Column
コラム
はじめに:おすすめは“飾り”ではなく“売上装置”
飲食店における「おすすめ」は、単なる補足情報や装飾ではありません。
それは、お客様の視線をコントロールし、意思決定を後押しし、最終的に売上を左右する“設計要素”です。
現場では「人気メニューをおすすめに載せている」「とりあえず店長の推しを書いている」というケースも多いですが、それだけでは十分とは言えません。なぜなら、お客様は必ずしも論理的にメニューを比較して選んでいるわけではないからです。
むしろ実態は逆で、「なんとなく目に入った」「選びやすそうだった」「失敗しなさそうだった」という感覚的な判断が大半を占めています。
つまり、「おすすめ表示」は“選ばれる理由をデザインする装置”であり、その設計次第で注文数は大きく変わるのです。
なぜおすすめ表示で注文数が変わるのか
■ 人は“考えずに選びたい”
人は多くの選択肢を前にすると、無意識に判断を簡略化します。これを心理学では「ヒューリスティック(経験則)」と呼びます。飲食店に置き換えると、
- メニューが多くて迷う
- 時間をかけたくない
- 外したくない
こうした状況の中で、「おすすめ」「人気No.1」「初めての方に」といったラベルがあると、それを“正解”として選びやすくなります。つまり、おすすめ表示は“選択の負担を減らすナビゲーション”として機能しているのです。
■ 視線はコントロールできる
人の視線はランダムではありません。メニューを見るときの視線は、ある程度パターン化されています。
左上 → 中央 → 右上
写真 → 大きな文字 → 強調された要素
[Image of restaurant menu eye tracking showing the Z-pattern gaze path from top-left to bottom-right]
この流れに沿って「おすすめ」を配置するだけで、自然と目に入りやすくなります。逆に、どれだけ良い商品でも“見られていなければ存在しないのと同じ”です。
■ 「理由」があると人は動く
単に「おすすめ」と書かれているだけでは弱いですが、そこに理由が加わると一気に説得力が増します。
例:
- 「リピート率No.1」
- 「3日間煮込んだ看板メニュー」
- 「初来店の方の満足度が高い一品」
人は“納得できる理由”があると安心して選べるため、注文率が上がります。
おすすめ表示を変えると起きる3つの変化
① 注文の偏りが変わる
おすすめの位置や内容を変えると、売れる商品が変わります。特に、これまで目立っていなかった商品が一気に動き出すケースは多くあります。これは裏を返すと、「売れていない=魅力がない」ではなく、「見せ方が弱い」可能性があるということです。
② 客単価が変わる
おすすめに載せる商品を戦略的に選ぶことで、客単価はコントロールできます。少し高めの商品をおすすめに入れる、セット提案を組み込む、追加注文を促す導線をつくるなどの工夫が有効です。ただし注意点として、“押し売り感”が出ると逆効果です。
③ 回転率が変わる
提供時間の短いメニューをおすすめに入れることで、ピークタイムの回転率が改善します。仕込み済みで即提供できる商品やオペレーション負荷が低い商品を意図的におすすめ化することで、売上効率も向上します。
よくある失敗パターン
■ おすすめが多すぎる 「全部おすすめ」は、結果的に何もおすすめしていないのと同じです。選択肢が多すぎると、人は逆に選べなくなります。
■ 理由がない 「おすすめ」とだけ書かれていても、お客様には判断材料がありません。“なぜおすすめなのか”を言語化することが不可欠です。
■ ビジュアルが弱い 写真は暗い・小さい・魅力が伝わらない場合、注文率は大きく下がります。視覚的要素は極めて重要です。
■ 他メニューに埋もれている レイアウトや強調が弱いと、おすすめが他のメニューに埋もれてしまいます。強弱の設計が重要です。
注文数を伸ばすおすすめ設計の具体策
① おすすめは3〜5品に絞る 最も重要なポイントです。選択肢を絞ることで、意思決定がスムーズになります。
② 「誰に向けたおすすめか」を明確にする 初来店の方向け、常連向け、女性に人気、ガッツリ食べたい方向けなど、ターゲットを明確にします。
③ コピー(言葉)を磨く 「唐揚げ」→「外はカリッと中はジューシー、特製ダレ仕込みの唐揚げ」のように、価値を伝える言葉に変えましょう。
④ 写真は“シズル感”重視 湯気・照り・質感など、「美味しそう」と感じる要素を最大化します。
⑤ 導線を設計する(クロスセル) 「この後におすすめ:さっぱりレモンサワー」のように、次の注文へ繋げ、客単価を自然に上げます。
数値インパクトと現場での変化
実務上の目安として、おすすめ表示を改善すると以下のような変化が期待できます。
- 対象商品の注文率:1.2〜2倍
- 客単価:5〜15%向上
- 売りたい商品の構成比:大きく改善
現場レベルでは、今まで月に数件しか出なかったメニューが毎日注文されるようになったり、スタッフの提案成功率が上がるといった変化が起きます。特に「ポテンシャルはあるが、認知されていない商品」が一気に伸びる現象は、機会損失を回収する大きな成果となります。
小さく試し、検証する
重要なのは、一度にすべて変えないことです。仮説 → 実行 → 検証 → 改善のサイクルを回しましょう。
- 文言を変える(例:「人気」→「初来店の方におすすめ」)
- 配置を変える(上部・中央・単独枠など)
- 写真を差し替える(明るさ・構図・シズル感)
- 1品だけ入れ替える(ABテスト的に検証)
おすすめ表示は一度作って終わりではなく、時間帯別、客層別、季節や天候によって“常に更新されるべき売上装置”です。データで検証でき、再現性を持って改善できるマーケティング施策として磨き続けましょう。
まとめ:売れるかどうかは“見見せ方”で決まる
・人はおすすめに従って選ぶ
・視線・理由・ビジュアルで注文率は変わる
・おすすめは戦略的に設計すべき
もし今、思ったように注文数が伸びていないのであれば、それは料理ではなく、“見せ方”に原因があるかもしれません。おすすめ表示を変えることは、最も低コストで始められる売上改善施策の一つです。
ぜひ一度、自店舗のメニューを“お客様の目線”で見直してみてください。
その小さな変更が、大きな売上の変化につながるはずです。
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