Column
コラム
目次
- ・このお店で本当に開業して大丈夫なのか
- ・「引き継ぐべきか」から始まった相談
- ・この店は本当に利益が出ているのか
- ・譲渡価格1,200万円は妥当なのか
- ・融資の壁:「自己資金は十分か」
- ・開業前に現場に入ったことの意味
- ・開業を考える人に伝えたいこと
「本当にこのお店で開業して大丈夫だろうか?」
数字を一つずつ確認しながら進めた、香港料理店承継開業のリアル
こんにちは。
REDISHで飲食店の開業サポートを担当しているYです。
今日は、実際に私たちが伴走した開業事例をもとに、開業を検討されていたご依頼主様が、どんな不安を抱えながら準備を進めていたのかをお話ししたいと思います。
飲食店の開業相談を受けていると、よくこんな言葉を聞きます。
「この物件、本当にうまくいくでしょうか…」
「売上って、どれくらい見込めばいいんですか?」
「融資って、本当に通るんでしょうか…」
特に、初めての開業となると、
- この立地で本当に集客できるのか
- 想定している売上は現実的なのか
- 借入をしても返済していけるのか
といった不安が次々に浮かんできます。
今回のご依頼主様も、まさに同じような悩みを抱えていました。
「料理には自信がある。でも経営として成立するかは分からない。」
「数字で見て判断したいけれど、何を基準に考えればいいのか分からない。」
そんな状態で、開業の検討を進めていたのです。
ただ、この案件には一つ大きな特徴がありました。
それは、ゼロからの新規出店ではなく「事業承継」での開業だったことです。
つまり、すでに営業している飲食店を引き継ぐ形で、新しいオーナーとしてスタートするというケースでした。
一見すると、「既に売上があるなら安心なのでは?」と思われるかもしれません。
しかし実際には、事業承継ならではの悩みもあります。例えば、
- 今の売上は本当に再現できるのか
- 前オーナーが抜けた後も同じように回るのか
- 譲渡価格は妥当なのか
といった、“見えている数字の裏側”をどう判断するかという問題です。
そのため今回のサポートでは、まず感覚や印象ではなく、「数字を一つずつ整理すること」からスタートしました。
売上はいくらなのか。利益はどれくらい残っているのか。もし売上が少し落ちたらどうなるのか。こうしたポイントを、実際のデータをもとに確認しながら、本当にこの店で開業するべきかどうかを一緒に考えていったのです。
「このお店を引き継ぐべきか」からスタートした相談
今回のご相談は、「香港料理店を事業譲渡で引き継ぐかどうか迷っている」という段階から始まりました。
お店は東京都豊島区、巣鴨駅前の路面店。駅から徒歩1分という視認性の高い立地で、昼夜ともに人通りが多く、飲食店としては非常に魅力的な場所です。
さらに既存店舗として、
月商約350万円
という売上実績も確認できていました。
飲食店の開業相談では、「これから売上を作れるかどうか分からない」というケースも多い中で、すでに一定の売上がある店舗というのは大きな安心材料になります。
ただ、ご依頼主様は数字だけを見て即決することはありませんでした。むしろ、こんな言葉を口にされていました。
「数字だけ見ると良さそうなんですが… 本当に自分が引き継いでやっていけるのかが不安で。」
この感覚は、とても自然なものです。事業承継では、「既に売上があるなら安心では?」と思われることもありますが、実際にはそう単純ではありません。なぜなら、承継の場合は
- 売上実績がある安心感
- 自分が運営する不確実性
この2つが同時に存在するからです。例えば、
- 今の売上は前オーナーだから出せているのではないか
- 常連客はオーナーが変わっても来てくれるのか
- 現在のオペレーションを自分が回せるのか
といった不安は、多くの方が感じるポイントです。
実際、事業承継での開業は「数字は見えるが、未来は見えにくい」という特徴があります。
そのため今回のサポートでは、まず感覚や印象ではなく、「数字を一つずつ整理していくこと」からスタートしました。売上はどのような構造で成り立っているのか。固定費はどのくらいかかっているのか。もし売上が少し落ちた場合、利益はどう変わるのか。こうしたポイントを一つずつ確認することで、「このお店は本当に引き継ぐ価値があるのか」を、客観的に判断していくことにしたのです。
まず確認したのは「この店は本当に利益が出ているのか」
売上がある店でも、利益が出ているとは限りません。実際、飲食店では
- 売上は高いが人件費が膨らんでいる
- 原価管理ができておらず利益が残らない
- 家賃が重く、黒字ギリギリで運営している
といったケースも少なくありません。そのため、今回の検討でも最初に確認したのが、この店の収益構造です。つまり、「この売上で、本当に利益が残るビジネスなのか」を数字で整理することからスタートしました。
■ 実際の事業計画(改善後想定)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月商 | 約403万円 |
| 原価 | 約121万円 |
| 人件費 | 約110万円 |
| 家賃 | 77万円 |
| その他経費 | 約60万円 |
| 月次利益 | 約34万円 |
この結果、月次利益:約34万円という計算になります。
