Column
コラム
飲食店経営では、「毎日忙しく働いているのに思ったほど利益が残らない」という悩みを抱えるオーナーが少なくありません。
ランチやディナーの営業に追われ、仕込みやスタッフ管理をこなしながら、閉店後は発注や事務作業に追われる――。そんな日々を送っているにもかかわらず、通帳の残高はなかなか増えないというケースも珍しくありません。
私は調理師専門学校卒業後、飲食店の現場を経験し、その後、公認会計士・税理士として数多くの飲食店経営をサポートしてきました。
その中で感じるのは、利益が出ない店舗には共通する特徴があるということです。
今回は、飲食店オーナーから特に相談の多い「利益が残らない原因」と「現場と経営を両立するための考え方」について解説します。
監修:中村悦也(クロスポイント税理士法人)
調理師専門学校を卒業後、飲食店での現場経験を積み、その後公認会計士として大手監査法人にて飲食業向け会計監査に従事。さらに税理士事務所で中小企業支援の実績を重ねるなど、「飲食業界に強い」専門家として活動しています。
現場を知る会計・税務のプロだからこそ、飲食店オーナーが抱えるリアルな悩みや課題に寄り添い、資金繰り・税務・経営管理まで幅広くサポート。飲食店開業を目指す方々の夢の実現を力強く支援しています。
忙しいのに利益が出ない店に共通する3つの特徴
「毎日忙しく働いているのに利益が残らない」
「ランチもディナーもお客様は入っているのに、なぜか資金繰りが楽にならない」
このような悩みを抱える飲食店オーナーは少なくありません。
実際、飲食店経営では「忙しい店=儲かっている店」とは限りません。
むしろ、現場が忙しすぎることで数字の確認や改善活動に手が回らず、利益を取りこぼしているケースも多く見られます。
私が飲食店の経営支援を行う中でも、利益が出にくい店舗にはいくつかの共通点があります。
①低単価・薄利多売になっている
客数は多いものの、客単価が低く、利益率の低い営業になっているケースです。
特に価格競争に巻き込まれている店舗では、
客数は多い
スタッフも多く必要
仕込み量も増える
食材の使用量も増える
にもかかわらず、利益が十分に確保できていないことがあります。
例えば、100円の利益しか残らない商品を大量に販売しても、現場の負担ばかりが増えて利益は思うように伸びません。
また、値上げに踏み切れず長年同じ価格で販売している店舗も少なくありません。
近年は食材費や人件費、光熱費が上昇しているため、以前と同じ価格設定では利益率が大きく低下している可能性があります。
忙しさと利益は必ずしも比例しません。
重要なのは「どれだけ売ったか」ではなく、「どれだけ利益が残ったか」です。
売上だけを見るのではなく、商品ごとの利益率や客単価も定期的に確認することが重要です。
②メニュー数が多すぎる
飲食店では「お客様に喜んでもらいたい」という思いからメニュー数が増えていくことがあります。
しかし、
仕入れ品目が増える
在庫管理が複雑になる
廃棄ロスが増える
仕込み時間が長くなる
スタッフ教育に時間がかかる
といった問題が発生します。
結果として食材原価だけでなく、人件費まで膨んでしまうケースが少なくありません。
また、メニュー数が多いほど発注ミスや調理ミスも発生しやすくなります。
精度個人店では、「昔からあるから」という理由だけで注文数の少ないメニューを残していることがあります。
しかし、そのメニューのためだけに仕入れている食材や仕込み時間が利益を圧迫している可能性もあります。
利益率の高い店舗ほど、売れ筋メニューに集中し、オペレーションをシンプルにしています。
定期的にABC分析などを行い、
よく売れる商品
利益率が高い商品
注文の少ない商品
を把握することも大切です。
③固定費を把握していない
意外に多いのがこのケースです。
家賃やリース料、通信費、システム利用料などの固定費を正確に把握できていないため、
「今月いくら利益が必要なのか」
が分からない状態になっています。
飲食店では日々の売上や仕入れに意識が向きやすい一方で、固定費は毎月自動的に支払われるため見落とされがちです。
しかし、固定費は売上の増減に関係なく発生するため、利益を圧迫する大きな要因になります。
例えば、
家賃
リース料
通信費
POSレジ利用料
クラウドサービス利用料
借入金返済
などを合計すると、想像以上の金額になることもあります。
利益を残しているオーナーほど、
「毎月の固定費はいくらか」
「損益分岐点売上はいくらか」
を把握しています。
売上だけではなく、毎月必ず発生するコストを把握することが経営の第一歩です。
