Column
コラム
こんにちは。 REDISHで飲食店開業サポートを担当している弓逹です。
飲食店の経営は、一見シンプルに見えることがあります。「売上さえ上がれば儲かる」と考えがちですが、実際には多くの店舗が「売上偏重型」の数字管理に陥っています。売上は伸びているのに利益が出ていなかったり、体感では儲かっているつもりでも経費がかさみ赤字になってしまうケースも少なくありません。
このコラムでは、そうした「売上だけに頼った数字管理」の危険性と、利益構造を正しく把握するためのポイントについて解説していきます。
1. 売上至上主義の落とし穴
多くの飲食店経営者は、日々の数字としてまず「売上」を確認します。「昨日は売上10万円だった」「先週より売上が3%増えた」といった数字は、感覚的に成果を把握しやすく、非常に目立ちます。そのため、売上の増減だけで経営の健康状態を判断してしまいがちです。しかし、ここに大きな落とし穴があります。売上はあくまで「収入の総額」であり、実際の利益の額を示すものではありません。
例えば、売上100万円の月があったとしても、原価や人件費、家賃、光熱費、広告費など経費の総額が90万円であれば、手元に残る利益はわずか10万円です。売上だけに目を奪われると、「順調だ」と錯覚してしまい、無駄な仕入れや過剰な人員配置、効率の悪いオペレーションを見逃してしまうことがあります。
さらに問題なのは、売上が好調なときほど落とし穴が見えにくい点です。繁忙期に売上が伸びても、スタッフの増員や食材の仕入れ過多によって原価や人件費が膨らめば、利益は思ったほど増えません。逆に、閑散期に売上が落ち込むと、固定費の負担が重くのしかかり、赤字になるリスクも高まります。
つまり、「売上が上がっている=儲かっている」という単純な見方では、飲食店経営の実態を正確に把握することはできません。経営の判断を誤らないためには、売上だけでなく、利益に直結する数字も同時に把握することが不可欠です。
2. 利益構造を分解して見ていない
利益は単に売上から経費を引いたものですが、経費の内訳を理解せずに管理するのは非常に危険です。「売上が伸びている=儲かっている」と勘違いすると、無駄なコストや非効率な運営に気づけず、気づいたときには利益がほとんど残っていない…という事態にもなりかねません。
飲食店経営において重要な経費は、大きく分けると以下の三つです。
原価 食材費やドリンクの仕入れ費用が該当します。一般的には売上の30〜35%程度が理想とされます。原価が高すぎると、いくら売上が上がっても利益は圧迫されます。 例えば、人気メニューだからといって高級食材をふんだんに使うと、一見売上は伸びても利益率は低下します。メニューごとの利益率を把握し、価格や仕入れを調整することが重要です。また、食材ロスの削減や仕入れルートの見直しも、原価管理には欠かせません。
人件費 スタッフの給与、社会保険料、アルバイト手当などが含まれます。売上に対する人件費の割合は一般的に25〜30%が目安です。 体感で「忙しい日は人が足りない」と判断して多く雇うと、人件費が膨らみ利益を圧迫します。逆に人員が少なすぎるとサービスの質が下がり、売上そのものに悪影響を及ぼすリスクもあります。シフトや配置を売上予測に合わせて調整することが、効率的な人件費管理のカギです。
固定費 家賃、水道光熱費、リース料、広告宣伝費など、売上に関わらず発生する費用です。特に家賃は固定費の中でも大きな割合を占めるため、利益計算の見落としが赤字の原因になります。 また、光熱費やリース料も積もれば大きな支出になります。契約内容の見直しや節電・効率化の取り組みは、利益改善の重要なポイントです。
この三つを分解して定期的にチェックすることで、売上だけでは見えなかった「本当の儲け」を把握できるようになります。さらに、利益構造を可視化することで、どのメニューや時間帯が利益に貢献しているのか、どの経費が負担になっているのかを明確に把握でき、無駄な支出や非効率な運営を改善する判断材料になります。
3. 経費の体感と現実のギャップ
飲食店の経営者は、どうしても「感覚」に頼りがちです。「このくらいの経費なら大丈夫」と思っていても、実際には原価や人件費が高く、利益が少ないことは珍しくありません。特に新規出店や繁忙期には、売上が増える一方で経費も膨らむため、利益が思ったほど残らないケースが多く見られます。
例えば、繁忙期にスタッフを増員した結果、売上は20%増えたとします。しかし同時に人件費も20%増え、さらに食材の仕入れや光熱費も増加すると、利益はほとんど変わらない、あるいはむしろ減ってしまうことがあります。また、広告費やキャンペーン費を追加で投入すると、短期的には売上が伸びても利益に貢献しない場合もあります。このような「売上の伸びと利益の伸びのギャップ」は、多くの店舗で見落とされがちです。
さらに、体感で経費を管理していると、以下のような落とし穴にも陥ります。
原価の高騰を見逃す 人気メニューだからと多めに仕入れたり、食材の単価上昇に気づかないまま提供を続けると、利益率が低下します。
人件費の過剰投入 「忙しい日はスタッフが足りない」という感覚だけでシフトを増やすと、人件費が売上増加以上に膨らむことがあります。
固定費の負担増 契約更新や設備追加などで固定費が増えても、売上だけ見ていると利益圧迫に気づきにくいです。
