Column
コラム
飲食店を開業しようとすると、まず直面するのが「家賃の壁」です。
売上予測を立て、FLコストを試算し、損益分岐点を計算していくと、
家賃がどれだけ経営に重くのしかかるかを実感するはずです。
一般的に、家賃は売上の10%以内がひとつの目安と言われます。
それを超えると、少し売上が落ちただけで一気に赤字に転落します。
だからこそ、多くの開業者が考えます。
「家賃が安い物件に入ろう」
「雑居ビルの空中階なら安い」
この判断自体は間違いではありません。
問題は、
“家賃だけ”で判断することです。
家賃は確かに固定費です。
しかし、立地は単なるコストではありません。
立地は「売上の作られ方」を決めます。
路面店なのか。
雑居ビルの空中階なのか。
この違いは、家賃の差以上に、売上構造の差を生みます。
たとえば、家賃100万円の路面店と、家賃40万円の空中階。
数字だけ見れば、空中階の方が安全に見えます。
しかし実際はどうでしょうか。
路面店は通行量という“無料広告”を持ちます。
一方、空中階は自力で集客を作らなければなりません。
つまり、家賃が下がった分、
「集客コスト」と「ブランド構築コスト」が上がるのです。
家賃を下げたつもりが、広告費や時間という別のコストを払い続けることになる。
これが、雑居ビルで苦戦する店の典型パターンです。
重要なのは、家賃の安さではなく、
あなたの業態が、その立地で売上を作れる構造になっているかどうか。
ここを設計せずに入居すると、「安いはずなのに、なぜか苦しい」という状態に陥ります。
立地選びは、節約ではありません。戦略です。
雑居ビルが安い理由を理解していますか?
雑居ビルの家賃が安いのは、単に大家さんが優しいからではありません。
そこには明確な理由があります。
- 視認性が低い
- 直接導線がない
- ビル全体の管理品質にばらつきがある
- 他テナントの影響を受けやすい
つまり、
「集客コスト」や「運営リスク」が高い分、家賃が安いのです。
あなたが背負うリスクが増えている。
ここを理解せずに入居すると、後から苦しくなります。
もう少し具体的に言えば、こういうことです。
視認性が低いということは、
“存在を知ってもらうまでに時間がかかる”ということです。
直接導線がないということは、
“衝動来店がほぼ起きない”ということです。
管理品質にばらつきがあるということは、
“自分ではコントロールできない要因で評判が左右される”ということです。
他テナントの影響を受けやすいということは、
“自店の努力だけでは解決できない問題が発生する可能性がある”ということです。
つまり、雑居ビルは
「家賃は安いが、コントロールできない変数が増える立地」
なのです。
路面店は家賃が高い代わりに、
ある程度“売上の下支え”を立地がしてくれます。
一方、雑居ビルは立地が助けてくれることはほとんどありません。
すべてを自力で作る覚悟が必要です。
ここを理解せずに、「とりあえず固定費を下げたい」という発想で入居すると、半年後にこうなります。
「家賃は安いのに、なぜかお金が残らない」
問題は家賃ではありません。立地と業態の“構造ミスマッチ”です。
本当に怖いのは“固定費”ではなく“売上の不安定さ”
路面店は家賃が高い代わりに、通行量という「無料の広告」を持っています。
一方、雑居ビルの空中階はどうでしょうか。
・店の存在を知ってもらうまでに時間がかかる
・衝動来店がほぼ起きない
・看板や導線に制限がある場合も多い
つまり、
売上が安定するまでに時間がかかる。
家賃が安くても、売上が不安定なら資金は減ります。
「安い物件なのに苦しい店」は、この構造を読み違えています。
飲食店経営で本当に怖いのは、固定費の高さそのものではありません。
怖いのは、売上の波が大きいこと。
月商が安定して800万円出る店と、400万円〜900万円を行き来する店。
平均値が同じでも、
後者のほうが資金繰りは圧倒的に苦しくなります。
なぜなら、飲食店は
- 仕入れは先に発生する
- 人件費は毎月固定でかかる
- 家賃は待ってくれない
からです。
売上が安定しない店は、
常に「来月大丈夫か?」という不安を抱え続けることになります。
雑居ビルの空中階は、立ち上がりが遅く、売上が読みにくい傾向があります。
特に開業初期は、
認知ゼロ