ここで、ご依頼主様が一番気にしていたのが「売上が少し落ちたらどうなりますか?」という点でした。飲食店経営では、この質問はとても重要です。なぜなら、開業直後は
- オーナー交代による一時的な売上変動
- 新体制へのオペレーション調整
- 客層の変化
などによって、売上が多少上下する可能性があるからです。そこで私たちは、売上がどのラインを下回ると赤字になるのかを確認するため、損益分岐点を算出しました。
結果は 月商 約360万円 でした。
つまり、
- 既存実績:350万円
- 損益分岐点:360万円
という状況です。この数字を見ると、「今の売上とほぼ同じじゃないか」と感じる方もいるかもしれません。しかし、ここで重要なのは既存店舗がすでに350万円前後の売上を継続している実績があることです。
さらに、新オーナーは承継前から店舗に入り、実際の運営に関わっていたため、
- 客層
- 来店動機
- 繁忙時間帯
といった実態も把握していました。つまり、まったく未知の売上を想定しているわけではなく、 実際の営業データをベースにした計画だったのです。
この数字を見て、ご依頼主様は少し安心した表情をされました。「極端に売上を伸ばさなくても、今の売上に近い水準なら黒字にできるんですね。」
そうです。この案件のポイントは、大きな売上成長を前提にしなくても成立する事業だったことです。飲食店の開業計画では、「売上を大きく伸ばす前提」で計画を立ててしまうケースも少なくありません。しかし今回のケースでは、既存店舗の実績を土台にしながら、無理のない数字で成立するかどうかを重視して検討を進めました。その結果、「売上を大きく伸ばさなくても成立する」という、比較的リスクの低い開業モデルであることが見えてきたのです。
次に検討したのは「この価格で買う価値があるのか」
次の大きなテーマは、譲渡価格1,200万円でした。ご依頼主様も、ここにはかなり悩まれていました。
「この金額って妥当なんでしょうか?」
事業譲渡の相談では、ほとんどの方がこの疑問を持ちます。なぜなら、飲食店の譲渡価格は不動産のように明確な相場があるわけではなく、
- 店舗設備
- 立地
- 売上実績
- ブランドや常連客
といった複数の要素を総合的に考えて判断する必要があるからです。そのため、「設備だけを見て判断する」と、実態とズレてしまうこともあります。例えば、
- 厨房設備の中古価値はそれほど高くない
- 内装も減価償却が進んでいる
といった理由から、設備単体で見ると数百万円程度にしかならないケースもあります。しかし、実際の店舗は設備そのものではなく“売上を生み出す仕組み”として存在しています。
そこで私たちは、設備の価格ではなく“収益力”から考える方法で整理しました。つまり、「この店が将来どれくらい利益を生み出すのか」という視点で考えるということです。
- ・月利益:34万円
- ・年利益:約400万円
- → 約3年で投資回収できる計算
になります。もちろん、これは単純な目安ではありますが、事業投資として考えると、3〜4年で回収できる案件は比較的現実的な水準と言えます。さらにこの店舗の場合、
- 巣鴨駅前という安定した立地
- 月商350万円の既存実績
- 設備がすでに整っている状態
という条件も揃っていました。つまり、ゼロから店舗を作る場合に比べると、
- 内装工事
- 厨房設備
- 開業準備期間
といった初期コストや時間を大幅に抑えられる可能性があります。こうした要素も含めて考えると、1,200万円という価格は十分に検討に値する水準と判断できました。この説明をしたとき、ご依頼主様はこう言いました。「数字で見ると、かなり現実的ですね。」
事業承継では、この“投資回収の目線”が非常に重要になります。単に「良い店だから引き継ぎたい」という感情だけではなく、いくら投資するのか、何年で回収できるのか、どの程度のリスクがあるのかといったポイントを数字で整理することで、冷静な判断ができるようになります。今回のケースでも、収益ベースで整理することで、「この事業は十分に成立する可能性がある」という判断材料が見えてきたのです。
融資の壁:「自己資金は十分か」
もう一つ大きな不安がありました。それは「融資が通るのか」という問題です。
飲食店の開業では、物件取得や内装、設備、運転資金などを含めると、どうしてもまとまった資金が必要になります。特に事業譲渡の場合は、店舗そのものを引き継ぐための譲渡対価が発生するため、資金計画の組み立て方が重要になります。
■ 今回の資金計画
| 資金内容 | 金額 |
|---|---|
| 譲渡対価 | 1,200万円 |
| 運転資金 | 約700万円 |
| 合計 | 約1,900万円 |
運転資金には、仕入れ資金、人件費、家賃、光熱費などの固定費といった、開業直後の店舗運営を支えるための資金が含まれています。飲食店は、開業してすぐに売上が安定するとは限らないため、一定期間の運転資金を確保しておくことが資金計画の重要なポイントになります。今回の資金構成は次の通りでした。
- 自己資金:1,300万円
- 融資:600万円
自己資金比率は約68%です。これは金融機関から見ると、かなり評価が高い水準です。一般的に創業融資では、自己資金が3割程度あると評価されやすいと言われています。そのため今回のケースは、自己資金の面だけ見ても、比較的安定した資金構成と言えました。
