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コラム

【創業融資900万円】経験を活かした自家製生パスタ店!30年の実績を武器にしたイタリアンオーナー

「長い経験があるのに、なぜ融資が通らないんだろう?」

その答えは、「経験」を融資担当者が納得する数字とロジックで説明できているか、にかかっています。
たった4ヶ月で月商295.9万円。さらに、創業融資900万円の調達にも成功──。
【イタリアンバル業態】は、開業早々に軌道に乗せ、多くの飲食店オーナーが夢見るスタートダッシュを実現しました。
しかし、これは偶然ではありません。
鍵となったのは、立地選定、資金計画、融資審査対策まで一つひとつ丁寧に積み上げた「開業準備の戦略」です。

本記事では、

  • リアルな資金計画の中身
  • 融資審査で評価されたポイント
  • 売上につながるシミュレーションの立て方

など、実際に使用された事業計画書をもとに、成功の裏側を余すことなくお届けします。
「自分にもこんな開業ができるのか?」
そんな不安を抱える方にこそ読んでほしい、実践に使える開業のリアルが詰まった一例です。

事業概要

開業の成功には、「お店の基本情報」が土台として欠かせません。
業態、営業時間、席数、スタッフ構成、そして目標とする売上…。
まずは、この事業がどんなビジョンでスタートしたのか、事業の全体像を見ていきましょう。

✅ 基本情報

業態 カジュアルイタリアン(自家製生パスタと旬食材)
営業形態 11:00〜23:00(定休日なし)
席数 16席
従業員構成 オーナー1名、アルバイト3名(開業当初)
客単価目標 ランチ:1,500円 / ディナー:5,000円
月商目標 295.9万円(軌道に乗った後/開業4ヶ月後以降)

次に、どんな場所で出店したかを見ていきましょう。

立地条件と選定理由

「なぜこの場所を選んだのか?」
それは、開業成功のカギを握る最初の選択です。
人の流れ、競合の有無、周辺環境、そして賃料と売上見込みのバランス。
すべてを冷静に見極めたうえで、勝てる立地を見つけ出しましょう。
出店場所の基本情報と、そこに決めた戦略的な理由を詳しく見ていきましょう。

所在地 近隣に高級マンションが複数ある立地
周辺環境 チェーン系カレー店、ラーメン店、焼肉店、喫茶店などが複数立地、近隣に高級マンションが複数、前テナントは20年以上営業していた弁当店
立地選定のポイント ・女性2人組やファミリー層が気軽に立ち寄れるカジュアルイタリアンが周辺に少ない
・週末は富裕層の外食ニーズが見込まれる
・立地として認知度があるため安定した売上を目指す

お店の売上は「どこに出すか」で大きく変わります。そのため、妥協せず立地を選びましょう。

賃貸条件

飲食店の経営において、家賃は毎月発生する固定費として、利益を左右する大きな要素になります。
参考として、契約時にかかった家賃をご紹介します。

月額家賃 30万円

物件選びは「立地」だけでなく、家賃と広さのバランスが事業の継続性に直結します。
収支計画と照らし合わせながら、無理のない条件で契約できたことが、その後の安定経営にもつながります。

資金計画

お店を始めるにあたって、実際にどれくらいの資金が必要なのか?
内装や厨房機器といった初期投資の内訳に加え、創業融資の活用状況や返済計画まで詳しくご紹介します。「資金の全体像」がイメージできるリアルな数字が詰まっています。

項目 金額 備考
融資申請額 900万円 日本政策金融公庫 国民生活事業
物件取得 300万円 保証金、敷金、礼金、仲介手数料など
厨房機器 200万円
内装工事 300万円
運転資金 430万円 商品仕入、家賃、人件費、その他経費3ヶ月分
合計 1,230万円 自己資金: 330万円 融資: 900万円

✅ 返済計画

返済期間 10年
月々返済額 元金返済はなし(据置期間0.5年)、月々支払利息は2.8%で算出

資金調達は、夢を形にする最初のハードルとも言えます。
無理のない自己資金と、堅実な返済計画をベースに準備を整えたことが、開業後の安定経営につながります。

月次収支計画

「この立地・この業態で、本当に利益は出るのか?」
そんな疑問に応えるのが、月ごとの収支計画です。売上予測と支出項目を細かく試算し、黒字転換のタイミングや収益性の見通しを明確にしています。リアルな数字を通じて、経営の全体像が見えてきます。