→ 来店ゼロ
→ 口コミゼロ
という状態からのスタートです。
この期間を想定せずに入居すると、
「思ったより売上が立たない」
「広告費を追加でかける」
「資金が減る」
という負の連鎖に入ります。
家賃が安いことで守られるのは、
あくまで“理論上の損益分岐点”です。
しかし実際の経営は、
時間軸と資金残高との戦い。
売上が安定するまでの期間を設計できていないなら、家賃が安くても安全とは言えません。
立地選びで見るべきなのは、「家賃が安いか」ではなく、
「売上が安定するまでの道筋が描けているか」なのです。
雑居ビルで成功する店の共通点
では、雑居ビルはダメなのか。そんなことはありません。
実際に成功している店もあります。共通しているのは、次の3つです。
① 目的来店型の業態である
SNSや予約サイトで探して来る店。
口コミで“わざわざ行く”店。
こうした業態は立地依存度が低い。
雑居ビルとの相性は悪くありません。
むしろ、静かな空間や隠れ家的な雰囲気を好む客層には、
空中階という立地そのものが価値になる場合もあります。
重要なのは、
「通りがかり」ではなく「指名」で来てもらえる店かどうか。
もしあなたの店が
- 特定の料理ジャンルで探される
- シェフやコンセプトに魅力がある
- 価格ではなく体験で選ばれる
のであれば、立地の弱さは致命傷になりません。
逆に、
- ランチの通行客頼み
- 価格訴求中心
- 回転数勝負
の業態は、空中階との相性が悪い傾向があります。
② 導線を自分で作っている
看板が弱いなら、SNSを強くする。
通行量がないなら、紹介を増やす。
「場所に頼らない集客設計」を持っている店は強い。
立地に甘えない設計ができるかどうか。
ここが分岐点です。
成功している店は、
“偶然の来店”を待っていません。
- Googleマップ対策
- Instagram設計
- LINEによる再来店促進
- 予約導線の最適化
こうした仕組みを積み重ねています。
雑居ビルは「放っておいても入る立地」ではありません。
だからこそ、
マーケティング力がそのまま結果に直結する立地とも言えます。
③ ビル全体を“経営資源”として見ている
他テナントと仲良くなる。
相互紹介をする。
送客し合う。
雑居ビルは、孤立すれば不利ですが、
連携すれば武器になります。
路面店では生まれない横のつながりが、
売上を作ることもあります。
成功している店は、
ビルを「箱」としてではなく、
ひとつの小さな商圏として見ています。
- 1軒目利用 → 2軒目紹介
- ランチ利用 → 夜利用
- 同フロア連携イベント
ビル全体の回遊を作れる店は強い。
逆に、
「自分の店だけが良ければいい」
という発想で入ると、
孤立し、集客の難易度が一気に上がります。
💡ポイント
雑居ビルは、弱い立地ではありません。
“経営力が試される立地”です。
立地に助けてもらう店は向いていない。
立地を設計で補える店は向いている。
この違いを理解しているかどうかが、
成功と失敗の分岐点になります。
内見で見るべきは“部屋”ではない
物件を見るとき、多くの人は内装や広さばかり見ます。
しかし本当に見るべきなのは、
- ゴミ置き場の管理状態
- 共用部の清掃レベル
- エレベーターの稼働状況
- 他テナントの業態
- ビルの客層
あなたの店は、そのビルの一部になります。
ビルの質は、あなたの店の印象になります。
なぜなら、お客様は「店」だけを見ているのではないからです。
ビルの入口の雰囲気。
エレベーターの匂い。
廊下の照明の明るさ。
隣の店の音や客層。
それらすべてが、無意識に“その店の評価”に影響します。
たとえば、
ゴミ置き場が荒れているビル。
共用部にタバコの吸い殻が散乱しているビル。
どれだけ店内を綺麗にしても、
第一印象はマイナスから始まります。
逆に、共用部が整い、
テナント同士の関係が良好で、客層が落ち着いているビルは、それだけで信頼感があります。
内見は、
「部屋を見る時間」ではありません。
ビル全体の“経営環境”を観察する時間です。
さらに言えば、
- ゴミ出しルールは守られているか
- 夜の時間帯の雰囲気はどうか
- 週末のエレベーター待ち時間はどうか
- 既存店は繁盛しているか
時間帯を変えて最低2回は見ることをおすすめします。