さらに金融機関が評価したのは、自己資金だけではありませんでした。実際、公庫の審査でも
- 自己資金の厚み
- 既存店舗の売上実績
- 開業前からの実務参画
この3点が大きく評価されました。特に、開業前から店舗運営に関わっていた点は、審査において重要な要素でした。創業融資では、「本当にこの事業を運営できるのか」という事業者の経験や実行力も確認されます。今回のケースでは、
- 実際に店舗で働きながらオペレーションを理解していたこと
- 売上や客層のデータを把握していたこと
などが、事業の実現可能性を裏付ける材料になりました。その結果、創業融資600万円の調達に成功しました。数字だけを見るとシンプルに見えるかもしれませんが、この融資が実現した背景には、現実的な事業計画、十分な自己資金、実務経験による裏付けといった要素が積み重なっていました。つまり今回の融資は、「売上の可能性」だけではなく、「計画の信頼性」が評価された結果だったのです。
この開業で一番大きかった判断
個人的に、この案件で一番重要だったと思うのは「開業前に現場に入ったこと」です。
ご依頼主様は、約半年間、実際に店舗運営に参加しました。単にお店の雰囲気を見るだけではなく、
- 接客
- 調理オペレーション
- 仕入れ
- 売上管理
といった日々の業務にも関わりながら、実際の店舗運営を体験していきました。その結果、
- 客層
- 売上構造
- 繁忙時間
- 原価率
といった、経営判断に必要なデータをすべて確認することができました。例えば、
- 「ランチは会社員と学生が中心」
- 「夜は軽く飲んで帰るお客様が多い」
- 「特定の人気メニューが売上の大きな割合を占めている」
といった、実際に現場に入らないと見えない情報も多くあります。こうした情報を踏まえたうえで事業計画を作ることで、より現実的な収支シミュレーションが可能になりました。つまり今回の計画は、「想像の事業計画」ではなく 「実際の数字から作った事業計画」だったのです。
そしてこの点は、金融機関の審査でも大きく評価されました。創業融資では、将来の売上予測が中心になることも多いのですが、今回のケースでは「実際の営業データをベースにした計画」として説明することができたため、事業の実現可能性が高いと判断されたのです。
開業を考える人に伝えたいこと
飲食店の開業は、不安がつきものです。
- 売上は出るのか
- 融資は通るのか
- 本当にやっていけるのか
今回のご依頼主様も、最初は同じような不安を抱えていました。ただ、今回のように数字を一つずつ確認していくと、不安は「判断材料」に変わっていきます。感覚だけで判断するのではなく、
- 売上
- 利益
- 損益分岐点
- 投資回収
といった数字を整理することで、「この事業は成立するのか」 「今のタイミングで開業するべきなのか」が、より客観的に見えてくるようになります。特に事業承継の場合は、
- 既存店舗の実績
- 設備や立地
- 現在のオペレーション
といった情報がすでに存在しているため、数字を丁寧に整理することで、開業の判断精度を高めることができます。今回のケースも、既存店舗の売上実績、収益構造の分析、投資回収のシミュレーションを一つずつ確認していくことで、「この事業は現実的に成立する」という判断にたどり着くことができました。
事業計画の詳細はこちら
今回の開業事例では、
- 月商350万円の既存店舗をどう評価したのか
- 譲渡価格1,200万円の妥当性をどう判断したのか
- 創業融資600万円を通した事業計画
- 実際の資金配分と収支シミュレーション
などを、より具体的な数値とともに詳しく解説しています。事業承継による飲食店開業を検討している方にとっては、実際の計画書に近い形で参考になる内容になっています。
より詳しい事業計画については、こちらの記事で紹介しています。
(※ここに今回の本編記事リンク)
REDISHの開業サポートについて
REDISHでは、飲食店の開業を検討されている方に向けて、事業計画の作成から融資サポートまで一貫した支援を行っています。飲食店の開業では、
- この物件で本当に成功できるのか
- 売上はどれくらい見込めるのか
- 融資は通るのか
- 事業計画をどう作ればいいのか
といった不安を抱える方が多くいらっしゃいます。特に事業承継や居抜き開業の場合は、
- 譲渡価格の妥当性
- 既存店舗の収益構造
- 承継後の売上再現性
など、判断が難しいポイントも少なくありません。REDISHでは、こうした不安を解消するために、
- 既存店舗の売上・収益構造の分析
- 損益分岐点のシミュレーション
- 投資回収の計算
- 金融機関に提出する事業計画書の作成
- 創業融資のサポート
といった形で、数字と根拠に基づいた開業準備をサポートしています。「なんとなく良さそうな物件だから始める」のではなく、この事業は本当に成立するのかを一緒に整理しながら、開業の判断を進めていきます。
今回の事例のように、
- 既存店舗の承継を検討している
- 開業前に収益性をしっかり確認したい
- 融資が通る事業計画を作りたい
といった方は、ぜひ一度ご相談ください。飲食店開業の経験を持つメンバーが、あなたの状況に合わせて現実的な開業プランを一緒に整理します。
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