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創業する際にお金は借りるべき?

この記事を読まれている方のなかには、現在新しく事業を立ち上げようと思っている、あるいは会社を創業したいと思っている方も多くいらっしゃると思います。そうした方々にとって気になるのが、会社を立ち上げる際にお金を借りることは必要か? という問題です。これは、会社を経営したいと思っている人にとっては、大いに悩まされる問いです。

 

答えから最初に言うと、会社を立ち上げる時にはなるべく多くの資金を用意しておいたほうが安心であると言うことができます。このお金のなかには、自己資金や投資家から集めたお金、銀行から借りたお金などが含まれます。では、資金を借り入れしてでも、できるだけ多くお金を集めることにはどんな意味があるのでしょうか?

 

出資と融資の違いを理解する

 

会社を立ち上げる時、多くの人は自己資金を集めるだけではなく、第三者にも投資をしてもらって事業を始めます。ですが、投資と言っても出資と融資の二種類に分かれます。それぞれの意味は異なっているので、まずはその違いを十分に理解しておきましょう。

 

会社創設の際の資金は、主に次の6つに分かれます。

・自己資金

・出資

・個人借入

・社債

・融資

・補助金・助成金

 

自己資金については言うまでもありませんが、2番目の出資については、あなたの事業に賛同する人が株券を購入することでお金を出すやり方や、クラウド・ファンディング、ベンチャー・キャピタルなどのように、より幅広く出資者を募るやり方などがあります。いずれにしても、あなたの事業に賛同している、というのが前提条件になります。

 

個人借入は、あなたが銀行から直接借り入れをする融資です。これも、自己資金のなかには含まれません。あくまでも、銀行からお金を借りる「融資」という形になります。

 

社債については、やはりあなたの事業に賛同してくれる人に会社の債権を購入してもらうという方法になります。これは、株式を購入してもらうのと似ています。あくまでも、社債を購入するのは、あなたの事業に賛同する出資者です。

 

次に、幅広く「融資」についてですが、これは日本政策金融公庫や地方自治体と提携している金融機関などからお金を借り入れるやり方になります。また、補助金・助成金なども各都道府県や市区町村などが行っている資金の融資方法です。これらは、やはり自己資金には含まれません。

 

さて、出資と融資の違いは何でしょうか。それは、資金を得た後にその返済義務があるかどうかという点になります。資金の返済義務がないものを出資、返済義務があるものを融資と言います。出資者に対しては、会社が利益を上げることで、その利益を分配するという形で、お金を出してくれたことに応えます。

 

お金はやはり多く準備しておいたほうが良い

 

出資と融資の違いについて、ご理解いただけましたでしょうか? 出資はお金を返さなくても良い資金調達の方法ですから、厳密にはお金を借りるということは融資の形を取る、ということが分かっていただけたと思います。では、実際の事業を始めるにあたって、どれくらいのお金が必要となるのでしょう?

 

そのためには、開業資金が平均していくらくらいになるのか、というデータを参照しておいたほうが良いでしょう。2021年発表の「2021年度新規開業実態調査」によると、開業資金として必要とされたのは、平均して941万円だったという調査結果が出ています。ただし、この開業資金は年々少なくなる傾向があり、およそ半数の人が開業資金は500万円以下だったという回答をしています。

 

では、どれくらいのお金を創業時に用意しておいたほうが良いのか、ということなのですが、法律的にこの額が決まっているわけではありません。近年では、株式会社の創業時にも資本金1円以上での創業が可能となっているためです。どれくらいお金が必要になるのかは、開業後にいかにしてお金のやりくりをしていくか、ということにかかっているわけです。

 

そのためにも、銀行や地方自治体などからなるべく多くの融資を受けておく、ということが会社経営の上では有利になります。というのも、いざ会社を立ち上げたは良いものの、それを長年にわたって残していくのには多大な苦労がつきまとうためです。東京商工リサーチの調査によると、創業後5年後の会社の生存率は81.7%ということになっています。

 

これは、創業後5社に1社が5年以内に事業を停止してしまう、ということを示しています。そして、事業を停止した大半の理由が、「資金繰りが悪化したため」ということになっています。お金には有価証券や株券など様々な形がありますが、やはり手元に現金がないと、事業を継続していくためには大きな困難が伴うのです。

 

では、どこからお金を借りる?

