Column
コラム
飲食店経営で利益を残すために欠かせない「経費管理」
飲食店を経営していると、「これは経費になるのだろうか?」「どこまで認められるのだろうか?」と悩む場面は少なくありません。
特に開業したばかりの経営者は、売上を伸ばすことに意識が向きやすく、経費の考え方については後回しになりがちです。しかし、経費を正しく理解して管理することは、節税だけでなく経営状況を正確に把握するためにも重要です。
経費として認められる支出を漏れなく計上できれば、税負担を適切に抑えられます。一方で、経費にならないものを計上してしまうと、税務調査で指摘を受けるリスクもあります。
今回は飲食店経営者が特に疑問を持ちやすい「経費になるもの・ならないもの」について詳しく解説します。
監修:中村 謙一(クロスポイント税理士法人|代表社員)
事業会社の経理職を経て税理士業界へ進み、現在はプロフェッショナル組織「REDISH」のプロジェクトにも参画。実務経験に裏打ちされた管理会計や資金繰り支援を得意とし、現場に寄り添った経営サポートを強みとする。
また、VBAからGASへの移行など、ITを活用したデータ処理の自動化による業務効率化にも注力しており、迅速かつ正確な対応を実現している。
そもそも経費とは?
経費とは、事業を行うために必要となった支出のことです。
税法上では「売上や利益を生み出すために直接必要な費用」と考えると分かりやすいでしょう。
飲食店であれば、
食材の仕入れ
アルバイトの給与
店舗家賃
水道光熱費
広告宣伝費
消耗品費
などが代表的な経費です。
飲食店経営では、毎日の営業活動のなかでさまざまな支出が発生します。しかし、すべての支出が経費として認められるわけではありません。
判断基準となるのは「事業との関連性」です。
例えば、店舗で使用する食材や清掃用品、従業員の給与などは事業運営に欠かせないため経費になります。一方で、経営者個人の生活費やプライベートな買い物は経費として認められません。
また、経費を正しく管理することは単なる節税対策だけではありません。毎月の利益状況を正確に把握し、適切な経営判断を行うためにも重要です。
特に飲食店は原価率や人件費率の管理が利益に直結するため、「何にどれだけお金を使っているか」を把握することが経営改善の第一歩となります。
飲食店で経費になる主な費用
1. 食材費・仕入れ費
飲食店にとって最も重要な経費の一つが食材費です。
野菜、肉、魚、調味料、飲料など、提供する商品の原材料となるものはすべて仕入れ費として経費になります。
また、
テイクアウト容器
紙ナプキン
割り箸
おしぼり
ストロー
デリバリー用資材
なども店舗運営に必要なため経費として計上できます。
飲食店では売上に対して食材費がどの程度かかっているかを示す「原価率」が重要な経営指標です。
一般的には原価率30%前後が一つの目安とされますが、業態によって適正値は異なります。仕入れ費用を正確に管理することで、利益率の改善やメニュー構成の見直しにもつながります。
また、仕入れた食材を廃棄するロスが多い場合は利益を圧迫する原因になります。経費を把握するだけでなく、在庫管理や発注精度の向上も重要なポイントです。
2. 人件費
従業員に支払う給与や賞与も経費になります。
対象となるものは、
正社員給与
アルバイト給与
パート給与
社会保険料の事業主負担分
福利厚生費
通勤手当
などです。
飲食店では人件費も大きな固定費の一つです。特にランチやディナーの繁忙時間帯に合わせたシフト管理が重要となります。
売上に対する人件費の割合を示す「人件費率」は、一般的に25~35%程度が目安とされています。必要以上に人員を配置すると利益を圧迫し、逆に人員不足ではサービス品質の低下につながります。
そのため、人件費は単なる経費ではなく、店舗運営を支える重要な投資として考えることが大切です。
ただし、個人事業主の場合は注意が必要です。
事業主本人に支払う給与は経費になりません。
また、家族への給与についても条件があります。
青色申告をしている場合は「青色事業専従者給与」の届出を行い、実際に店舗業務へ従事していることが前提となります。
税務調査では家族への給与について確認されることも多いため、勤務実態や勤務時間の記録を残しておくと安心です。
3. 店舗家賃
賃貸物件で営業している場合、店舗家賃は経費になります。
飲食店では固定費の中でも大きな割合を占めるため、毎月確実に計上しましょう。
家賃のほかにも、
共益費
管理費
駐車場代
倉庫使用料
など事業に必要な費用であれば経費となります。
一般的に飲食店では家賃比率を売上の10%前後に抑えることが理想とされています。
家賃が高すぎると売上が伸びても利益が残りにくくなるため、開業前の物件選定は非常に重要です。
また、保証金や敷金については支払った時点ですべて経費になるわけではなく、契約内容によって処理方法が異なるため注意が必要です。