✅ 月次収支計画(開業6ヶ月目:2026年1月想定)

項目 金額(千円) 備考
売上高 238.2万円 ランチ:1,500円 / ディナー:5,000円 / テイクアウト:900円
売上原価 71.5万円 売上の30%
人件費 44.8万円 オーナー1名、アルバイト4名
家賃 30万円
水道光熱費 12万円
広告宣伝費 4.8万円 売上の2%
消耗品費 9.5万円 売上対比4%
その他経費 19.1万円 売上対比8%
融資返済(支払利息) 2.1万円
経常利益(生活費込) 19.5万円 生活費25万円控除後

この月次計画をもとに、どのラインを超えれば黒字化できるのか、どこに支出の余地があるのかを具体的に把握します。
利益を生み出すための道筋が、開業前から明確になっていることがポイントです。

融資審査のポイント解説

日本政策金融公庫などの創業融資をスムーズに通すには、「何を」「どう説明するか」が重要です。
市場のニーズや競合状況、利益が出る見込みを、どれだけ具体的に伝えられるかが審査通過の鍵を握ります。
実際に評価されたポイントを軸ごとに整理し、説得力ある計画づくりのヒントをまとめました。

✅ 市場分析で評価されたポイント
ポイント 記入例
ターゲット市場の明確化 メイン客層は20〜40代の女性会社員、週末はファミリー層、近隣に高級マンションが複数あり富裕層の外食ニーズも見込む
マーケットリサーチの徹底 ・周辺にチェーン系飲食店が多い中でカジュアルイタリアンは少ない状況を把握
・前テナントの弁当店が閉店したことで一定の固定客が食事場所を求めている状態であると分析
需要予測の具体性 ・ランチ客単価1,500円、ディナー客単価5,000円、テイクアウト客単価900円を設定
・開業後4ヶ月目(11月)以降に満席率が50%(ランチ)/35%(ディナー)に達する計画を提示
✅ 競合分析で評価されたポイント
ポイント 記入例
差別化戦略の明確さ 周辺競合店はカレー、ラーメン、焼肉、喫茶店で、女性やファミリー層が立ち寄りやすいカジュアルイタリアンで差別化、毎朝製麺する自家製生パスタの「食感と喉越し」を強みとする
SWOT分析の質 強み:30年以上の飲食業経験(調理・サービス・経営の両面)、自家製生パスタという独自商品、弱み:新規開業(事業を経営していた経験はない)
✅ 原価率・収益性分析で評価されたポイント
ポイント 記入例
原価管理の具体性 売上原価率は30%を維持する計画、仕入先は関東食糧や佐勇など複数社を確保
収益構造の透明性 ・商品構成の売上シェアは、自家製生パスタ35%、彩り前菜45%、メインディッシュ20%と設定
・ランチ1,500円、ディナー5,000円と客単価設定を明確化
資金繰り予測の精緻さ ・12ヵ月の月次資金繰り表を作成し、開業当初の運転資金(3ヶ月分)を確保
・開業初月(25年7月)に現金残高438万円を維持する計画

融資を通すためには、数字だけでなく計画の中身にどれだけリアリティがあるかが問われます。
根拠をもって示すことで、「返済可能な事業」として信頼を得ることができるのです。

飲食店開業前の必要資金と審査のポイント

融資審査では、「その設備、本当に必要ですか?」という視点で投資内容が精査されます。
内装工事や厨房機器といった初期投資についても、金額の妥当性や将来性、衛生基準への適合性などが評価対象となります。
ここでは、実際に審査担当者が注目するポイントとともに、設備投資をどう説明したのかを整理しました。

