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コラム- 2023/04/12
- #税理士
税理士事務所が薦める税理士の探し方8選

監修者プロフィール:公認会計士・税理士。監査法人にて5年間会計監査業務を行ったのち、クロスポイント税理士法人を設立。日々の会計記帳や確定申告に関することはもちろん、節税や経営アドバイスのご相談も承っています。
税理士に依頼しようと思っても、どのように税理士を探せばよいか悩む方も多いのではないでしょうか。身近に税理士がいないと、敷居が高く感じる方もいらっしゃるかもしれません。この記事では税理士事務所の職員である筆者が、希望に合った税理士の探し方をご紹介します。
また、ご自身の求めるサービスが受けられる税理士・会計事務所と契約するためには「どのようなポイントで判断するべきか」についてもご紹介していきます。長くお付き合いできる税理士と出会えると、税務申告などの事務処理の負担が軽減されるだけでなく、事業の発展につながる効果もあります。慎重に検討しましょう。
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税理士の探し方8選
税理士の探し方8選は以下のとおりです。
(1)知人、取引先に紹介してもらう
(2)税理士紹介サービスを利用する
(3)インターネット検索で探す
(4)使用したい会計ソフトのホームページから探す
(5)銀行に紹介してもらう
(6)商工会議所や税理士会に紹介してもらう
(7)セミナーに参加する
(8)日本税理士会連合会のホームページを見て自力で連絡する
それぞれ、メリット・デメリットとともにご紹介します。
(1)知人、取引先に紹介してもらう
知人や取引先に紹介してもらうケースは多くあります。メリット、デメリットは以下のとおりです。
【メリット】
・自分で探す必要がないため楽
・信頼できる方がおすすめしているため、安心感がある
【デメリット】
・人がすすめる税理士が自分にも合うとは限らない
・合わなかった時に解約し辛い
・税理士の比較ができない
実際に体験された方の口コミは信頼性があり、参考になる面が多くあります。そして何より信頼できる方がおすすめしているという点で、安心感もあるでしょう。自分であれこれ探すよりも楽なのも大きなメリットです。
しかし、税理士に期待するサービスの内容は人により異なります。費用を安くして事務作業だけ軽減したいケース、費用面は気にせずじっくりと相談にのってくれる税理士を求めているケースなどさまざまです。求める点が紹介者とずれていると、ご自身に合う効果が得られない可能性があるでしょう。税理士との相性も、紹介者には合っても、ご自身とは合わない可能性もあります。そしてもし解約したい場合、紹介してもらった手前断り辛くなるかもしれません。
また、紹介してもらうと自分で探さなくて済むため楽ですが、税理士の比較ができません。もしかしたら、もっと条件の良い税理士と契約できた可能性も捨てきれません。
紹介してもらうにしても、税理士の人柄や、希望するサービスがあるかなどを確認した上で、少しでもご自身で他の税理士も探してみることがおすすめです。
(2)税理士紹介サービスを利用する
税理士紹介サービスは、希望の条件に合う税理士を事前に伝えると、何人かピックアップして紹介してくれる大変便利なサービスです。メリット、デメリットは以下のとおりです。
【メリット】
・無料で誰でも手軽に利用できる
・細かな条件を伝えて、専門の業者が条件に合う税理士を選んでくれる
・値段交渉や断りの連絡も代行してくれる
【デメリット】
・税理士紹介サービスに登録している税理士にしか出会えない
・報酬を相見積もりして安いところを探すと、サービスの質が悪い可能性がある
税理士紹介サービスは、誰でも無料で利用できます。成約したら税理士が手数料を支払う仕組みであり、依頼者は無料です。インターネットから申し込みができ、お手軽で敷居が低く、利用しやすいのがメリットです。
多くの方が利用している税理士紹介サービスには、以下のようなものがあります。
・税理士ドットコム
・ビスカス
・ミツモア
・比較ビズ
税理士紹介サービスは、希望のサービスに加えて、業種や利用したい会計ソフト、支払える報酬などの細かい条件をもとにして、希望に合いそうな税理士を紹介してくれます。ご自身の希望に合った税理士に出会える確率が高くなるでしょう。面談のセッティングや断りの連絡など、やり取りも代行してもらえるため、気兼ねせずに利用できます。