4. 水道光熱費
飲食店は電気・ガス・水道の使用量が多い業種です。
冷蔵庫
冷凍庫
エアコン
照明
食器洗浄機
調理設備
などを稼働させるために必要な費用はすべて経費になります。
特に近年は電気代やガス代の上昇が続いており、多くの飲食店で経営課題となっています。
そのため、
LED照明への切り替え
省エネ機器の導入
空調管理の最適化
などを行い、光熱費の削減に取り組む店舗も増えています。
毎月の使用料金を確認し、前年同月比などで比較することで無駄なコストを発見しやすくなります。
5. 広告宣伝費
集客のためにかかる費用も経費になります。
例えば、
チラシ作成
ポスティング費用
SNS広告
Web広告
ホームページ制作費
グルメサイト掲載料
看板制作費
ショップカード作成費
などが該当します。
近年ではInstagramやGoogleマップなどを活用した集客が主流となり、広告宣伝の方法も多様化しています。
開業直後は認知度向上のために広告費が多くなる傾向がありますが、費用対効果を確認しながら運用することが重要です。
「どの広告から来店につながったのか」を分析することで、無駄な広告費を削減しながら効率的な集客が可能になります。
6. 消耗品費
店舗運営で使用する備品も経費です。
例えば、
文房具
レジロール紙
洗剤
清掃用品
電球
ゴミ袋
ハンドソープ
アルコール消毒液
などがあります。
これらは一つひとつの金額は小さいものの、年間で見ると意外に大きな支出になることがあります。
特に飲食店では衛生管理が重要であるため、清掃用品や衛生用品への支出は欠かせません。
また、店舗備品を購入した際は、金額によって「消耗品費」として処理するか、「固定資産」として計上するかが変わる場合があります。
経費処理の方法によって税務上の扱いも異なるため、高額な設備や備品を購入する際は税理士へ相談すると安心です。
日常的な支出だからこそ、領収書やレシートの保管を徹底し、毎月整理する習慣をつけることが重要です。
経費にならない代表例
経費の考え方で最も重要なのは、「事業との関連性があるかどうか」です。
飲食店経営ではさまざまな支出が発生しますが、事業に必要な支出でなければ経費として認められません。経費になるものばかりに目が向きがちですが、「経費にならないもの」を理解しておくことも重要です。
誤って経費計上してしまうと、税務調査で修正申告や追徴課税の対象となる可能性があります。
ここでは、飲食店経営者が間違えやすい代表的な例を紹介します。
自分自身の生活費
個人事業主の場合、
私的な買い物
衣服代
家庭の食費
プライベート旅行
個人の美容代
家族の日用品購入
などは経費にできません。
飲食店経営者の場合、「仕事でも使うから」と考えて経費にしたくなるケースもありますが、基本的に生活費は事業とは切り離して考える必要があります。
例えばスーツや靴なども、一般的な衣服であればプライベートでも使用できるため、原則として経費にはなりません。
また、家族旅行を「視察」として処理するケースも見受けられますが、実際に事業との関連性を説明できなければ経費として認められない可能性があります。
経費管理で大切なのは、「自分が必要だと思うか」ではなく、「第三者に事業との関連性を説明できるか」という視点です。
事業用口座や事業用クレジットカードを活用し、個人支出と事業支出を明確に分けることをおすすめします。
家族や友人との食事代
事業に関係のない外食は経費になりません。
例えば、
家族との外食
友人との飲み会
個人的な会食
プライベートな接待
記念日やお祝いの食事
などは経費として認められません。
飲食店経営者は外食の機会が多いため、「勉強のため」「市場調査のため」という理由で経費処理したくなることがあります。
確かに競合店の調査やメニュー研究など事業目的が明確な場合は認められるケースもありますが、家族や友人との食事を単純に「視察」として処理することは難しいでしょう。
税務調査では飲食費が重点的に確認されることも多いため、
誰と行ったのか
何の目的だったのか
どのような事業効果があったのか
を説明できることが重要になります。
領収書だけでなく、手帳やスケジュールアプリに打ち合わせ内容を残しておくと、後から説明しやすくなります。
罰金や反則金
交通違反の反則金や延滞税などは経費にできません。
事業中に発生したものであっても税法上は経費として認められていません。
具体的には、
駐車違反の反則金
スピード違反の反則金
延滞税
加算税
行政処分による罰金
などが該当します。
例えば、仕入れの移動中に発生した交通違反であっても、反則金は経費にはなりません。
「事業のために発生した支出だから経費になる」という考え方ではなく、税法上認められているかどうかで判断されるため注意が必要です。
自分の食事代は経費になる?