✅ 内装工事費の内訳と審査ポイント
工事項目 金額 審査ポイント
内装工事費 300万円 ・内装費が坪単価20〜30万円程度が目安とされる中で、妥当な金額である
・内装は木の温もりと柔らかな照明で落ち着ける空気感を演出(集客・快適性)
物件取得費 300万円 ・家賃12ヶ月分(保証金、敷金、礼金、仲介手数料含む)が参考とされている中で、妥当な金額である
厨房設備工事 200万円 ・自家製生パスタを提供する上で、製麺機などの専用設備の費用が盛り込まれているか
合計 800万円 ・過剰投資ではなく、事業に必要な設備に絞っているか
審査通過のポイント 複数の業者から見積もりを取得し、比較検討した経緯
内装と集客効果との関連性を説明できること
将来的なメンテナンスの抑制まで見据えた設計
✅ 厨房設備の内訳と審査ポイント
設備項目 金額 審査ポイント
製麺機(想定) 200万円 ・自家製生パスタという差別化要素としての必要性
・投資回収計画の提示
冷凍冷蔵庫(想定) 200万円 ・食材保管管理計画(例:食材保管/衛生)の整合性
・設備規模が適切であること
調理コンロ(想定) 200万円 ・火入れの時間も秒単位で管理し、肉や魚のうまみを最大限引き出すという調理へのこだわり
食器類(想定) 200万円 ・色彩・立体感・器の質感にこだわり、写真映えする盛り付けへの配慮
審査通過のポイント(厨房設備) 購入とリースの比較検討を行った説明
中古・リユースの活用で初期投資を抑えた工夫
設備投資が売上や業務効率にどうつながるかを数値で説明

※表内の金額は厨房機器全体の内訳としての想定値です。

✅ 初期運転資金の内訳と審査ポイント
項目 金額 審査ポイント
人件費(3ヶ月分) 101万円 ・研修/教育の合理性
・スタッフ配置計画(例:スタッフ配置/育成方針)の明確さ
その他経費(3ヶ月分) 92万円 ・集客/告知計画(例:広告宣伝費、SNS、Webメディア掲載)の具体性
・費用対効果やKPIの想定
家賃(3ヶ月分) 90万円 ・工事期間の見積
・準備〜開業までのスケジュール管理が適切か
商品仕入(3ヶ月分) 148万円 ・在庫回転管理体制(例:在庫回転/発注ルール)
・仕入先との契約内容
・条件の説明
審査通過のポイント(初期運転資金) 開業後3ヶ月間の資金繰り表(例:資金繰り/キャッシュフロー)を作成済
売上が未達となった場合のコスト削減対応策(例:コスト削減、販促強化)
現金残高の最低必要金額維持(例:最低必要金額)の根拠を提示

審査を通すためには、金額をただ並べるだけでなく、「なぜそれが必要か」を明確に語ることが求められます。将来の運営コストやメンテナンスを見据えた設計まで伝えられたことが、信頼獲得につながります。

成功のポイント

売上が伸びたお店には、必ず「うまくいった理由」があります。
ここでは、開業前の準備・リスク管理・商品開発・実務経験の活用といった観点から、実際に成果へとつながった工夫や取り組みを整理しました。これから開業を目指す方にとって、再現性のあるヒントが詰まっています。

項目 具体的な取り組み
開業前の徹底準備 ・30年以上にわたる飲食業界での経験(調理・サービス・店長・マネージャー・取締役)
・新店舗立ち上げ支援やオペレーション改善の経験を活かす、プレオープン、グルメインフルエンサーの招待、地域紙
・Webメディアへの掲載依頼を開業前に行う
リスク管理の具体策 ・売上原価率を30%に設定し、利益を確保する計画
・家賃比率が17%〜13%に収まる計画
・FL比率を60%前後にコントロールする計画
差別化要素の明確化 自家製生パスタ(粗挽き小麦配合でモチモチの弾力と滑らかなのど越し)、旬の食材を使った彩り前菜(見た目もおいしい)、火入れにこだわった肉魚のメインディッシュ
実務経験の活用 取締役として最大20店舗体制の財務管理・原価管理・出店戦略に携わった経験、調理師免許、食品衛生責任者を取得済み

融資がうまくいった背景には、入念な準備と、実行力のある戦略がありました。
成功は偶然ではなく、ひとつひとつの積み重ねが生んだ必然です。

融資面談で効果的だった回答例

融資面談は“一発勝負”。限られた時間の中で、自信と説得力をもって事業計画を伝える力が求められます。
ここでは、実際の面談で高評価につながった受け答えを具体的にご紹介します。
「どう答えれば審査担当者に響くのか?」そのヒントとしてぜひ参考にしてください。