しかし、税理士紹介サービスを依頼する方のなかには報酬面で条件をつけ、より安いところを探すため「相見積もり」をとるケースがあります。後に述べますが、価格面だけで税理士を探すと希望に沿ったサービスを受けられない可能性があるため注意が必要です。
税理士から見ると、サービスを正当に評価して対価を支払ってくれる客先が好ましく、税理士紹介サービスに登録していない税理士事務所もあります。さらに、税理士紹介サービスからの紹介は手数料を支払う必要があること、規模の大きい税理士事務所では税理士紹介サービスに依頼しなくても集客が可能であること、といった事情から、登録を避けているケースもあります。税理士紹介サービスに登録していない税理士には出会えない点はデメリットといえるでしょう。
(3)インターネット検索で探す
インターネット検索は、自分で条件を指定して手軽に探せるため便利です。メリット、デメリットは以下のとおりです。
【メリット】
・誰でも手軽に探せる
・好みの条件を指定して何度でも検索できる
【デメリット】
・ホームページがない税理士事務所がある
・ホームページには一般的な概要しか公開されていないことが多い
・報酬は、詳細を相談しないとほぼ事前にはわからない
自宅や事務所に近い税理士など、所在地で検索する場合はインターネット検索が大変便利です。時間をかけずに手軽に探したり比較したりできるため、まずはこの方法で一度探してみるとよいでしょう。
しかしホームページがない税理士事務所もあり、また、あったとしても一般的なサービス内容の説明だけで、実態や特徴まではわからないケースもあります。特に報酬面は相談をしないと正確にはわからない場合が多いでしょう。候補をある程度絞った上で、まずは面談することがおすすめです。
(4)使用したい会計ソフトのホームページから探す
会計ソフトであるfreee、マネーフォワードなどでは、税理士紹介サービスも提供しています。メリット、デメリットは以下のとおりです。
【メリット】
・会計ソフト利用者は誰でも手軽に利用できる
・希望条件に合った税理士を選んでくれる
・ご自身が使用している会計ソフトに精通している
【デメリット】
・会計ソフト以外の税務サービスの品質について希望に合わない可能性がある
・その会計ソフト会社の紹介サービスに登録している税理士にしか出会えない
経営者や経理担当者のなかには、使用したい会計ソフトにこだわりや希望を持っているケースもあるのではないでしょうか。税理士は会計ソフトのすべてに対応している訳ではなく、限定している場合もあるため、すでに利用する会計ソフトが決まっている場合にはその会計ソフトに強い税理士を探すと効率的です。
しかし、(2)の税理士紹介サービスと同様に、登録していない税理士には出会えません。また、会計ソフトには精通していても税務サービスは幅広く、その他の面で希望に合わない可能性もあります。
(5)銀行に紹介してもらう
(1)と同様に「紹介」という方法です。メリット、デメリットは以下のとおりです。
【メリット】
・銀行が信頼している税理士であるため、安心感がある
・自分で探す必要がなく楽
【デメリット】
・借入等で支援してもらっている銀行の紹介であるため断り辛い
・銀行の希望に合う税理士を紹介されるため、ご自身にも合うかはわからない
銀行としては、経営者がしっかりと事業をおこない、借入を返済してもらう必要があります。そして適切な税務処理をして、正確な決算書を作成してもらいたいと考えています。銀行の考えに合う税理士を紹介する傾向にあるでしょう。しかし安心感はあり、銀行とともに会社を支援してくれる可能性は高くなります。
(6)商工会議所や税理士会に紹介してもらう
これも「紹介」の一種ですが、ホームページがない税理士など幅広い対象から選べます。メリット、デメリットは以下のとおりです。
【メリット】
・商工会議所や税理士会の紹介であり、安心感がある
・ホームページのない税理士まで、幅広い対象から選べる
・ある程度の希望を伝えて、条件の合う税理士を探してくれる
【デメリット】
・地域の希望などはできるが、サービスの細かい条件までは考慮してもらえない可能性が高い
税理士は全員、地域ごとに分かれた税理士会に所属しています。このため希望する地域のすべての税理士から選べます。商工会議所も地域の税理士とのつながりが深いため、場所を指定して税理士を選びたい場合には効率的でしょう。
