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税理士監修|飲食店の2店舗目はいつ出す?失敗しない出店判断のポイント

私たちが飲食店オーナーの方から受ける相談の中で、開業や資金繰りに次いで多いのが「2店舗目を出すべきかどうか」というご相談です。
1店舗目が軌道に乗り、売上や利益が安定してくると、「今の勢いのうちに出店したい」「他のエリアにも店舗を増やしたい」と考える方は少なくありません。実際、多店舗展開によって売上や企業価値を大きく伸ばしている飲食店も数多く存在します。

一方で、これまで数多くの飲食店経営をサポートしてきた中で、1店舗目は順調だったにもかかわらず、2店舗目の出店をきっかけに資金繰りが悪化したり、人材不足によって既存店の品質が低下したりするケースも見てきました。
多店舗展開の成否を分けるのは、「出店するかどうか」ではなく、「いつ出店するか」「どのような準備をして出店するか」です。

特に飲食店の場合、出店には多額の設備投資が必要となるため、感覚的な判断ではなく、資金計画や収益計画に基づいて進めることが重要です。
本記事では、実際の相談事例でよくある課題を踏まえながら、

2店舗目を出す最適なタイミング
出店前に準備しておくべきこと
設備投資の判断基準
融資と補助金の活用方法
多店舗展開を成功させるための財務管理

について、税理士の視点から分かりやすく解説します。
「いつかは2店舗目を」と考えている方はもちろん、すでに出店を検討している方も、ぜひ参考にしてください。

監修:中村 謙一 (クロスポイント税理士法人|代表社員)

事業会社の経理職を経て税理士業界へ進み、現在はプロフェッショナル組織「REDISH」のプロジェクトにも参画。実務経験に裏打ちされた管理会計や資金繰り支援を得意とし、現場に寄り添った経営サポートを強みとする。

また、VBAからGASへの移行など、ITを活用したデータ処理の自動化による業務効率化にも注力しており、迅速かつ正確な対応を実現している。

2店舗目を出すタイミングはいつがベスト?

結論:1店舗目が「安定黒字」になったとき

飲食店オーナーの方から「そろそろ2店舗目を出したいのですが、今がタイミングでしょうか?」という相談をよく受けます。
その際、私がまず確認するのは「1店舗目がどれだけ安定して利益とキャッシュを生み出せているか」です。

売上が好調だから、あるいは忙しくてお客様を断ることが増えたからという理由だけで出店を決断するのは危険です。多店舗展開では、新店舗への投資だけでなく、既存店の運営体制や人材育成、資金繰りまで含めて判断する必要があります。
そのため、2店舗目の出店タイミングとして最も重要なのは、1店舗目が継続的に安定した黒字を出していることです。

ここでいう「安定黒字」とは、単に数か月利益が出ている状態ではありません。繁忙期・閑散期を一通り経験したうえで、年間を通して安定的に利益を確保できている状態を指します。

多店舗展開を検討できる目安

以下のような条件を満たしている場合、多店舗展開を具体的に検討できる段階といえるでしょう。

月次黒字が1年以上継続している
運転資金に余裕がある(3〜6か月分以上)
借入返済後もキャッシュが残る
店長不在でも店舗運営が回る仕組みができている
信頼できる店長候補や幹部人材が育っている

特に重要なのは、「オーナーが現場に立たなくても一定の品質で店舗運営ができる状態かどうか」です。
1店舗目がオーナー自身の経験や能力に依存している場合、新店舗に時間を割いた途端に既存店の売上やサービス品質が低下してしまうケースも少なくありません。

なぜ「黒字」だけでは不十分なのか

飲食店は利益が出ていても、キャッシュが不足しやすい業種です。
実際に決算書上では利益が出ているにもかかわらず、「銀行残高が思ったより増えていない」「資金繰りに不安がある」という経営者の方は少なくありません。
その理由として、

設備投資額が大きい
食材仕入れの支払いが先行する
人件費や家賃など固定費が毎月発生する
新店舗オープン時は売上が安定するまで時間がかかる

といった特徴があるためです。
特に2店舗目の出店時は、保証金・内装工事費・厨房設備費・求人費・広告宣伝費など、オープン前から多額の資金が必要になります。
さらに、オープン直後は想定どおりに売上が上がらないことも珍しくありません。計画上は黒字になる見込みでも、実際には数か月間赤字が続くケースもあります。

税理士としておすすめする判断基準

私が飲食店オーナーの方へお伝えしているのは、「出店資金を用意できるか」ではなく、「出店後に資金繰りへ余裕を残せるか」を基準に考えることです。
例えば、自己資金や融資によって出店資金そのものは確保できたとしても、開業後の運転資金まで十分に残せなければ、売上が計画を下回った際に一気に資金繰りが苦しくなります。
そのため、