忙しい店舗ほど数字を見る時間が取れなくなりがちですが、利益改善のためには現場だけでなく経営数字にも目を向けることが欠かせません。忙しさの裏側にある本当の課題を把握することが、利益体質の店舗づくりにつながります。
帳簿付けを後回しにしないための仕組みづくり
飲食店オーナーからよく聞くのが、
「レシートがたまってしまう」
「気付けば数か月分まとめて入力している」
「確定申告前に慌てて帳簿を付けている」
という悩みです。
飲食店経営では、営業・仕込み・発注・スタッフ管理など日々の業務に追われるため、経理作業が後回しになりやすい傾向があります。
しかし、数字を確認できなければ問題の発見も遅れてしまいます。
例えば、
原価率が上昇している
人件費が増加している
利益率が下がっている
資金繰りが悪化している
といった異変も、帳簿が整理されていなければ気付くことができません。
経営者にとって帳簿付けは税金のためだけではなく、「お店の健康診断」のような役割を持っています。
利益が出ている店舗ほど、数字をタイムリーに把握する仕組みを作っています。
POSレジと会計ソフトを連携する
現在はPOSレジとクラウド会計ソフトを連携できるサービスが増えています。
売上データを自動で取り込めるため、手入力の負担を大幅に減らせます。
また、
銀行口座
クレジットカード
キャッシュレス決済
なども連携することで、経理業務をさらに効率化できます。
経理業務はできるだけ自動化し、「入力作業の時間」ではなく「経営判断のために数字を見る時間」を増やすことが重要です。
特に開業間もない店舗ほど、早い段階で仕組み化しておくことで将来的な負担を大きく減らすことができます。
毎日のルーティンに組み込む
手作業が残る場合でも、
開店前の15分
閉店後の10分
など、毎日決まった時間を経理作業に充てることをおすすめします。
1か月分をまとめて処理するより、毎日少しずつ確認した方が圧倒的に負担は軽くなります。
また、毎日数字を見る習慣が付くことで、
昨日より売上が落ちている
人件費が高くなっている
仕入れが増えている
といった変化にも早く気付けるようになります。
経理を「事務作業」と考えるのではなく、「経営状況を確認する時間」と捉えることが大切です。
完璧を目指さず、まずは継続する
帳簿付けが苦手な方ほど、
「時間を取ってまとめてやろう」
「きちんと整理してから入力しよう」
と考えがちです。
しかし、その結果として作業がどんどん先送りになってしまうケースも少なくありません。
まずは、
レシートをその日のうちに保管する
売上を毎日確認する
口座残高を定期的にチェックする
といった小さな習慣から始めることが重要です。
経理は一度ため込むと大きな負担になりますが、毎日少しずつ進めればそれほど難しい作業ではありません。
数字を見る習慣が利益改善につながる
私は飲食店の現場と会計・税務の両方に携わってきましたが、利益を安定して残しているオーナーほど、特別な会計知識があるわけではありません。
共通しているのは、「数字を見る習慣」があることです。
帳簿付けを後回しにしない仕組みを作ることで、
利益の変化に早く気付ける
無駄なコストを発見できる
資金繰りを把握できる
ようになります。
経理は売上を直接増やす仕事ではありませんが、利益を守るためには欠かせない重要な業務です。忙しいからこそ仕組み化を進め、数字を経営に活かせる環境を整えいきましょう。
現場と経営を両立するために必要な考え方
多くの飲食店オーナーは、経営者であると同時に現場のスタッフとしても働いています。
特に開業直後や小規模店舗では、
調理
接客
発注
シフト作成
経理
まで、ほぼすべてを一人で担っているケースも少なくありません。
しかし、店舗が成長するほど「プレイヤー」としての役割だけでなく、「経営者」としての役割も求められるようになります。
現場の仕事に追われ続ける状態では、売上はあっても利益が残らない店舗になりやすく、気付いた時には資金繰りが厳しくなっていることもあります。
店舗を長く安定して運営するためには、「現場で働く時間」と「経営を考える時間」の両方を確保することが重要です。
オーナーしかできない仕事に集中する
店舗運営を見直す際にまず考えたいのが、「本当に自分がやる必要がある仕事なのか」という視点です。
例えば、
発注業務
新人教育
清掃チェック
簡単な仕込み
開店準備
などは、マニュアル化やルール整備によってスタッフへ任せられる場合があります。
一方で、
数字の分析
メニュー改善
集客施策の検討
資金繰りの確認
出店や設備投資の判断
といった業務は、オーナー自身が担うべき重要な仕事です。
特に利益改善につながる施策は、現場に立っているだけでは生まれません。
「売上が伸びない原因は何か」
