Column
コラム
― 成功する店と潰れる店の決定的な違い ―
飲食店経営は華やかに見える一方で、実際には非常にシビアな世界です。開業から3年以内に約7割が閉店すると言われる中、「やるべきこと」以上に重要なのが「やってはいけないこと」を知ることです。
本コラムでは、現場でよくある失敗パターンをもとに、飲食店経営で絶対に避けるべきポイントを具体的に解説します。
1. コンセプトが曖昧なまま開業する
最も多い失敗がこれです。
- 誰に向けた店なのか不明
- 何がウリなのか分からない
- 競合との差別化ができていない
結果として「なんとなく良さそうだけど選ばれない店」になります。
飲食店は“選ばれて初めて成立するビジネス”です。ターゲット・価格帯・利用シーンを明確にしないままの開業は、ほぼ確実に失敗します。
さらに重要なのは、「コンセプトは言語化だけでなく、すべての意思決定に反映されているか」という点です。例えば、
- メニュー構成はターゲットに合っているか
- 内装やBGMは利用シーンと一致しているか
- スタッフの接客トーンはコンセプトとズレていないか
これらがバラバラだと、顧客は違和感を感じ、再来店にはつながりません。また、よくある失敗として「ターゲットを広げすぎる」というケースがあります。「誰でも来てほしい」は一見正しく見えますが、実際には“誰にも刺さらない店”になります。重要なのは、“誰かに強く刺さる店”を作ることです。その結果として、口コミやリピートが生まれ、徐々に客層が広がっていきます。
2. 原価・利益構造を把握していない
「美味しいものを出せば売れる」は幻想です。重要なのは以下のバランスです。
- 原価率(30%前後が目安)
- 人件費(売上の25〜30%以内)
- 家賃(10%前後)
これを無視すると、売れているのに利益が出ない状態になります。特にありがちなのが、「こだわりすぎて原価が上がりすぎる」ケースです。“利益が出て初めて良い料理”という視点が必要です。
さらに一歩踏み込むと、「商品ごとの利益構造」を把握していない店も多く見られます。
- 利益が出る看板商品はどれか
- 原価は低いが満足度が高いメニューは何か
- 回転率を上げるためのメニューは何か
これらを設計できていないと、単に“売上が立っているだけの店”になります。また、値付けの失敗もよくある落とし穴です。周辺相場に合わせすぎて利益が出ない、安さで勝負して疲弊する、値上げのタイミングを逃すなど。価格は「原価」ではなく「価値」で決めるべきです。そのためには、コンセプトと一貫した価格設計が必要になります。数字は後から見るものではなく、“最初に設計するもの”です。
3. 立地を軽視する
飲食店において立地は“ほぼ売上”です。
- 人通りが少ない
- ターゲットとズレている
- 競合が強すぎる
こうした場所では、どんなに良い店でも集客に苦戦します。「家賃が安いから」という理由だけで決めるのは危険です。むしろ“売上が立つ場所に投資する”という考え方が重要です。加えて見落とされがちなのが、「動線」と「視認性」です。例えば、
- 駅からの導線上にあるか
- 看板が自然に目に入るか
- 入店のハードルが高くないか
これらによって“入店率”は大きく変わります。また、同じエリアでも「時間帯による人の質の違い」も重要です。オフィス街は平日ランチに強く夜・休日は弱い、住宅街はその逆、繁華街は競争激化など、自分の業態がエリア特性と合っているか見極める必要があります。さらに、最近では配送範囲も含めて立地を考える視点も求められます。立地は後から変えられない要素だからこそ、戦略的に選ぶ必要があります。
4. メニュー数を増やしすぎる
一見お客様思いに見える行為ですが、実は逆効果です。
- 仕込みが増える
- 食材ロスが増える
- オペレーションが複雑になる
- 看板商品がぼやける
結果として、効率も利益も落ちます。売れている店ほどメニューはシンプルです。「これを食べに来る店」という軸を作ることが重要です。さらに重要なのは、「メニューは“増やす”のではなく“削る”ことで磨かれる」という視点です。メニューが多いと、お客様が選びきれず注文が分散し、品質低下を招きます。
特に個人店では、利益が出るもの、注文率が高いもの、ブランドを象徴するものに絞り込むことが重要です。また、一番売りたい商品を目立たせ、セット化や限定メニューでコントロールするなど、メニューは「売上を作る設計図」であるべきです。増やすことよりも、“意図して減らす勇気”が成果を分けます。
5. オペレーションを軽視する
現場の回しやすさを無視すると、すぐに崩壊します。
- 提供が遅い
- ミスが多い
- スタッフが疲弊する
これはすべて売上とリピート率に直結します。飲食店は“現場ビジネス”です。理想のメニューよりも、「回る設計」が優先されるべきです。ここで重要なのは、「ピーク時でも崩れない設計になっているか」です。通常時は回るが、繁忙時間になると提供順がバラバラになり、連携が崩れる店は評価を下げます。