しかし細かい条件までは考慮してもらえない可能性が高いため、候補をある程度絞った上で、まずは面談することがおすすめです。
(7)セミナーに参加する
メリット、デメリットは以下のとおりです。
【メリット】
・規模の大きい税理士事務所と接点が持てる
・勉強しながら税理士が探せる
【デメリット】
・セミナーを開催している税理士は限られている
税理士事務所ではさまざまなセミナーを開催している場合があります。特に規模の大きい事務所ほど、外部向けのセミナーが開催されています。
セミナーは勉強になるだけでなく、税理士事務所の方と接点を持つことが可能です。有名な税理士事務所などは敷居が高いと感じる場合もありますが、セミナーに参加して顔を見れば距離を縮められるでしょう。ただし外部に向けてセミナーを開催している事務所は規模が大きいところが中心となり、そうした事務所に依頼したい方以外にとっては選択肢が狭くなります。
(8)日本税理士会連合会のホームページを見て自力で連絡する
日本税理士会連合会のホームページでは、登録しているすべての税理士から検索ができます。
【メリット】
・すべての税理士を検索でき、対象範囲が広い
【デメリット】
・検索条件が地域等のみで限られている
対象は広いですが、検索条件は地域と依頼したい業務等のみであり、特徴などは分かりません。いくつか候補を選んだ上で、まずは面談することがおすすめです。
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税理士の選び方
このように税理士はさまざまな探し方がありますが、どのようなポイントで選べばよいでしょうか。おすすめする選び方は主に以下の3点です。
(1)費用面よりも相性を見る
(2)得意分野を確認する
(3)事務所の規模や場所、使用する会計ソフトなどの特徴を確認する
(1)費用面よりも相性を見る
費用面は誰でも気になる点ですが、税理士を選ぶ際には金額を比較するよりも相性を見極めることが大切です。税理士のサービスは、確定申告を代わりにおこなってくれるだけの事務代行業ではありません。うまく利用すれば、税務・節税・経営などの相談にのった上で、経営をともに支援してくれるパートナーにもなり得ます。
相談するためには、相性のよい税理士であることが大切です。ご自身が相談しやすい、連絡しやすい、信頼できるパートナーと感じられる相手が望ましいでしょう。そのためには、初回面談時に相手の説明を聞くだけでなく、コミュニケーションがとりやすい税理士であるかを確認するのがおすすめです。具体的には以下のような点をチェックするとよいでしょう。
・質問には誠実に対応してくれるか
・どのような連絡手段があるか(メール、携帯電話等)
・上から目線ではないか
・初回面談時までの連絡のやり取りはスムーズだったか
・レスポンスは早いか
(2)得意分野を確認する
税理士でも、すべての税務分野に精通している訳ではありません。違いが出る業務内容は、主に以下の点です。
・相続対策、事業承継支援の実績が多い
・金融機関対応に慣れている
・社会福祉法人や公益法人など、営利企業ではない法人の税務対応実績が多い
・医療法人の税務対応実績が多い
・大企業の税務対応実績が多い
・建設業、飲食業など、特定の業種が強い
・税務調査に強い
ご自身の依頼したい内容や業種を明確にし、得意・不得意が現れそうな業務については、事前にその業務に強い税理士を探しましょう。
(3)事務所の規模や場所、使用する会計ソフトなどの特徴を確認する
税理士事務所にはさまざまな特徴があるため、以下のような点を確認して希望のサービスが受けられるか確認しましょう。
・対応している会計ソフト、精通している会計ソフトの内容
・事務所の場所は
・従業員の数
・契約後は担当とやり取りをするのか、税理士とやり取りするのか
・担当がつく場合は、税理士とコミュニケーションをとる場はあるのか
特に税理士を変更する際には、使用している会計ソフトを確認しておくことは大切です。「利用しやすくなる」などの前向きな理由があればよいですが、会計ソフトが変わると慣れるまで事務負担を感じるかもしれません。
事務所の場所が遠いと直接会うことが難しくなります。ただし近年ではオンライン面談やクラウド会計の普及により、遠方の税理士にも依頼しやすくなっています。