こうしたギャップを把握せず「売上は順調」と安心してしまうのは非常に危険です。経営判断を誤らないためには、日々の数字を感覚ではなく、原価率・人件費率・固定費率・利益率などに分解して可視化することが欠かせません。こうすることで、売上が伸びている日でも利益が残らない原因を特定し、改善策を打つことができるようになります。
4. 危険な数字管理を避ける方法
では、具体的にどうすれば危険な数字管理を避けられるのでしょうか。ポイントは以下の通りです。
売上だけでなく利益率を見る 日次・週次・月次で、売上に対する原価率・人件費率・固定費率をチェックします。 例えば、ランチタイムの売上は好調でも、原価率が高く利益がほとんど残っていない場合があります。この場合、原価の見直しやメニュー価格の調整が必要です。利益率が低いメニューや時間帯を把握することで、効率的な改善策を検討できます。
原価管理を徹底する メニューごとの原価を正確に計算し、仕入れコストの見直しや食材ロス削減を行います。 例えば、人気メニューだからと大量に仕入れると、売上は伸びても廃棄や原価高騰で利益が圧迫されます。原価率を意識した発注と仕入れ判断を行うことで、利益に直結する運営が可能になります。
人件費を最適化する スタッフのシフトを売上予測に合わせて調整し、繁忙期と閑散期で適切に人員を配置します。 例えば、予約状況や曜日別の客数データを活用してシフトを組ると、必要以上の人件費を抑えながらサービス品質を維持できます。効率的な人件費管理は、利益確保の大きなポイントです。
固定費の見直し 家賃や光熱費、リース料などの固定費は、交渉や契約変更、節電などで改善できる場合があります。 例えば、光熱費の高い設備を効率的に運用したり、契約更新時に条件交渉を行うだけでも、年間数十万〜数百万円のコスト削減につながることがあります。固定費は削減できる余地を常に探すことが大切です。
月次・週次の数字を可視化する 売上・原価・人件費・固定費・利益をグラフや表で分かりやすく可視化します。 例えば、日別・時間帯別の利益率グラフを作成すれば、どの時間帯やメニューが利益を圧迫しているのか一目で分かります。体感ではなく数字で判断する習慣をつけることが、経営の安定につながります。
数字を細かく分解して管理することは、決して難しい作業ではありません。ポイントを押さえ、定期的にチェックするだけで、売上に惑わされず、安定して利益を確保できる経営が可能になります。
5. 数字管理は“儲けを見える化するツール”
数字管理は、単なる計算作業ではありません。売上や経費を分解して把握することは、店舗の“儲けの構造”を理解することに直結します。例えば、時間帯別や曜日別に売上・原価・人件費を整理すると、「ピーク時は利益率が低く、閑散時間は逆に効率が良い」といったパターンを把握できます。
また、メニューごとの利益率を可視化することで、「人気だけど原価が高く利益が少ないメニュー」と「売上は控えめでも利益率が高いメニュー」を明確に区別でき、価格調整や仕入れの最適化などの戦略を立てやすくなります。こうした情報は、単に売上の数字を見るだけでは得られません。
逆に、売上だけを見て経営判断をすると、体感に頼った運営になりやすく、無駄な仕入れや過剰な人員配置を見逃してしまいます。その結果、利益を圧迫し、最悪の場合は赤字経営につながります。例えば、忙しい日はスタッフを多めに配置して売上を伸ばす戦略を取ったとしても、原価や人件費を意識せずに運営すると、売上は増えても利益はほとんど残らないという状況が起こり得ます。
つまり、数字管理は「儲けを見える化するツール」です。売上や経費を分解し、利益構造を可視化することで、経営判断は圧倒的に正確になります。経営者が感覚ではなく、数字に基づいて意思決定を行えるようになることが、安定した利益確保と持続可能な店舗運営につながるのです。
6. まとめ
飲食店経営において、売上はあくまで「スタート地点」に過ぎません。利益構造を正確に把握し、原価・人件費・固定費を分解して管理することが、長期的な店舗の健全経営には不可欠です。
危険な数字管理に陥らないためには、次の点を意識してください。
売上だけに目を奪われず、利益率を必ず確認する どんなに売上が伸びても、原価や人件費が膨らめば利益は残りません。日次・週次で利益率をチェックする習慣をつけましょう。
原価・人件費・固定費の構造を理解して管理する メニューごとの利益率や、時間帯・曜日別の人件費バランスを把握することで、効率的な運営やコスト削減が可能になります。
感覚ではなく、数字で経営判断を行う 体感だけで「順調」と判断するのは危険です。数字を可視化することで、客観的に改善点を把握し、確実に利益を増やす経営ができます。
これらを徹底すれば、体感での「順調」という錯覚から抜け出し、実際に儲かる飲食店経営を実現できます。たとえば、人気メニューの原価を見直したり、繁忙期の人員配置を最適化するだけでも、利益は大きく改善されるケースがあります。
数字を怖がる必要はありません。むしろ、数字を味方につけることで、店舗運営の不確実性を減らし、安定的な成長を手に入れることができます。毎日、毎週、数字を確認し、改善策を小さくでも着実に実行すること。それこそが、長期的に「儲かる飲食店」を作る最短の道です。
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