新店舗の初期投資額
オープン後6か月程度の運転資金
既存店で想定外のトラブルが発生した場合の予備資金

まで含めてシミュレーションしておくことが重要です。
2店舗目の出店は、勢いだけで進めるのではなく、「既存店が生み出す利益とキャッシュで新店舗を支えられる状態か」という視点で判断することが、多店舗展開を成功させる大きなポイントになります。

店長候補の存在が成功率を左右する

私が多店舗展開のご相談を受ける際、資金計画と同じくらい重視しているのが「誰が新店舗を任されるのか」という点です。
実際に失敗するケースでは、資金は十分に確保できていたものの、人材不足によって既存店と新店舗の両方が不安定になってしまうことがあります。
オーナー自身が毎日現場に立っている状態では、店舗が増えれば増えるほど管理負担は大きくなります。その結果、スタッフ教育が行き届かなくなったり、サービス品質が低下したりするケースも少なくありません。
多店舗展開とは、店舗を増やすことではなく、「任せられる人材を増やすこと」と言っても過言ではありません。

1. 経営計画を数値で明確にする

出店計画をお聞きすると、「このエリアは人通りが多いから」「良い物件が出たから」という理由で検討されているケースがあります。
もちろん立地は重要ですが、経営判断は感覚ではなく数字で行う必要があります。
特に飲食店はオープン直後に想定どおりの売上が立たないことも珍しくありません。
そのため、計画を作成する際は、

想定売上
標準売上
最悪ケースの売上

の3パターンを作成し、それぞれで資金繰りが成立するかを確認することをおすすめしています。
銀行融資の審査においても、具体的な数値計画があるかどうかは重要な評価ポイントになります。

2. 業務を標準化し、マニュアルを整備する

飲食店経営では、「あの人がいるから回っている」という状態が最も危険です。
オーナーやベテランスタッフに依存した運営体制では、退職や異動が発生した瞬間に店舗運営が不安定になります。
実際、多店舗展開に成功している企業ほど、業務の標準化に力を入れています。
マニュアル化というと堅苦しく感じるかもしれませんが、目的はルールを増やすことではなく、「どの店舗でも同じ品質を提供できる状態」を作ることです。
結果として、人材育成のスピード向上や採用コスト削減にもつながります。

3. 資金計画を立てる

出店時に最も多い失敗は、「開業資金だけを準備して安心してしまうこと」です。
例えば、内装工事や厨房設備に予算を使い切ってしまい、オープン後の広告宣伝費や運転資金が不足するケースは少なくありません。
特に飲食店では、売上が立っても実際に現金として入金されるまでタイムラグが発生します。
そのため、出店計画では「オープン後に赤字が6か月続いても耐えられるか」という視点で資金計画を作成することが重要です。

設備投資の判断基準をどう考えるか

設備投資の相談でよくあるのが、「最新機器を導入したい」「厨房をグレードアップしたい」というものです。
もちろん設備の充実は大切ですが、投資したお金が将来どのように回収されるのかを考えなければなりません。
税理士としては、
「その設備によって売上が増えるのか」
「人件費が削減できるのか」
「作業効率が上がるのか」
を数値で確認することをおすすめしています。
設備投資は支出ではなく経営判断です。感覚ではなく、回収可能性を数字で検証する習慣を持つことが重要です。

補助金と融資、どちらを優先すべき?

飲食店オーナーの方から、
「補助金が採択されたら出店しようと思っています」
というご相談を受けることがあります。
しかし、補助金はあくまで補助的な制度です。
採択される保証はなく、入金まで長期間かかるケースもあります。そのため、補助金を前提とした資金計画は非常にリスクが高いと言えます。
まずは融資によって必要な資金を確保し、そのうえで活用できる補助金があれば申請するという考え方が基本です。
経営の安定を優先するなら、「補助金がなくても成立する事業計画」を作ることが重要です。

多店舗展開を成功させるための財務視点

多店舗展開が進むと、経営者が見るべき数字も増えていきます。
1店舗経営の頃は売上だけを見ていても問題なかったかもしれません。しかし店舗数が増えると、利益率やキャッシュフロー、借入返済状況まで管理しなければなりません。
私が経営者の方にお伝えしているのは、
「売上よりも資金繰りを管理してください」
ということです。
実際に倒産する企業の多くは赤字だからではなく、現金が不足することで事業継続が困難になります。
多店舗展開の成功とは、店舗数を増やすことではなく、増えた店舗を安定して維持できる状態を作ることです。そのためには、月次試算表や資金繰り表を活用しながら、定期的に経営状況を確認する習慣が欠かせません。

多店舗展開を検討している方は専門家へ相談を

飲食店の多店舗展開は、事業を大きく成長させるチャンスである一方、資金計画や人材育成、管理体制の整備など、事前に検討すべきポイントが数多くあります。
特に、出店資金の調達方法や投資回収の見込み、出店後の資金繰りについては、開業前の段階でしっかりとシミュレーションしておくことが重要です。

「2店舗目を出すべきタイミングか判断したい」
「出店資金はどのくらい準備すればよいのか知りたい」
「融資や補助金を活用した資金調達について相談したい」
このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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