事務所の規模も大切な検討ポイントです。事務所の規模が大きければノウハウが多く、難しい税務案件でも安心感があります。しかし小さな法人や個人事業主だと、対応してもらう時間が少なかったり、税理士ではなく担当者のみが対応したりというケースがあります。難しい案件が少ない場合は、ノウハウよりもコミュニケーションの取りやすい税理士を選ぶとよいでしょう。
独立したてで従業員がいない税理士事務所は、税理士一人ですべての客先を対応しています。税理士にすべての業務を担当してもらいたい方は、このような一人経営の税理士を選ぶとよいでしょう。
「良い税理士」の特徴と税理士へのよくある不満
「良い税理士」かどうかは、ご自身が望むサービスを提供してくれるかどうかであり、一概にはいえません。信頼できる知人がすすめる税理士が、ご自身にも合うかどうか分からないのです。
ここでは、一般的に多くの方が「良い税理士」と感じる特徴と、税理士に感じる不満をご紹介します。
「良い税理士」の特徴
一般的に多くの方が「良い税理士」と感じる特徴は以下のとおりです。
・コミュニケーションをよくとってくれる
・レスポンスが早い
・相性がよい
・提案してくれる
どのような規模の法人、個人事業主であっても、コミュニケーションが取りやすく、質問がしやすい税理士が好ましいでしょう。またレスポンスの早さも大切なポイントです。急ぎの質問や依頼に対応してくれれば安心です。
また、税理士側からの提案があるかどうかも「良い税理士」と感じる特徴のひとつです。一般的に求められる提案は、具体的には以下のような事柄です。
・最新の税務情報などの情報提供
・契約者向けの無料セミナー開催
・節税対策の提案
・計画作成など経営支援の提案
・事務処理の負担軽減のための助言
・支援金や補助金の情報提供
ただし補助金については、申請できるすべての補助金に精通するのは一般的には難しいでしょう。補助金の情報が欲しい場合には、補助金に強い税理士を探すことをおすすめします。
税理士に感じるよくある不満
税理士に対して感じる不満の多くが「コミュニケーション面」や「提案がない」という内容であり、上記の「良い税理士」の特徴を踏まえて検討するとよいでしょう。
しかし、下記のような不満については税理士の問題ではない場合も多いため、解約をする前に立ち止まって検討しましょう。
・税理士に依頼しているのに税金が減らない
節税できるにもかかわらず提案がないケースもありますが、節税の余地がないケースもあります。節税対策の内容にはそれぞれ要件があり、他社ができるからといって自社もできるとは限りません。税金が減らないからといって不満に思うのではなく、税理士とよくコミュニケーションをとり、節税の余地がないか確認してみましょう。
・プライベートの費用を経費に認めて欲しいのに拒否される
税理士は、脱税行為はしません。脱税行為を拒否されて不満に思うのは、税理士の責任ではありません。
もし依頼者の言うなりに処理をしているならば、逆に何も見ていない税理士ということになります。後で税務署に指摘されれば、税金とペナルティを負担しなければなりません。
・依頼した業務範囲の認識が違った
税理士がおこなうと思いこんでいたものの、顧問契約の範囲外であり追加料金がかかると判明して不満に思うケースがあります。依頼する業務範囲の認識の違いが不満につながるため、事前によく確認しておきましょう。例えば領収書の整理や社会保険の届出などの人事関係の業務などで誤解が生じることがあります。
・顧問料が高い
税理士を変更して顧問料を見直すことは、決して悪い判断ではありません。顧問料が高いと感じるということは、期待しているサービスを受けられていないともいえます。
しかし、依頼側は専門家ではありません。業務にどれだけの時間がかかっているかが分からない、サービスに対して正当な評価ができていない、ということもあります。
低コストの税理士事務所もありますが、税理士の業務は簡単には比較できません。価格だけで比較せず、現状受けているサービスを棚卸した上で、同様のサービスを前提として他の税理士の見積もりも取るとよいでしょう。もしくは、あまり必要ないサービスを解約すれば、税理士を変更せずとも料金を下げられる可能性があります。
どのようなときに税理士に頼めばいい?個人の場合、法人の場合
税理士に依頼すると効果的なケースを、個人・法人それぞれの場合に分けてご紹介します。
個人が税理士に依頼すると効果的な場合
