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自己資金だけでは危険!?開業前に知るべき融資と資金設計のリアル

こんにちは!REDISHでサービスコーディネーターをしている田邊です。
開業相談の現場で、私たちがほぼ毎週のように受ける質問があります。
どれも一見するともっともらしく、真剣に考えているからこそ出てくる言葉です。

ただ正直に言うと、
この質問が出てくる段階で、開業の設計順がズレているケースが多いのも事実です。
今回は、開業希望者の方から「よくある質問」を3つピックアップして、
「なぜその考え方が危うくなりやすいのか」
「どう考え直せば、失敗を避けられるのか」
を整理していきます。

よくある質問①「とりあえず物件を押さえてから考えればいいですよね?」

この質問が出てくる段階で、開業の失敗確率は一気に高まります。
理由はシンプルで、開業の設計順を根本から取り違えているからです。
多くの方は、こう考えています。

良さそうな物件を先に確保して、
そこからコンセプトや数字を詰めればいい

しかし、実務の現場ではこの考え方がほぼ必ず破綻します。

物件は「自由度」を奪う存在

物件が先に決まった瞬間、次の要素はすべて固定されます。

  • 家賃(毎月必ず発生する最低固定費)
  • 坪数(席数・厨房サイズの上限)
  • 設備条件(排気・給排水・ガス容量)

これはつまり、
売上の作り方そのものが後から調整できなくなるということです。
「どんな店にしたいか」ではなく、
「この箱で何とか成り立たせるにはどうするか」
という発想に追い込まれます。

数字で見る、典型的な破綻パターン

例えば、
家賃20万円・15坪の物件を先に押さえた場合を考えてみます。

  • 家賃比率を10%以内に抑えるなら → 必要売上は 月200万円
  • 15坪で10席取れると仮定すると → 1席あたり 月20万円

これを日割りすると、

  • 営業日数:25日
  • 1席あたり1日:8,000円
  • 客単価が4,000円なら、毎日2回転が最低条件になります。

ここで考えるべきは、「理論上できるか」ではありません。

  • その立地で本当に2回転するのか
  • その業態で回転を回し切れるのか
  • 人手・オペレーションは追いつくのか

この検証をせずに物件を決めると、
「頑張れば何とかなる数字」を前提にした無理のある事業計画が出来上がります。

融資が通らなくなる理由

金融機関は、このズレを必ず見ています。

  • 席数に対して売上想定が過大
  • 回転率の根拠が弱い
  • 家賃比率が高すぎる

その結果、「この計画、数字が合っていませんよね」で話が終わります。
これは運が悪いわけでも、担当者が厳しいわけでもありません。
設計順が逆だから、数字が破綻しているだけです。

正しい設計順

本来の順番は、次の通りです。

  1. 想定業態と客単価
  2. 現実的な回転率
  3. 必要な席数・坪数
  4. 許容できる家賃
  5. その条件に合う物件を探す

この順番を飛ばした物件探しは、
最初から選択肢を自分で潰している行為だと言えます。

NGな考え方 正しい考え方
① 良さそうな物件を探す ① 業態・客単価を決める
② 物件を押さえる ② 現実的な回転率を考える
③ 数字を後から合わせる ③ 必要席数・坪数を算出
④ 許容できる家賃を決める
⑤ 条件に合う物件を探す
飲食店経営や開業、税務・集客に関するご相談を受け付けています。

よくある質問②「知り合いは◯◯万円借りられたらしいんですが…」

この質問が出てくると、判断の軸が「自分の事業」から「他人の事例」に移り始めます。
ただ、融資は「いくら借りられたか」を比べて決めるものではありません。
むしろこの段階で重要なのは、「自分の事業はいくらまで耐えられる構造なのか」を把握できているかどうかです。

比較対象にしていいのは「人」ではない

金融機関が見ているのは、その人ではなく事業の中身です。
具体的には、

  • 業態(原価率・回転率・利益構造)
  • 立地(商圏・客層・需要の安定性)
  • 経験(その業態での再現性)
  • 自己資金比率(リスクの取り方)
  • 事業計画の整合性(数字の一貫性)

つまり、条件が一つ違うだけで、適正な融資額は簡単に変わるということです。
他人の融資額は、参考にならないどころか、自分の判断軸を曇らせる原因になることも少なくありません。

