Column

コラム

飲食店開業で迷ったとき、数字を判断材料にする考え方

事業計画書はゴールではなく、開業の不安を可視化する話

こんにちは。
REDISHで開業サポートを担当しているYです。
今日は、実際に私たちが伴走した事例をもとに、開業を検討されていたご依頼主様が、
準備の途中で、どんなところで立ち止まり、何に迷っていたのかを、少しだけ言葉にしてみようと思います。

創業融資635万円、自己資金200万円、開業1ヶ月目の月商111.5万円。
こうした数字を並べて見ると、飲食店の開業を考えている立場としては、どうしても手が止まります。
「すごい数字だな」と感じる一方で、
気づくと、自分が今作っている事業計画書の数字と、頭の中で静かに比べてしまうからです。

この事例のオーナー様も、居酒屋25席・オーナー1名体制という条件で開業を迎えました。
事業計画書の上では、筋は通っている。
資金計画も、収支計画も、一通りは整っている。
それでも、何度も同じ数字を見返しながら、
「この売上想定は、自分の体力で本当に回るのか」
「返済は、生活費を含めても続けられるのか」
といった問いが浮かんでいました。

数字は、一見すると答えを示してくれるようでいて、
実際には、判断を早めるどころか、かえって迷いを深くすることもあります。
特に創業期は、
「正解があるかどうか分からないまま」
それでも決断を積み重ねていく時間が続きます。

このコラムでは、
成功や失敗を切り取るのではなく、
これらの数字が、どのように“判断材料として整理されていったのか”、
そして、その過程でどんな迷いが行き来していたのかを、振り返っていきます。
もし今、
似たように数字を前にして立ち止まっている方がいたら、その感覚と重ねながら読んでもらえたらと思います。

売上や融資額など、もう少し具体的な数値については、
こちらのコラムで詳しくご紹介しています。
【創業融資635万円獲得】飲食経験とITスキルを武器に!アットホームなマネジメント居酒屋
https://redish.jp/columns/example_016/

前提条件として置かれていた数字

数字だけでは見えない、事業計画のリアル

この事例で使われた数字を、まずは整理して並べてみます。

  • 融資額:635万円(日本政策金融公庫)
  • 自己資金:200万円
  • 初期投資総額:835万円
  • 席数:25席
  • 月商目標(開業1ヶ月目):111.5万円
  • 損益分岐点:月商約94万円
  • 月々返済額:約6.1万円(10年返済・据置0.5年)

数字だけを見ると、感覚は人それぞれです。
「思ったより大きな額だな」と感じる人もいれば、
「意外と現実的かも」と思う人もいるでしょう。
さらに、席数や月商目標などの条件を知らなければ、
その数字がどれほど意味のあるものかも判断がつきません。

実際、このオーナー様も、最初にこれらの数字を目にしたときは、
一つひとつの金額や目標に対して、評価は保留にしたまま考えを進めていました。
なぜなら、数字は条件や前提と切り離してしまうと、
ただの記号のようになってしまうからです。

たとえば、月商111.5万円という目標は、
「25席、オーナー1名、ディナー中心の営業」という前提のもとで初めて意味を持ちます。
逆に、席数や営業時間が変われば、同じ月商でも現実感はまったく違ってきます。
この段階では、数字を単純に「多い・少ない」と判断するよりも、
条件と組み合わせて考え、頭の中で事業全体のイメージを描くことが、
迷いながらも計画を整理する第一歩になっていました。

項目 数値 前提条件・補足 読者がイメージしやすい意味
融資額 635万円 日本政策金融公庫から借入 初期投資や運転資金の大部分をカバーする想定
自己資金 200万円 オーナー自己資金 融資以外に出せる余裕資金の目安
初期投資総額 835万円 内装・設備・運転資金の合計 開業準備に必要な資金全体の規模感
席数 25席 1階10席、2階15席 月商目標を現実的に試算するための基本条件
月商目標(開業1ヶ月目) 111.5万円 ディナー中心・オーナー1名体制 目標売上がどの程度現実的かを判断する指標
損益分岐点 月商約94万円 固定費・原価・人件費を考慮 この売上を超えれば赤字にならないライン
月々返済額 約6.1万円 10年返済・据置0.5年 返済負担が運営に与える影響をイメージ
飲食店経営や開業、税務・集客に関するご相談を受け付けています。