昼と夜では、ビルの顔はまったく変わります。
物件契約は、数年単位の固定費を背負う決断です。内装は変えられます。
しかし、ビルの体質は変えられません。
ここを見誤ると、後から取り返しがつかなくなります。
「安い」ではなく「合う」で選ぶ
雑居ビルが悪いのではありません。
安いから、という理由だけで選ぶことが危険なのです。
- あなたの業態は目的来店型か
- 広告戦略は設計されているか
- ビルとの相性は良いか
ここまで考えた上で入居するなら、雑居ビルは十分に戦える選択肢です。
重要なのは、
「固定費を下げること」ではなく、 「売上構造に合った立地を選ぶこと」。
立地は節約対象ではありません。経営モデルの一部です。
📊 家賃比率シミュレーション(モデルケース)
■ 前提条件
- 路面店:家賃100万円
- 空中階:家賃40万円
| 月商(万円) | 路面店 家賃比率 | 空中階 家賃比率 |
|---|---|---|
| 300万円 | 33.3% | 13.3% |
| 500万円 | 20.0% | 8.0% |
| 800万円 | 12.5% | 5.0% |
| 1,000万円 | 10.0% | 4.0% |
▶ 解説
路面店は月商1,000万円でようやく家賃比率10%
空中階は月商500万円で8%まで下がる
一見すると、空中階の方が安全に見えます。
しかし忘れてはいけないのは、
この表は“売上が出ている前提”だということです。
売上が安定しているなら、
路面店は強い武器になります。
売上を自力で作れるなら、
空中階は高収益モデルになります。
つまり、
家賃の問題ではなく、売上再現性の問題。
📊 路面店 vs 空中階 売上構造比較
| 売上構成要素 | 路面店 | 空中階 |
|---|---|---|
| 通行客流入 | 50% | 10% |
| 目的来店(予約・SNS) | 30% | 60% |
| リピート客 | 20% | 30% |
▶ 構造の違い
路面店
立地依存度が高い、通行量が売上を左右する、衝動来店が起きやすい、初速が出やすい
空中階
目的来店型ビジネス、店のブランド力が売上を左右、SNS・紹介設計が必須、立ち上がりに時間がかかる
💡ポイント
家賃が安いか高いかではありません。
あなたの業態が「通行量型」なのか「目的来店型」なのか。
そこを見誤ると、立地は武器にも凶器にもなります。
そして最後に、こう問いかけてもいいでしょう。
あなたは、立地に助けてもらう店をつくりますか。 それとも、立地を使いこなせる店をつくりますか。
まとめ
家賃は経営にとって重要です。
しかし、家賃だけで立地を決めると、経営は崩れます。
立地はコストではなく、戦略です。
毎月払う固定費ではなく、売上構造を決める“土台”です。
雑居ビルに入るなら、「安いから」ではなく「この場所で勝てる設計があるから」
そう言える状態で契約してください。
- この立地で、どうやって認知を取るのか
- どうやって目的来店を増やすのか
- 売上が安定するまでの資金計画はあるのか
ここまで描けていれば、立地はリスクではなく武器になります。
逆に、設計がないまま契約すれば、家賃が安いても苦しくなります。
物件選びは、「どこが安いか」ではなく「どこなら勝てるか」。
それが、長く続く店をつくる第一歩です。
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REDISHはオミセクラフトと提携しており、物件に関する情報も多数ご紹介可能です。
単に物件を紹介するだけではありません。
- 業態に合う立地の整理
- 売上構造に合った物件選定
- 内装・厨房動線の設計
- 開業後を見据えた資金計画
「物件ありき」ではなく、「経営設計ありき」でご相談いただけます。
オミセクラフトは、数多くの飲食店を70年以上運営してきたロイヤルホールディングス株式会社のノウハウが詰まった開業支援サービスです。
物件選びから内装・設備まで一括でサポートしてもらえるため、初めての開業でも安心して準備を進めることができます。
物件に迷っている段階でも構いません。
「この立地でいけるのか?」その一歩目の相談から、ぜひご活用ください。
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