そのためには、調理工程をシンプルにし、仕込みと提供を分離し、導線を最適化する設計が不可欠です。また、オペレーションは「属人化させない」ことも重要です。特定のスタッフしか回せない状態は教育コストを上げ、品質を不安定にします。理想は「誰が入っても一定のクオリティで回る状態」です。仕組み化は安定した売上を作る土台になります。
6. 人材に投資しない
人件費を削りすぎると、確実にサービス品質が落ちます。
- 接客が雑になる
- 雰囲気が悪くなる
- クレームが増える
飲食店は“人が価値を作るビジネス”です。教育・評価・働きやすさへの投資を怠ると、良いスタッフは辞め、悪循環に入ります。さらに見落とされがちなのが、「人材=コストではなく投資」という視点です。接客が良ければリピート率が上がり、提案力があれば客単価が上がります。人への投資はそのまま売上に直結します。
また、離職率の高さは採用や教育コストの増大という大きな損失です。明確な評価基準、成長の実感、働きやすいシフト設計が必要です。特に小規模店舗ほど、「人」がそのまま店の評価になります。料理の味以上に、“誰が提供するか”が印象を左右します。人材を軽視する店は長続きしません。逆に、人に投資できる店は、時間とともに強くなっていきます。
7. SNS・集客を後回しにする
「オープンしたら自然に人が来る」は昔の話です。今は、Instagram、Googleマップ、口コミが集客の中心です。開業前から情報発信を始めるのが当たり前の時代です。これをやらないと、存在すら知られません。
さらに、「ただ発信するだけでは意味がない」という点も重要です。よくある失敗は、とりあえず写真を投稿しているだけで、コンセプトとズレていたり更新頻度がバラバラな状態です。ターゲットが反応する世界観を統一し、看板メニューを繰り返し露出し、来店動機につながる情報を発信する必要があります。Googleマップ対策(写真、営業時間、丁寧な返信)も、選ばれるかどうかを大きく左右します。SNSは“売上を作る導線”です。戦略的な取り組みが必要です。
8. 数字を見ない・感覚で経営する
飲食店経営でありがちな失敗が“どんぶり勘定”です。最低限見るべき指標は以下です。
- 日次売上
- 客単価
- 原価率
- 人件費率
- 来店数
「なんとなく忙しい」ではなく、“数字で判断する癖”をつけることが重要です。さらに数字は“見る”だけでなく“使う”こと。客単価が低ければセットを強化し、来店数が減れば施策を見直し、原価率が上がれば仕入れを調整します。数字は改善のヒントそのものです。時間帯別の分析まで把握できると、より精度の高い意思決定が可能になります。感覚と数字を掛け合わせることで、初めて“再現性のある経営”になります。
9. 改善しない・変化を嫌う
飲食業界はトレンド変化が激しい業界です。メニュー、価格、導線などの改善をしない店は、確実に時代に置いていかれます。成功している店ほど、小さな改善を繰り返しています。ここで重要なのは、「完璧を求めすぎて動かないこと」が最大のリスクだという点です。
一度決めたメニューを変えられない、常連を気にして価格改定ができないといった放置は危険です。小さく試し、数字で検証し、良ければ残し、ダメなら戻すというサイクルを回しましょう。また、改善は入店しやすさから会計のスムーズさまで「顧客体験全体」で考える必要があります。変化し続ける店だけが、長く選ばれ続けます。
10. 「自己満足」で店を作る
最も危険なのがこれです。自分が好きな料理だけ出す、内装にこだわりすぎる、お客様目線を無視する。飲食店は“お客様の満足で成立するビジネス”です。「自分がやりたい」ではなく、「お客様が求めているか?」がすべての判断基準です。
深刻なのは、「こだわり」と「独りよがり」を混同してしまうことです。こだわりは本来、お客様の満足度を高めるためのものであるべきです。説明しないと伝わらない価値や、価格に見合わない自己満足、不便なルールは支持を失います。“プロの視点”と“お客様の視点”のバランスを保ち、常に「誰のための店か」を問い続けられるかどうかが分かれ道です。
まとめ:成功のカギは“当たり前を徹底すること”
ここまで紹介した内容は、どれも特別なことではありません。しかし実際には、多くの店舗がこれらを軽視して失敗しています。飲食店経営で重要なのは、
・コンセプトを明確にする
・数字を管理する
・現場を最適化する
・お客様目線を持つ
という“当たり前”を徹底することです。派手な戦略よりも、地道な積み重ねが結果を左右します。そしてもう一つ重要なのは、「失敗は防げるものが多い」という事実です。今回挙げた“やってはいけないこと”の多くは、事前に知っていれば回避できます。
飲食店経営はセンスや運だけで成り立つものではありません。
再現性のある基本をどれだけ徹底できるか、その差がそのまま結果の差になります。一度立ち止まって「自分の店は当たり前をやり切れているか?」を見直してみてください。その積み重ねこそが、長く愛される店をつくる最短ルートです。
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