数字に付いていた「前提条件」

理想値ではなく、現実的な運営の中で届くかどうかを考える

月商111.5万円という数字は、
決して「毎日満席になれば達成できる理想値」ではありませんでした。

  • ディナー営業のみ(15:00〜23:00)
  • テイクアウト比率は低めに設定
  • 客単価4,500円を毎日達成する想定ではない
  • 開業当初はオーナー1名運営

つまり、この売上は単なる目標ではなく、
体力・時間・人件費を抑えた運営の中で現実的に届くかどうかを考えるための数字でした。
「111万円を必ず超えなければ」と肩に力を入れるものではなく、
あくまで計画の整理や検討を始めるための基準です。

損益分岐点の94万円も同様で、
「ここを超えれば安心」というゴールではなく、
「ここを下回った場合、どのコストを削る/調整するか」を考えるための目安でした。

こうして数字を条件とセットで置くことで、
オーナー様は「数字に振り回される」のではなく、
判断や議論を進めるための会話の起点として活用できていたのです。
数字はあくまで、
「正解を示すもの」ではなく、
迷いを整理するための道具として扱われていました。

融資635万円が意味していたこと

融資額は評価ではなく、計画を考えるための数字

創業融資の金額は、事業の評価そのもののように受け取られがちです。
「635万円も融資が出たのだから、計画は問題ないはず」と考えてしまうこともあるでしょう。
でも実際、オーナー様自身は本当にこの金額で足りるのか、返済が回るのかと、何度も迷いながら計画書を確認していました。
ただ、この事例では、635万円という数字を単なる信用の証明として扱ってはいませんでした。

  • 自己資金比率:約24%
  • 内装費・物件取得費・運転資金を明確に分解
  • 居抜き物件による初期投資抑制

数字が評価されたのではなく、
「資金の使い道を具体的に説明できる状態」が評価された、という整理のほうが近い印象です。
審査官は「融資額の大小」ではなく、お金の流れや妥当性、リスクへの備えを見ていました。

オーナー様自身も、計画書を確認するたびに問い直していました。
「この金額で足りるか」よりも
「この内訳で、誰にどう説明できるか」
融資635万円はゴールではなく、計画を検討するための材料です。
不安を抱えつつ数字を条件とセットで整理することで、運営プランや資金繰りの精度を確かめるきっかけになっていたのです。

月次収支計画と、ズレる感覚

月商や経費の数字は、調整ポイントを探るための会話材料

計画上の経常利益は約15万円。
数字だけを見ると、余裕があるようにも、ギリギリにも見えます。

  • 原価率:30%
  • 人件費:22.4万円(オーナー1名体制)
  • 家賃:15.6万円

でも、オーナー様自身が感じていたのは、数字上の余裕と現実の感覚のギャップです。
「月15万円の利益が出れば大丈夫」と頭では理解していても、実際には仕入れの価格変動や、想定外の出費、体調やモチベーションによる営業時間の変更など、毎月さまざまなズレが生じる可能性があります。
そのため、オーナー様は数字を絶対値として見るのではなく、調整可能な“余白”を確認する道具として扱っていました。
具体的には、

  • 売上が想定より低い月には、食材の仕入れ量やメニュー構成を微調整できるか
  • 仕入れ単価が上がった場合に、どの費用を削れるか
  • 自分一人での運営で体力が追いつかない日には、営業時間やオペレーションを柔軟に変えられるか

こうした「ズレへの備え」を、計画書を眺めながら何度も問い直していたのです。
利益計画だけを見ると「安心できる」と錯覚しがちですが、実務経験や体力、日々の変動を踏まえた上で初めて、数字は現実的な判断材料になります。
オーナー様は、数字と現実のズレを受け入れつつ、どこまで許容できるかを具体的に整理することを優先していました。
こうすることで、利益計画は単なる目標ではなく、実務の中での判断の起点として生きるのです。

