな目安

開業相談でよく出る目安感は、以下のようなイメージです。

  • 新品で一式揃える場合 → 500万円以上になるケースも多い
  • 中古機器・居抜きを活用する場合 → 100〜300万円程度に収まることが多い
  • リースを組み合わせる場合 → 初期費用を100万円前後まで抑えるケースもある

ただし、ここで注意したいのは、「できるだけ安くすること」=正解ではない、という点です。
たとえば、

  • 回転率が高い業態なのに処理能力の低い機器を選ぶ
  • 人員が少ないのに、動線が悪い大型厨房を組む
  • 電気・ガス容量をケチって将来の増設ができない

といった判断をすると、初期費用は安いても、営業が回らない厨房になります。
業態・席数・回転率・人員数によって、 「適正な厨房投資額」は大きく変わります。
厨房設備費は「削るか・削らないか」ではなく、「どこにお金をかけ、どこを抑えるか」を考える項目です。

揃え方 初期費用目安 メリット 注意点
新品で一式 500万円以上 故障リスクが低い/設計自由度が高い 初期投資が重い/回収に時間がかかる
中古・居抜き活用 100〜300万円 初期費用を抑えやすい 寿命・保証にバラつき/レイアウト制限
リース併用 初期100万円前後 キャッシュを残せる 月額固定費が増える/総額は高くなりがち
飲食店経営や開業、税務・集客に関するご相談を受け付けています。

厨房設備は「全部揃える」ほど危険

相談現場でよくある失敗が、「将来使うかもしれないので…」という理由で、開業時から設備を盛り込みすぎてしまうケースです。
たとえば、

  • ほとんど使わないまま置物になる大型オーブン
  • 「念のため」で入れた、明らかに過剰な冷蔵・冷凍庫
  • メニュー数や提供数に対してオーバースペックな製氷機

これらはすべて、初期費用の増加+厨房スペースの圧迫+動線の悪化という、開業初期に最も避けたい三重苦を生みます。
さらに厄介なのは、一度入れてしまった設備は、

  • 「使っていないのに邪魔」
  • 「でも外すのももったいない」

という状態になりやすく、後戻りができないコストになりがちな点です。
厨房設備の基本設計は、今のメニュー構成、今のオペレーション、今の人員数、この「今」に合わせること。
将来の拡張は、“入れ替えや増設ができる余地を残す”ことで対応します。
開業時の厨房づくりで大切なのは、「全部揃えること」ではなく、「ちゃんと回る状態を作ること」です。

床・排水・換気は「削ると後で詰む」ポイント

厨房工事の費用調整の話になると、どうしても削られがちなのが、床・排水・換気(ダクト)の3つです。
しかしこの3点は、一度手を抜くと、後から取り返しがつかない部分でもあります。

厨房の床

厨房は、水・油・洗剤が日常的に使われる場所です。そのため床材は、見た目や価格よりも、防水性・滑りにくさ・清掃のしやすさが最優先になります。
ここを安価な床材で済ませてしまうと、

  • 水が染みて下地が腐る
  • 油で滑ってケガをする
  • 清掃が追いつかず不衛生になる

といった問題が、営業開始後すぐに表面化します。しかも、厨房の床を後からやり直す工事は、数日〜1週間以上の営業停止が必要になるケースもあり、 単なる工事費以上の損失になることがあります。

排水・グリストラップ

「法律で決まっているから仕方なく付けるもの」という認識の方も多いですが、実際は逆です。
排水・グリストラップは、排水詰まり・悪臭の発生・下水逆流や近隣クレームを防ぐための、営業を守るための設備です。
ここを容量不足・簡易設計で済ませると、営業中に排水が流れなくなる、臭いが客席まで上がる、ビル管理会社や近隣から指摘が入る、といった営業リスクが一気に高まります。

換気・ダクト工事

換気・ダクト工事は、店舗の階数、排気の取り回し、屋上までの距離・経路によって、費用が大きく変わります。
特に、2階以上の店舗、ビルイン・地下店舗の場合は、想定していなかった工事が発生し、 100万円単位で費用が跳ね上がることも珍しくありません。
さらに、換気能力が不足すると、厨房が異常に暑くなる、煙や臭いが客席に流れる、スタッフの離職につながるなど、売上や人材にも影響が出ます。

空調・電気・ガスは「容量不足」が最大の落とし穴

厨房工事で一番怖いのは、工事がすべて終わってから、 「足りない」と分かることです。
実際に起きがちなトラブルは、調理中にブレーカーが頻繁に落ちる、想定していた火力が出ず、提供スピードが落ちる、夏場になると厨房が異常な高温になり、スタッフが持たない、など。
これらはすべて、設備の不具合ではなく、事前の「容量設計不足」が原因です。