個人が税理士に確定申告業務を依頼すると効果的な方は、主に以下のとおりです。
・簿記、税務の知識が乏しく、調べる時間が惜しいと感じる方
・取引が多いため事務処理の負担が重く、軽減したい方
・正確な申告をして安心感を得たい方
簿記の知識が乏しくても記帳がしやすい会計ソフトの普及、国税庁の確定申告書作成コーナーの充実などにより、個人の確定申告は以前に比べ格段におこないやすくなりました。マイナンバーカードと、対応するスマートフォンまたはカードリーダーがあれば、e-Taxで申告ができます。混み合う税務署で並ぶ必要もなくなりました。
しかし記帳の手間は軽減されません。また、税務上の判断はご自身でおこなわねばなりません。事務処理を軽減し、正確な申告をおこないたい方は、税理士に依頼すると効果的です。
また現在は個人事業主だが、将来は事業を拡大して法人化を見据えている方などは、税理士に顧問を依頼して年間を通してアドバイスを得ると効果的な経営ができるでしょう。
法人が税理士に依頼すると効果的な場合
法人であれば、どのような状況でも原則として税理士に確定申告、月次顧問を依頼することをおすすめします。法人は個人と比較して申告内容も複雑化し作成書類も多くなります。取引も増えたり複雑化したりするため、税務上の判断をともなう機会も増えるでしょう。専門家である税理士に依頼して、事務負担を減らし、正確な申告をして安心感を得ることがおすすめです。
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税理士をかえるときは大変?税理士変更を検討するきっかけ
税理士をかえるときは、手間がかかります。しかし、問題を抱えている場合は変更を視野に入れましょう。ここでは税理士を変更する際に生じる負担と、税理士変更を検討するきっかけを紹介します。
税理士変更時に生じる負担
税理士変更時は、以下のような負担が発生します。
・税理士に解約を言い辛い心理的な負担
・新しい税理士を探す負担
・税理士と契約していない空白の期間が出た場合の事務処理の負担
・新しい税理士への引き継ぎの負担
・会計ソフトが変更になる場合は慣れるまでの負担
新しい税理士を探す際、前の事務所との解約の経緯や、変更を検討している理由を聞かれることがほとんどです。地域の税理士はネットワークがあり「知り合いのお客様を取ることはできない」という心理が働く場合があります。このため、理由によっては希望の税理士に受けてもらえない可能性があります。
次は引き継ぎの事務的な負担です。原則として前の税理士の業務結果はすべて引き渡してもらえるため、それを新しい税理士に渡すことになりますが、もし不足分がある場合は確認するなどの事務的な負担が生じる可能性があります。
原則として税理士同士では引き継ぎをしません。このためもし不明点があれば、経営者自身が問い合わせをして前の税理士に確認します。このような引き継ぎの負担が生じますが、引き継ぎに際して万が一スムーズにいかないケースでも、新しい税理士が対応を検討してくれるため、指示に従いましょう。
このように、税理士をかえるにはさまざまな負担が生じます。しかし、繰り返しますが現状問題を抱えている場合は税理士変更を検討することは決して悪い判断ではなく、むしろ事業の発展のためには必要です。積極的に検討しましょう。
税理士変更を検討するきっかけ
契約後に税理士を変えたいと思うケースとしては、以下のような場合があります。
【コミュニケーション、相性の問題】
・税理士からのレスポンスが悪い。なかなか連絡がつかない。
・税理士からの提案が少ない。
・担当者がついたが、担当者と相性が悪い。
・業績や申告内容の結果について説明が少ない。
・相談しても親身になってくれない。
初回の面談だけでは見極められない点も多くあります。税理士と相性が悪い、コミュニケーションが取りにくい場合は、税理士の変更を視野に入れるのがおすすめです。ただ、突然決めるのではなく、まずはやんわりと希望を伝えてみましょう。不満をため込まないことも大切です。誠実な税理士であれば何かしら変化があるかもしれません。
【事業の問題】
・業績が悪化し、税理士報酬が負担になったため格安の税理士を探したい。
・業績が好調のため、事業を拡大したい。大規模法人の顧客が多い税理士を探したい。