 

実際にお金を借りる段になると問題になってくるのが。どこからお金を借りるのか? という点です。まず、真っ先に浮かぶのは銀行からお金を借りるということですが、これには低くないハードルが待っています。新規に創業する会社では、まだ実績というものがないためです。

 

そこで、新規事業の創業者の多くは、日本政策金融公庫の提供している「新創業融資」や、地方自治体が行っている「制度融資」などを利用するということになるでしょう。これらの融資は金利はやや高い場合もありますが、融資に対するハードルは低くなっています。

 

一例として、新創業融資の場合、新たに立ち上げる事業の創業資金総額のうち、10分の1以上の自己資金があれば、融資可能となっています。融資してくれる額は3,000万円(そのうち運転資金は1,500万円)までです。これはかなり大きな金額ですし、創業にかかる初期資金の平均よりも高い金額となっています。

 

どこからお金を借りるかについては、税理士などともよく相談すると良いでしょう。なかには創業融資に詳しい税理士事務所もありますし、そうした場合、銀行からの融資に必要な書類の作成なども手伝ってもらえます。餅は餅屋ではありませんが、こうしたことはやはり専門家に任せると事を有利に運ぶことができます。

 

本当にお金を借りるべき? 借りるとしたらどれくらい?

 

では、実際にお金を借りる場合、どれくらいのお金を借りれば良いのでしょうか。これは、少し砕けた書き方をすれば、あなたが始めたいと考えている事業の種類による、と考えておくと良いでしょう。オフィスだけが必要なビジネスであれば、それほどのお金はかかりませんが、美容室や飲食店などを始めたいと思っている場合には、設備投資などにもかなりの金額を要することになります。

 

こうした設備投資が必要な事業を始める場合には、自己資金のほかにある程度融資によるお金を用意しておいたほうが良いと言えます。一般的な調査では、創業時における自己資金の割合は3割から5割程度だと言われています。それを超える分は、出資や融資などで補えば良いわけです。

 

とくに新規事業の場合、知り合いなどを除けば、会社の事業について詳しく知っている人もいませんし、クラウド・ファンディングなどであらかじめ事業の詳細について知らせておくのでなければ、出資者については会社の情報が限られてくると言えます。足りない分の資金については、やはり銀行や日本政策金融公庫などからの借り入れで補う、という形になってくるでしょう。新規に事業を始めるのであれば、例えばそれが資本金1,000万円の会社であった場合、500万円~700万円程度は融資によって創業時の資本金をまかなうことを考えておいたほうが良いと言えます。

 

お金を借りた場合の返済の期間は、例えば日本政策金融公庫の場合、設備資金については20年以内、運転資金については7年以内となっています。これくらいの期間があれば、事業を軌道に乗せるのにも無理はないでしょう。なお、銀行からの融資の場合、返済期間はどんな事業を行うのかによって異なっています。

 

まとめ

 

いかがでしたか? お金を借りるといっても、様々な借り入れ先があること、お金を借り入れるべきかどうかは、新規に始める事業の初期投資や今後会社を運営していくうえでの安定性にも関わってくることだと、納得いただけたでしょうか。会社を設立するにあたって、お金を借り入れたほうが良いかどうかは、まさにケースバイケースなのです。

 

結論を言うと、設備投資などで初期費用がかかる人、今後の会社運営が軌道に乗るまでに長い時間がかかりそうな人は、なるべく多めに創業資金を借り入れておいたほうが良いと言えます。オフィスを借りるだけで、初期費用がそれほどかからない人、今後事業が安定的に運営できそうな人は、それほど多くのお金を借り入れる必要はありません。何にしても、まわりに流されずに自分の興そうとしている事業の実際面と照らし合わせたうえで、お金を借り入れるかどうかの判断をしましょう。