飲食店経営者から非常によくある質問です。
結論からいうと、自分一人の食事代は原則として経費になりません。
なぜなら生活費と判断されるためです。
例えば、
自分だけの昼食
家族との夕食
個人的な外食
休日の食事
などは経費にできません。
飲食店オーナーのなかには、「食べ歩きも仕事の一環だから経費になるのでは?」と考える方もいます。
しかし、税務上は単なる飲食と事業目的の調査は明確に区別されます。
仮に競合店の調査やメニュー研究を目的としていた場合でも、
調査対象店舗
調査内容
今後の活用方法
などを記録しておくことが望ましいでしょう。
一方で、次のようなケースは経費になる可能性があります。
取引先との打ち合わせ
取引先との商談や打ち合わせを兼ねた食事であれば、交際費や会議費として処理できます。
例えば、
食材業者との商談
不動産会社との契約相談
デザイン会社との打ち合わせ
などが該当します。
事業目的が明確であれば経費として認められる可能性があります。
従業員とのミーティング
業務改善や店舗運営に関する会議を伴う食事であれば会議費として計上できる場合があります。
例えば、
新メニューの試食会
売上改善ミーティング
スタッフ研修後の食事会
などです。
単なる飲み会との区別が重要になります。
従業員向けのまかない
従業員全体を対象としたまかない制度は福利厚生費として計上できるケースがあります。
飲食店では一般的な制度ですが、特定の従業員だけを対象にした場合などは取り扱いが異なることもあります。
制度として運用し、ルールを明確にしておくことが大切です。
重要なのは「誰と」「何の目的で」行ったかを説明できることです。
税務調査では金額よりも、その支出が事業とどのように関係しているかが確認されます。
打ち合わせの飲食代は経費にできる?
答えは「事業に関係していれば可能」です。
飲食店経営では、店舗外で打ち合わせを行う機会も少なくありません。
例えば、
取引先との商談
業者との打ち合わせ
経営相談
メニュー開発に関する会議
新店舗計画の打ち合わせ
などは経費として認められる可能性があります。
ただし、「打ち合わせだった」と口頭で説明するだけでは十分ではありません。
税務署から確認された際に説明できるよう、
日付
参加者
店舗名
目的
打ち合わせ内容
を記録しておくことが大切です。
特に高額な飲食代が続く場合は、税務調査で確認される可能性が高くなります。
領収書の裏に参加者や目的をメモしておくだけでも、後々大きな助けになります。
レシートを紛失したらどうなる?
経営者にとって意外と多いのがレシート紛失です。
特に飲食店では仕入れや備品購入など日々の支払い件数が多く、気づいたらレシートが見当たらないというケースも珍しくありません。
しかし、レシートがないからといって即座に経費にならなくなるわけではありません。
まずは支払先に再発行できるか確認しましょう。
再発行が難しい場合は、
クレジットカード明細
銀行振込記録
電子決済履歴
出金伝票
などで支出を証明できる場合があります。
出金伝票には、
支払日
支払先
金額
内容
支払目的
をできるだけ詳しく記載しましょう。
ただし、出金伝票はあくまで補完資料です。
頻繁にレシートを紛失すると、税務署から「本当に支出したのか」を疑われる可能性もあります。
近年はクラウド会計ソフトやスマートフォンアプリを利用して、レシートを撮影するだけで電子保存できる仕組みも普及しています。
レシートを受け取ったらその場で撮影する習慣をつけることで、紛失リスクを大幅に減らすことができます。
日々の小さな管理の積み重ねが、正確な経理処理と税務リスクの軽減につながります。
自宅兼店舗の場合の家賃はどうなる?