なぜ容量不足が起きるのか

厨房機器は、「置けるかどうか」ではなく、「同時に使えるかどうか」で考える必要があります。

  • 電気:100V / 200Vの使い分け、単相か三相か、同時使用時の最大負荷
  • ガス:コンロ・フライヤー・オーブンの同時使用量、号数が業態・席数に合っているか
  • 空調:客席と兼用ではないか、厨房発熱量を加味した専用設計になっているか

後からの対応が難しい理由

電気・ガス・空調の容量不足は、分電盤の交換、幹線の引き直し、ガス配管の変更など、営業を止めないとできない工事につながることが多く、追加費用も高額になりがちです。

💡 必ず押さえるべきポイント

空調・電気・ガスの設計は、価格比較だけで決めてはいけない部分です。ここは必ず、飲食店の厨房工事に慣れている業者と一緒に、 「同時使用」を前提に設計してください。「今は大丈夫」ではなく、「繁忙時でも落ちないか」を基準に考えることが重要です。

厨房設備の入手方法は「正解が1つではない」

厨房設備の入手方法には、主に「新品」「中古」「リース」「居抜き」の4つがあります。
どれが良い・悪いという話ではなく、自分の開業条件に合っているかどうかで選ぶべき項目です。
判断の軸になるのは、今どれだけ資金に余力があるか、事業計画上、何年続ける前提なのか、開業後、追加投資ができる余地があるか、といった点です。

入手方法ごとの考え方

  • 初期投資をできるだけ抑えたい → 中古・居抜きを活用
  • 長期運営が前提で、故障リスクを減らしたい → 新品を中心に導入
  • 開業直後のキャッシュを残したい → リースを一部組み合わせる

よくある誤解として、「全部新品にしておけば安心」という発想がありますが、実際の現場では、想定より売上が立ち上がらない、運転資金が足りず、追加投資ができない、といった理由で、設備よりも資金繰りが苦しくなるケースの方が多く見られます。
「全部新品が安心」という考え方も一つ。 同時に、「資金が残る設計」も同じくらい重要です。
厨房設備は、完璧を目指すより、続けられる形を選ぶ。この視点を持っておくと、選択を誤りにくくなります。

飲食店経営や開業、税務・集客に関するご相談を受け付けています。

厨房工事で一番大切なのは「順番」

最後に、開業相談の現場で必ずお伝えしていることがあります。厨房工事は、思いつきや勢いで進めるものではありません。
基本の順番は、この通りです。

物件 → 業態・メニュー → オペレーション → 設備 → 工事

この順番が少しでもズレると、設備が入らない、容量が足りない、動線が破綻する、といった問題が起き、ほぼ確実に「やり直し」や「追加工事」が発生します。
特に失敗につながりやすいのが、「とりあえず設備を見に行く」「先に見積もりだけ取ってみる」という進め方です。

この段階では、何を作るのか、どう回すのか、どれくらい同時に使うのかが決まっていないため、正しい設備選定も、正しい見積もりも出せません。
結果として、思っていたより高い、想定外の工事が増えた、という状態に陥りやすくなります。
厨房工事で本当に大切なのは、「いい設備を選ぶこと」ではなく、「正しい順番で決めること」。
この順番を守るだけで、無駄な出費や遠回りは、かなり減らせます。

まとめ|厨房工事は「設備の話」ではなく「経営判断」

ここまで見てきた通り、厨房工事は単なる設備選びの話ではありません。

  • 厨房工事費は、インフラ一式を含めた総額
  • 削っていいところ・削ってはいけないところがある
  • 設備は「全部揃える」ほど、経営リスクになる
  • 入手方法に正解はなく、事業計画次第で変わる
  • そして、順番を間違えると無駄な出費が増える

これらはすべて、「飲食店をどう立ち上げ、どう続けるか」 という経営判断の一部です。
厨房工事だけを切り取って考えると、どうしても見積もりの金額や設備のグレードに目が行きがちですが、本当に大事なのは、その選択が、開業後の経営を楽にするかどうか。

開業・経営の判断に迷ったら

もし今、この物件・この業態で本当に成り立つのか不安、初期投資と運転資金のバランスに自信がない、工事や設備の話が、経営視点で整理できていない、そんな状態であれば、厨房工事の前、一度立ち止まって整理する価値があります。

💡 REDISHの相談メニュー

● 飲食店開業全体の資金設計
● 業態・オペレーションを踏まえた設備投資の考え方
● 「やるべきこと」と「まだやらなくていいこと」の切り分け

厨房機器の相談だけでなく、まだ物件を探している段階、事業計画をどう詰めればいいか分からない、この投資額で本当に回るのか不安、といった内容でも大丈夫です。「失敗しにくい順番」を確認するための相談として、気軽に活用してください。

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※田邊が出られない場合は、沢田または金山がご対応いたします。