月次収支計画と想定
項目(元記事) 計画値(万円) 想定ズレの例 調整・検討ポイント
売上高 111.5 来店人数が見込み未達 SNS集客・イベント企画の見直し
売上原価 33.5 食材価格が上昇 仕入れルート・価格交渉の検討
人件費 22.4 予想以上のオペ負荷 営業時間調整・スタッフ採用検討
家賃 15.6 固定費として変動なし 広告・消耗品費など他費目で調整
水道光熱費 5.0 季節変動など増加 設備効率化・節電
広告宣伝費 2.2 SNS反応が薄い 投稿方針・施策内容の改善
消耗品費 7.2 不足や急な消耗 在庫管理・使用量見直し
その他経費 8.9 想定外の支出 優先度に応じた支出コントロール
経常利益 15.2 売上低下や費用増加 利益維持のためのコスト調整
飲食店経営や開業、税務・集客に関するご相談を受け付けています。

数字だけでは決めきれなかった理由

数字だけでは見えない、不安や感覚が判断を動かす

この事例で印象的だったのは、
最終的な判断が、数字の外側にあったことです。

  • IT業界でのマネジメント経験
  • 調理師免許と過去の現場経験
  • オフ会需要という、数値化しにくい要素

数字だけで見ると、「月商111.5万円」「損益分岐点94万円」といった具体的な値はあります。しかし、オーナー様自身が抱えていたのは、計算だけでは測れない不安でした。

  • 仕入れや集客の変動で利益がどう動くか
  • 体力的に1人で回せるか、疲れたときの対応は?
  • 開業後に予定通りにお客様が来るか

こうした「感覚の部分」は、計画書や数字の表には表れません。それでも、オーナー様は自分の経験や強み、そして直感的に安心できるポイントを言葉にすることで、数字をただの記号から、現実に即した判断材料へと変えていきました。
最終的には、数字の大小だけで判断するのではなく、自分がどこまで踏ん張れそうか、どんなリスクなら許容できるかという感覚が、意思決定の中心になっていたのです。

判断材料としての事業計画書

計画書はゴールではなく、迷いを可視化する材料

事業計画書は、決して融資のためだけの資料ではありません。

  • 不安を整理するため
  • 家族やパートナーに説明するため
  • 自分自身に問い返すため

この事例では、計画書は単なる「ゴール到達の地図」ではなく、迷いを可視化する道具として使われていました。

  • 数字が足りているかどうか迷うとき
  • 内訳や前提条件を確認したいとき
  • どこなら妥協できるか、どこは譲れないかを考えるとき

オーナー様は、計画書に書き込んだ数字や前提を何度も見直し、修正しながら、自分の判断材料として活用していました。
書き直し、数字を動かし、前提を問い直す時間が繰り返されることで、計画書は「安心を与える資料」ではなく、考えを整理し、決断の精度を上げるための道具になっていたのです。

開業の悩み、今すぐ無料相談!

まとめ

創業融資635万円、月商111.5万円。
これらの数字は、条件が違えば、まったく違う意味を持ちます。
大切なのは、
その数字を「どう評価するか」より、
「その数字を見て、何を迷っているのか」を言葉にすることなのかもしれません。

数字は、決断を代わりにしてくれません。
ただ、考える材料として、静かにそこに置かれているだけです。
もし今、
事業計画書の数字を前にして立ち止まっているなら、

「合っているかどうか」ではなく、
「どこが引っかかっているのか」を整理する時間を持つ

という選択肢もあります。
数字の見方や意味づけは、人によって違います。
誰かと一緒に眺め直すことで、別の整理の仕方が見えてくることもあります。
必要であれば、私たちと一緒に数字や計画の整理をしてみる、という選択肢もあります。
無理に進めるものではなく、まずは話してみるだけでも、見え方が変わることがあります。