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コラム- 2023/07/17
- #創業融資
創業計画書と資金繰り計画書で創業融資は決まる
これから会社の設立をしたいと考えている人は、多くの場合金融機関から資金の借り入れをしたいと思っていることでしょう。その時に必要になる書類はいくつかあります。そのなかでも、創業計画書と資金繰り計画書(資金繰り表)は大事な書類です。
創業融資を受けるためには、この二つの書類をいかに書くかがポイントになってきます。創業計画書と資金繰り計画書は、金融機関と実際に面談する前段階で必要になる書類です。いわば、これから設立しようとしている会社の顔のようなものだと思って良いでしょう。
創業計画書とは?
創業計画書とは、これから設立しようとしている会社の基本情報を記した書類になります。創業計画書には決まったひな形があり、日本政策金融公庫のホームページからダウンロードすることができます。エクセルとPDF、二種類のひな形が用意されていますが、どちらを使用してもかまいません。
創業計画書に書く項目は、「創業の動機」「営者の略歴等」「取扱商品・サービス」「取引先・取引関係等」「従業員」「お借入の状況」「必要な資金と調達方法」「事業の見通し(月平均)」「自由記述欄」の9項目です。いずれも書く欄が限られていますので、よく考えて記載しなくてはいけません。
どの項目も重要なのですが、起業家としてのスタンスや思い入れなどは、「創業の動機」や「自由記述欄」に書くことができます。まずは、あなたが設立しようとしている会社が何を目的にしているのか、といった点をこの項目に記載すると良いでしょう。場合によっては、この項目が融資の可否を左右する場合もあります。
その他の項目には、設立しようとしている会社で予定されるお金の流れや、取引する商品やサービス、従業員数といった、具体的な項目を書いていくことになります。お金の流れについては資金繰り計画書にも記載しますが、おおまかな流れはこの創業計画書のほうにも記載します。また、他の金融機関から融資を受けている場合には、「お借入の状況」の項目にその旨を記載します。
資金繰り計画書とは?
創業計画書は全2ページの書類ですから、これだけでは、会社設立後の細かなお金の流れまでは記載できません。そこで必要になってくるのが、資金繰り計画書です。この資金繰り計画書も、金融機関から融資を受けるにあたっては重要な書類になります。
資金繰り計画書とは、これから設立する会社で予定されている、月ごとのお金の流れを記載した書類になります。会社設立後には、決算時にキャッシュフロー計算書という書類が必要になりますが、これは毎月のお金の流れを記載したものだと考えると分かりやすいかもしれません。キャッシュフロー計算書には一年ごとのお金の流れを記載しますが、資金繰り計画書はより細かく、月ごとのお金の流れを記載するわけです。
しかし、資金繰り計画書とキャッシュフロー計算書では、相違点もあります。キャッシュフロー計算書は、すでに出来上がった会社で、過去にどのようなお金の流れがあったのかを記載する書類ですが、資金繰り計算書は、これから予定しているお金の流れを記載した書類です。つまり、これからの事業においてどのようにお金が流れていくか、その予定を記載した書類であるわけです。
資金繰り計画書(資金繰り表)も、日本政策金融公庫のホームページからダウンロードすることができます。金融機関から融資を受ける際には、このひな形をもとにした書類を提出すると良いでしょう。日本政策金融公庫のホームページからは、この資金繰り計画書(資金繰り表)の記入例もダウンロードすることができます。
創業計画書と資金繰り計画書がなぜ重要なのか?
これから会社を設立しようとしている場合、すでに個人事業主として事業を行っているのでなければ、その会社がなんのために存在するのか、これから何を行っていこうとしているのかが、融資をする金融機関の側では明確には分かりません。それを明らかにするのが、創業計画書です。いわば、創業計画書というのは、その会社の履歴書のような役割を持っています。
創業計画書には、起業家の意気込みや情熱などについても記載できる項目がありますし、ある程度具体的な目安が立っていないと記載できない項目も多いです。金融機関がまず第一に参照するのは、この創業計画書です。その分、創業計画書は真摯に、かつ正確に記入することが求められます。
ですが、お金の流れについては、創業計画書だけでは十分に説明することができません。より説得力を持って、企業の資金力・資本力について記載した書類が資金繰り計画書になります。金融機関の側では、この資金繰り計画書によって、これから興そうと考えている会社のキャッシュフローについて判断するわけです。
会社を興した場合、書類上の赤字・黒字と、実際のお金の流れとは異なっている場合がままあります。書類上で黒字を計上していても、手元には現金がほとんどない、ということも考えられるわけです。昨今の会社経営においては、いかに会社が現金を担保しているのか、という点がますます重要になってきています。
資金繰り計画書では、このお金の流れというものを明確化します。月ごとにいくらの支払いがあるのか、いくらの収入があるのか、といった点を明らかにするのが資金繰り計画書であるわけです。融資を行う金融機関の側では、こうしたお金の流れの健全性というものを、融資の際の指標にします。
創業計画書や資金繰り計画書をどのように書くか?
創業計画書や資金繰り計画書は、あくまでも未来の経営状態について記載する書類ですから、金融機関に対して説得力を持ったものでなくてはいけません。金融機関が実際に融資をするにあたっては、起業家との面談が行われます。この面談に際して、創業計画や資金繰り計画書については、十分な説得力をもって説明できなくてはいけません。
創業計画書も資金繰り計画書も、予定されている事業の実態に沿って、具体的に記述することが求められます。大げさに利益を誇張するのではなく、事業の実態に沿った現金の出入について書かなくてはいけないわけです。創業計画書も資金繰り計画書も、率直かつ正確に書くことが求められています。
とくに資金繰り計画書では、予想される未来の利益、そして予想される支出について、詳細に書くことが求められています。その際のお金の流れは、「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」の3つに分かれます。そのなかでも重要なのが「営業キャッシュフロー」で、これは本業におけるお金の流れを記載したものになります。
企業にとっては、様々な利益の形が見込まれますが、金融機関において重視されるのは、やはり本業においてどれくらいの利益が見込まれるのかという点です。本業において利益が見込めないと、金融機関の側でも、融資に対する見返りがないと判断してしまいます。あくまでも、本業においてどれくらいの利益が見込めるのか、ということを金融機関は重視するのです。
そのため、創業計画書や資金繰り計画書には、これから事業を進めていくにあたって、あなたの会社がどれくらいの利益を得られるのかを書いていかなくていけません。月単位での平均は創業計画書に、その詳細は資金繰り計画書に書くことになります。資金繰り計画書は、あくまでも創業計画書の延長線上にあるものなのです。
まとめ
いかがでしたか? 創業計画書や資金繰り計画書の重要性について、お伝えすることができたでしょうか。会社設立にあたっては、分からないことが山盛りだと思います。自分自身で分からない点については、税理士などのアドバイスを受けると良いでしょう。
創業計画書と資金繰り計画書とは、これから設立しようとしている会社の顔にあたる書類です。こちらの記事を参考にして、ぜひ率直かつ真摯な創業計画書・資金繰り計画書を記載するようにしましょう。金融機関からの融資は、この二つの書類にかかっているのだということを忘れずに。