危険なのは「借りられる額=借りていい額」という発想

実際の相談現場では、

  • 見積がまだ固まっていない段階で最大額を気にする
  • 返済額を「あとで何とかなるもの」として扱う
  • 売上は楽観、支出は最低ラインで置いている

こうした状態で「いくら借りられますか?」という質問が出てくることが少なくありません。
金融機関から「1,000万円までなら出せますよ」と言われたとしても、

  • 返済が利益を圧迫する
  • 固定費が重くなり、身動きが取れなくなる

のであれば、その金額は適正ではありません。

正しく見るべき指標

融資額を考えるときは、次のような視点で整理する必要があります。

  • 月次返済額 ÷ 想定営業利益
  • 家賃+返済額 ÷ 売上
  • 最低何ヶ月、売上がズレても耐えられるか

これらを基準にして、
「借りられる額」ではなく「自分の事業にとっての適正額」を決めていきます。
融資は、比較するための数字ではなく、設計するための数字です。

よくある質問③「借金は怖いので、できるだけ借りずにやりたいです」

この言葉自体は、間違っていません。
むしろ、リスクを意識できている健全な感覚です。
ただしこの段階では、家計の延長線で経営を考えてしまっているケースが多く見られます。
家計であれば、「借金をしない=安全」という判断は、ある程度成立します。
しかし事業では、お金は“安心材料”ではなく“選択肢の数”です。
この視点が抜け落ちると、開業後に一気に身動きが取れなくなります。

問題は「借金の有無」ではない

開業後に事業が詰まる原因は、借金があることそのものではありません。
多くの場合、次の状態に陥ったときに詰まります。

  • 手元資金が足りない
  • 想定外の事態に耐えられない
  • 判断を先延ばしできない

つまり本当のリスクは、
「失敗すること」ではなく、「選択肢が残っていないこと」にあります。

自己資金だけで進めた場合の落とし穴

例えば、自己資金500万円で開業するケース。

  • 内装・設備で400万円
  • 開業準備・諸費用で50万円

ここまでで、使途としては妥当に見えます。見積書も揃っており、計画として「間違っている」ようには見えません。
しかし、残る運転資金は50万円です。この状態で、

  • 売上の立ち上がりが1ヶ月遅れる
  • 想定外の修繕やトラブルが起きる

と、損益計算上は黒字でも、資金繰りは一気に不安定になります。

融資は「攻め」ではなく「守り」のために使う

融資の本質は、事業を大きくするための“攻めの資金”ではありません。

  • 売上が想定より遅れても耐える
  • 数字を冷静に見直す時間を買う
  • 無理な判断をしない余白を作る

ための、守りの設計です。
本来、開業直後は「様子を見る」「仮説を修正する」「待つ」という判断ができる状態が理想です。
しかし借入を抑えすぎると、その“待てる状態”が最初から失われます。

金融機関との関係という視点

金融機関は、「事業の想い」よりも「実績として確認できる事実」を重視します。
その中で、融資実績は

  • 返済能力の証明
  • 数字を守ってきた履歴
  • 金融機関から見た信用スコア

として、確実に蓄積されていきます。
一方で、「今回は自己資金でやり切った」「借金は一度もしていない」という事実は、金融機関にとっては評価材料が存在しない状態でもあります。
その結果、設備更新や多店舗展開といった成長フェーズで、「実績がないため今回は難しい」と言われてしまうケースも珍しくありません。

重要なのは、「いくら借りるか」「何のために使うか」「どこまで余白を持たせるか」。
借り方と使い方を、最初から設計することです。
融資はリスクではなく、リスクに耐えるための道具です。

飲食店経営や開業、税務・集客に関するご相談を受け付けています。

おわりに

今回紹介した3つの質問は、どれも「知識が足りない」から出てくるものではありません。
むしろ、「失敗したくない」「慎重に進めたい」という真剣さがあるからこそ、多くの方が同じところで悩みます。

ただ、開業には感覚で考えていいフェーズと、構造で整理すべきフェーズがあります。
もし今、判断の順番に自信が持てない、このまま進めていいのか不安という状態であれば、一度立ち止まって整理するだけで、失敗の確率は大きく下げられます。

REDISHでは、こうした「ズレが起きやすい判断ポイント」を前提に、開業全体の設計から一緒に整理しています。進める前に、考え方の順番だけでも確認してみてください。
私は、モノを売って終わりではなく、未来まで一緒に並走するパートナーでありたいと思っています。

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