飲食店の開業準備中や開業直後は、コストを抑えるために自宅の一部を事務所として利用するケースも少なくありません。
例えば、
自宅で経理業務を行う
メニュー開発を行う
仕入れ管理や発注業務を行う
SNS運用や販促活動を行う
開業準備の打ち合わせを行う
といった場合です。
このように事業で利用しているスペースについては、「家事按分(かじあんぶん)」を行うことで一部を経費として計上できます。
家事按分とは、事業とプライベートの両方で使用している費用を、事業利用分と私的利用分に分けて計上する方法です。
例えば、
自宅面積100㎡
事業利用部分30㎡
であれば30%を経費にできます。
月額家賃10万円の場合、
10万円 × 30% = 3万円
が経費になります。
また、
電気代
ガス代
インターネット代
水道代
火災保険料
なども合理的な基準で按分できる場合があります。
例えば、自宅の一室を事務所として使用している場合は面積割合で計算し、パソコンやインターネットの利用については使用時間を基準に算出するケースもあります。
重要なのは、「なぜその割合なのか」を説明できることです。
税務調査では按分割合の根拠が確認される場合があります。
例えば、
間取り図
使用スペースの写真
使用時間の記録
などを残しておくと説明しやすくなります。
「なんとなく半分くらい使っているから50%」といった曖昧な計算は認められにくいため注意が必要です。
特に飲食店オーナーは店舗営業に目が向きがちですが、事務作業や販促活動も事業運営の重要な業務です。適切な家事按分を行うことで、本来認められる経費を漏れなく計上できるようになります。
経費管理で失敗しないためのポイント
経費は正しく計上することで節税につながりますが、管理方法を誤ると税務上のリスクが高まります。
ここでは、飲食店経営者が押さえておきたい経費管理のポイントを紹介します。
事業用口座を分ける
個人用と事業用の支出が混在すると管理が難しくになります。
例えば、
個人の買い物
店舗の仕入れ
光熱費の支払い
が同じ口座から引き落とされると、後から経費を集計する際に手間がかかります。
そのため、開業時から事業専用の銀行口座やクレジットカードを準備しておくことをおすすめします。
会計処理が楽になるだけでなく、資金繰りの把握もしやすくなります。
領収書を必ず保管する
経費として計上した支出は、証拠となる書類を保管しておく必要があります。
代表的なものは、
領収書
レシート
請求書
クレジットカード利用明細
などです。
青色申告の場合は原則として7年間の保存義務があります。
近年は電子帳簿保存法への対応も進み、スマートフォンで撮影したデータを保存する方法も一般的になっています。
店舗運営が忙しくなると領収書が散らかりやすいため、「受け取ったその日に保管する」ルールを作ると管理しやすくなります。
毎月記帳する
経理処理を後回しにすることは、飲食店経営でよくある失敗の一つです。
確定申告前に1年分をまとめて処理しようとすると、
レシートが見つからない
支出内容を忘れてしまう
計上漏れが発生する
といった問題が起こりやすくなります。
理想的なのは毎月経理処理を行うことです。
月次で売上や経費を確認することで、
利益が出ているか
人件費率は適正か
原価率は上がっていないか
など経営状況をリアルタイムで把握できます。
飲食店経営では、「利益が出ていると思っていたのに実際は赤字だった」というケースも珍しくありません。
定期的な記帳は経営改善の第一歩です。
会計ソフトを活用する
近年はクラウド会計ソフトの普及により、経理業務の負担が大幅に軽減されています。
銀行口座やクレジットカードと連携することで、
取引の自動取込み
レシートの自動読取り
帳簿作成の効率化
などが可能になります。
特に開業初期は本業である店舗運営に集中するためにも、経理の自動化を積極的に活用するとよいでしょう。
税理士へ相談する
経費の判断は意外と複雑です。
例えば、
接待交際費と会議費の違い
家事按分の割合
設備投資の処理方法
家族への給与
などは判断に迷うことも少なくありません。
誤った処理を続けると、後から修正申告が必要になる可能性もあります。
税理士へ相談することで、
適切な節税対策
資金繰り改善
補助金や助成金活用
税務リスクの回避
などのアドバイスを受けることができます。
経費管理は単なる経理業務ではなく、利益を守るための重要な経営管理の一つと考えることが大切です。
まとめ
飲食店経営において経費の理解は、利益を守り安定した店舗運営を行うための重要な知識です。
食材費や人件費、家賃、水道光熱費、広告宣伝費など、事業運営に必要な支出は適切に経費として計上できます。一方で、自分自身の生活費や家族との私的な食事代、反則金などは経費として認められません。
また、打ち合わせの飲食代や自宅兼事務所の家賃などは、事業との関連性や利用割合を明確にすることで経費として認められる可能性があります。
重要なのは、「経費にしたいかどうか」ではなく、「事業との関連性を説明できるかどうか」です。
領収書やレシートを保管し、日頃から正確な記帳を行うことで、税務リスクを抑えながら適切な節税につなげることができます。
飲食店経営では売上を増やすことだけでなく、支出を正しく管理することも利益向上につながります。
経費のルールを正しく理解し、必要に応じて税理士などの専門家へ相談しながら、健全な店舗経営を目指しましょう。
☎️ お急ぎの方は、お電話でもご相談いただけます!
受付時間:平日 9:00〜20:00
※時間外は留守番電話にメッセージをお入れください。折り返しご連絡いたします。
※田邊が出られない場合は、丹治または新藤がご対応いたします。