多いのは、業績の悪化です。この場合、まずは現在の税理士に顧問料の値引きを依頼したり、または顧問をやめて確定申告だけにしたりするなど、業務範囲の変更を依頼することで顧問料を下げられる可能性があります。一度検討してみましょう。
【代替わり】
・経営者が代わり、新しい経営者の希望に沿う税理士を探したい。
・税理士が高齢で業務を受けられなくなったため、新しい税理士を探すしかない。
この場合は希望の条件を明確にして、新しい税理士を探すしかありません。引き継ぎが円満にできるように、解約時に関係を悪化させないように心がけるとスムーズです。
この他にも、税理士と税務上の判断事項の意見が合わないといったこともあります。税務処理には黒か白だけでなく、グレーな面もあり、見解が分かれて税務署と争うケースもあります。依頼者は専門家ではありませんが、あまりにも希望を受け入れてもらえないと税理士に不満を抱くケースもあるでしょう。ただし、この場合他の税理士であれば意見が合うとも限りません。まずはご自身の希望が「脱税」ではないかをよく検討しましょう。
よくあるトラブルと「避ける」方法
税理士との契約を解除する際によくあるトラブルは以下のとおりです。
(1)即時解約ができない
(2)引き継ぎが不十分
(3)申告が間に合わない
それぞれの内容を説明した上で、トラブルを避ける方法を紹介します。
(1)即時解約ができない
契約によっては「解約日の〇ヵ月前までに通知をすること」といった文言が盛り込まれている場合があります。この場合は即時に解約ができず、定められた期間は顧問料が発生してしまいます。
思い立ったらすぐ解約したいところですが、契約に「解約の通知」の定めがある場合は注意が必要です。
【解決方法】
解約を検討し始めたら、まずは現在の契約書を確認してみましょう。
(2)引き継ぎが不十分
税理士は確定申告などの業務をおこなった成果物、例えば申告書の控、元帳などはすべて客先に渡す必要があります。しかし場合によっては、資料がすべて税理士のもとから返却されていないケースもあるようです。必要な資料がないと引き継ぎが不十分となってしまいます。
もし解約時に前の税理士と揉めてしまうと、不足資料や不明点が出てきたときに問い合わせし辛くなります。
【解決方法】
必要な書類を変更後の税理士に確認し、資料があるかをチェックしてください。もし不足していた場合は、前の税理士に速やかに依頼しましょう。時間が経つにつれ、依頼がし辛くなります。
また、解約はなるべく穏便に済ませましょう。誠実な税理士であれば、解約理由を正直に話しても問題はありません。しかし揉めそうな場合は「やむを得ない事情である」と伝えるとよいでしょう。よくある断り方としては「身内、親戚が税理士として独立したためそちらに依頼する」「恩義のある方に紹介された」などの理由があります。しかし定番の断り文句でもあるため、相手を見て伝えましょう。理由は何であれ、今までの感謝を伝えれば揉める可能性は低くなります。
(3)申告が間に合わない
引き継ぎに時間がかかると、変更後の税理士の申告作業が遅れてしまいます。特に申告月直前に依頼されると、新しい税理士の業務が間に合いません。
また前の税理士を解約した後、税理士に依頼していない空白期間が長くなってしまった場合も、新しい税理士の業務負担が重くなります。税理士が関与していない期間は専門家のチェックが入っていない状態であり、場合によっては記帳がされていない、資料の整理がされていないようなケースもあります。この分もまとめて新しい税理士が確認すると、短期間に負担が重くなり、時間がかかることになるでしょう。申告が期日までに間に合わない可能性も考えられます。
【解決方法】
申告月直前に税理士変更をせず、時間に余裕を持ちましょう。また、変更する際には次の税理士を契約してから、前の税理士を解約することがおすすめです。空白期間をなくせるだけでなく、万が一なかなか次の税理士が決まらない時に、焦って決めるのを避けるためです。
まとめ
以上、税理士の探し方と選び方、および良い税理士の特徴や変更時の問題点などをご紹介しました。税理士は確定申告をする事務作業代行だけでなく、税務や経営の相談にのり事業をサポートするパートナーでもあります。長くお付き合いできる税理士と出会えると、事業の発展に大きく寄与するでしょう。契約の際にはよく検討するとともに、契約後に不満があれば変更を視野に入れて、税理士のサービスを上手に取り入れていくことが大切です。安易に決めず、さまざまな方法で根気よく税理士を探してみてはいかがでしょうか。