「利益率が高い商品はどれか」
「人件費は適正なのか」
といった経営判断は、オーナーにしかできない役割です。
忙しい店舗ほど、あえて現場から少し離れて経営を見る時間を作ることが重要になります。
「自分がいないと回らない」を減らす
利益が安定している店舗には共通点があります。
それは、「オーナーが休んでも一定レベルで店舗が回る仕組み」があることです。
反対に、
「自分がいないと発注できない」
「自分がいないと営業できない」
という状態では、店舗の成長にも限界があります。
マニュアル整備や業務の標準化は手間がかかりますが、長期的にはオーナーの負担軽減と利益改善につながります。
経営者の仕事は、自分が頑張り続けることではなく、店舗が継続的に利益を生み出せる仕組みを作ることです。
経営時間を先に確保する
「時間ができたら数字を見る」
ではなく、
「毎週○曜日の14時〜15時は経営会議の時間」
というように、先に予定を確保することが大切です。
多くのオーナーは、営業が終わってから経営について考えようとします。
しかし、実際には疲れてしまい、後回しになってしまうことも少なくありません。
だからこそ、
売上確認
原価率のチェック
人件費の確認
メニュー分析
などを行う時間を、あらかじめスケジュールに組み込むことが重要です。
利益を残しているオーナーほど、意識的に「考える時間」を確保しています。
数字嫌いのオーナーこそ確認してほしい3つの数字
「数字が苦手だから経営管理ができない」
という声もよく聞きます。
飲食業界は現場経験から独立する方も多く、会計や経営の勉強を本格的にしてきたわけではない方も少なくありません。
そのため、
「PL(損益計算書)が読めない」
「会計用語が難しい」
と感じるのは決して珍しいことではありません。
しかし、最初から損益計算書を完璧に理解する必要はありません。
まずは次の3つの数字だけ確認しましょう。
売上
今日いくら売れたのか。
前年同月や先週と比較する習慣を持つことで、売上の変化に早く気付けるようになります。
客数
何人のお客様が来店したのか。
売上が増減した原因が、
客数の変化なのか
客単価の変化なのか
を把握できるようになります。
人件費
シフト時間×時給でいくらかかったのか。
飲食店では原価と並んで人件費が利益を大きく左右します。
売上に対して人件費がどれくらいかかっているかを確認するだけでも、経営の精度は大きく向上します。
まずは数字を見る習慣をつくる
この3つを毎日確認するだけでも、
売上が落ちている原因
人件費の増減
営業効率
シフトの適正化
が見えてきます。
さらに慣れてきたら、
客単価
原価率
FL比率
月間利益
へと確認項目を広げていけば十分です。
数字に強いオーナーとは、難しい会計知識を持っている人ではありません。
数字を継続的に確認し、その変化から行動につなげられる人です。
飲食店経営は感覚も大切ですが、利益を残すためには数字という客観的な指標が欠かせません。まずは毎日の売上・客数・人件費を確認する習慣から始めてみましょう。
まとめ
飲食店経営では、売上を伸ばすることばかりに目が向きがちですが、本当に重要なのは「どれだけ利益を残せているか」です。
毎日忙しく営業していても、
客単価が低い
メニュー数が多すぎる
固定費を把握できていない
数字を確認する習慣がない
といった状態では、思うように利益は残りません。
一方で、利益を安定して残している店舗ほど、
客単価や利益率を意識している
メニュー構成を定期的に見直している
固定費や損益分岐点を把握している
日々数字を確認している
オーナー自身が経営に向き合う時間を確保している
という共通点があります。
現場に立つことはもちろん大切ですが、経営者として数字を見る時間も同じくらい重要です。
飲食店の利益改善は、特別なテクニックではなく、「数字を把握する習慣」から始まります。まずは今日の売上・客数・人件費を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
飲食店経営のお悩みはお気軽にご相談ください
「売上はあるのに利益が残らない」
「数字を見た方が良いのは分かるが、何から確認すれば良いか分からない」
「経理や資金繰りまで手が回らない」
このようなお悩みは、多くの飲食店オーナーが抱えています。
飲食店経営では、現場の課題と数字の課題を切り分けて考えることが重要です。
クロスポイント税理士法人では、飲食店の現場経験を持つ公認会計士・税理士が、開業支援から経営改善、資金繰り、税務相談まで幅広くサポートしています。
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