Q: 飲食未経験での開業リスクをどう考えていますか?
A: 私は30年にわたり、個人経営から多店舗展開企業まで、調理、サービス、店長、マネージャー、取締役と幅広く経験を積んでまいりました。特に、新店舗立ち上げ支援や月次経営会議での財務管理、原価管理の経験から、現場力だけでなく経営的な視点も備えているため、リスクを最小限に抑えられます。
Q: 競合店が多い中でどのように差別化しますか?
A: 周辺にはチェーン店のカレーやラーメンが多いですが、女性客やファミリー層がターゲットのカジュアルイタリアンは少ない状況です。当店では、毎朝製麺する自家製生パスタと、見た目にも美しい旬の食材を使った彩り前菜を看板商品とし、競合にはない「食事を超えた体験」を提供します。
Q: 初期投資が多いですが、回収見通しはどうですか?
A: 初期投資1,230万円のうち、900万円を融資で調達しますが、330万円の自己資金を確保しています。運転資金として3ヶ月分を確保しているため、開業初期の売上未達リスクにも対応可能です。収支計画では開業後6ヶ月目(26年1月)には経常利益195千円を見込んでおり、堅実な返済計画に基づき確実に利益を出します。

クライアント様の声

「あの時、事業計画書を作って良かった」
ーー実際に支援を受けて開業・融資に成功したオーナー様の声をご紹介します。ーー

【イタリアンバル業態】オーナー 吉田克彦様

長年温めてきた「自家製生パスタと旬の食材で、お腹も心も満たす空間をつくりたい」という想いを、具体的な事業計画書として形にすることができました。30年以上の経験を活かし、地域に根差した愛されるお店を創り上げていきます。

融資審査官が重視したポイント

創業融資の審査では、「どんな事業か」だけでなく、「どこまで具体的にリスクや根拠を提示できているか」が重要視されます。
実際に本件の融資審査を担当した日本政策金融公庫の審査官に、評価されたポイントを伺いました。事業計画を作成する際に押さえるべき実践的な視点として、ぜひ参考にしてみてください。

項目 審査官のコメント
市場・競合分析の具体性 「周辺に競合が少ないカジュアルイタリアンという業態の選定理由、また近隣の富裕層ニーズを捉えている点など、具体的なターゲット分析が説得力を持っていました」
リスク認識と対応策 「FL比率を60%前後、家賃比率を17%以下1にコントロールする計画が明記されており、固定費を抑えるリスク管理意識の高さを感じました」
経験の活かし方 「取締役経験や新店舗立ち上げ支援の経験を自身の強みとして明確に事業計画に反映していた点が評価につながりました」
資金計画の精緻さ 「初期投資の内訳が詳細で、各項目の必要性と投資回収計画が明確だったことが信頼性向上につながりました」

支援サービスの流れ

飲食店の開業準備は、融資申請や収支計画だけでなく、「自分の想いを形にする設計力」が求められます。
本サービスでは、アンケートからヒアリング、事業計画書の納品・融資面談対策までを一貫してサポートいたします。飲食業界に特化した視点で、融資通過と開業成功に向けた実践的な支援を行っています。
以下は、実際の支援ステップとその中で重視しているポイントのご紹介です。

ステップ 1
アンケート段階でのサポート
飲食店特有の質問項目(技術経験、仕入れルート、メニュー構成など)、開業計画の骨子作成、必要資金の概算把握113
ステップ 2
オンラインヒアリング1回目のポイント
創業の動機と経験の整理、競合分析と差別化要素の明確化、初期投資の妥当性検証
ステップ 3
オンラインヒアリング2回目の重点事項
収支計画の詳細検討、資金繰り表の精緻化, 出店立地の評価と選定理由の整理
ステップ 4
事業計画書納品と融資面談準備
審査官の質問予測と回答準備、プレゼンテーションのポイント指導、必要書類の最終チェック

まとめ

本事例の成功は、オーナーの30年にわたる豊富な飲食経験1と、それを裏付けとした自家製生パスタという強力な差別化要素、そして堅実な資金計画が三位一体となった結果と言えます。特に、経営層での経験を活かし、売上原価や人件費などの固定費を厳しくコントロールする計画が、融資審査での高い信頼につながりました。開業成功は、夢や情熱だけでなく、緻密で客観的な事業計画と戦略的な準備から生まれることを示しています。

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飲食店開業は、多くの人にとって初めての挑戦であり、不安や悩みがつきものです。だからこそ、私たちは一人ひとりに寄り添い、最初の一歩から実現までをしっかりサポートしたいと考えています。
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