Column
コラム
こんにちは。 REDISHで開業サポートを担当している花上です。
私は5つ星ホテルで5年間修業し、神奈川と京都の現場で主に婚礼料理やフレンチを担当してきました。その後、街づくり会社の飲食部門で約3年、フードディレクターとして店舗や企業のメニュー開発、メニュー撮影など幅広く経験してきました。こうした経験を通して、料理の技術だけでなく、店舗運営や企画力、そして人を育てる現場のリアルな側面にも触れてきました。
飲食業界における「修行」という言葉は、独立やスキルアップを目指す人々にとって避けて通れない道のひとつです。しかし、現場で汗を流す中で「これは本当に必要なのか?」と疑問に思う瞬間も少なくありません。私自身も新人時代には、理不尽な指示や長時間労働に悩まされることがありました。
本コラムでは、現場でのリアルな経験を踏まえながら、「意味のある修行」と「そうでない修行」を整理してお伝えします。修行の価値や捉え方を知ることで、これから飲食業界でキャリアを積む方や独立を目指す方が、より有意義な経験を積むヒントになればと思います。
修行の必要性は目標次第
まず大前提として、修行の価値は「何を目指すか」によって大きく変わります。独立を目指す人、単に技術を磨きたい人、あるいは業界経験としてキャリアを積みたい人。それぞれの目的に応じて、修行で得られるものも違います。また、同じ修行内容でも、人によって得られる学びの深さは変わります。「ただ耐えるだけ」にならず、目標意識を持って取り組むことが大切です。
独立を目指す場合
独立志向の人にとって、修行は単なる技術習得の場ではありません。メニューの作り方や調理技術だけでなく、店舗運営、人材管理、顧客対応、仕入れの知識まで幅広く学ぶ必要があります。ここで重要なのは、「理不尽な経験すら、学びの材料に変える視点」を持つことです。
たとえば、新人時代に夜遅くまで皿洗いや掃除を強いられた経験。表面だけを見ると理不尽ですが、後から振り返ると、スタッフ全員がスムーズに働ける環境作りや、衛生管理の重要性を体感する機会になっています。こうした経験を通じて、「なぜこの作業が必要なのか」を理解できると、独立後にスタッフを育てる際の判断力や指導力に直結します。
また、独立を目指す人にとっては、単純作業やルーティン業務も貴重な学びの場です。自分が経験したことを踏まえた上で改善案を考えたり、効率化の工夫を試行錯誤したりすることが、将来の店舗運営能力の基盤になります。つまり、逃げずにやり抜く経験そのものが、現場での対応力や決断力を飛躍的に高めるのです。
技術習得が目的の場合
一方、料理の腕を上げることが主目的の場合、修行の価値は「技術に直結する経験かどうか」で判断できます。毎日大量の同じ作業を繰り返すだけで、工夫や理解の余地がない場合は、技術向上にはあまり寄与しません。しかし、調理の基礎を徹底的に体に染み込ませる段階では、反復練習も必要不可欠です。
ここで重要なのは、「なぜこの作業をするのか」を常に考えながら取り組むこと。例えば、出汁をひく、ソースを合わせる、肉を下処理する──一見単純に思える作業も、手順や感覚を理解することで味や仕上がりに直結します。理解せずにただ従うだけでは、作業は単なる苦痛でしかなくなりますが、意味を理解して取り組むと、同じ作業でも成長の糧に変わります。
さらに、技術習得の修行では、先輩の作業を「なぜこうするのか」を観察することも大切です。手順や動きだけでなく、タイミングや温度の微調整、盛り付けの美しさに至るまで、細かい工夫や考え方を吸収することが、独自の技術やスタイルを作る第一歩になります。
現場での理不尽は、後で役立つ
飲食店での修行経験で、多くの人が「理不尽」と感じる場面があります。叱責される、時間通りに仕事が終わらない、細かい指摘ばかり…新人時代は、とにかく心が折れそうになります。私自身も、婚礼料理の現場で数百人規模のパーティ準備に追われ、指示が飛び交う中で「これは本当に必要なのか」と思った瞬間が何度もありました。しかし、時間が経って振り返ると、そのほとんどが現場をスムーズに回すための正しい指示であったことに気づきます。
理不尽に見える経験の多くは、現場を円滑に回すためのルールや技術の裏付けがあります。たとえば、皿洗いや清掃を完璧に行うことで、衛生管理の意識が自然と身につきます。また、料理を提供するタイミングを厳格に守ることは、単にお客様の満足度向上に直結するだけでなく、スタッフ間の連携や店舗の回転率にも大きく影響します。こうした基本を徹底して身につけることが、後々の応用力や現場判断の精度を大きく高めます。
さらに、「やりたくないこと」に全力で取り組む経験は、精神的な強さや柔軟性を養う貴重な機会です。例えば、結婚式当日の厨房では、予定外のトラブルや急な料理変更が頻繁に発生します。そのたびに焦らず冷静に対応できたのは、過去の理不尽な指示や辛い作業を乗り越えてきた経験があったからです。こうした経験は、独立後やフードディレクションの現場でも、予期せぬ問題に臨機応変に対応する力として活きてきます。
理不尽に思える時間も、後で振り返ると、自分の対応力や判断力を飛躍的に伸ばす糧になっている──これが、現場経験者として胸を張って言える事実です。
意味のある修行とそうでない修行
では、どんな修行が意味があり、どんな修行が意味がないのでしょうか。現場経験者の視点から言えば、修行の価値は単に「辛いか楽か」ではなく、「何を学び、自分の成長につなげられるか」にかかっています。
意味のある修行
- 基本技術を徹底的に身につける経験:包丁の使い方、火加減、味付けの基準など、基礎の徹底はどんな現場でも必須です。例えばフレンチのソース作りで、微妙な火加減を自分で判断できるようになった経験は、独立後の調理精度を飛躍的に高めます。
- 人間関係や接客力を磨く経験:厳しい指導の中でスタッフ間の連携や顧客対応のスキルを学ぶことは、技術以上に大きな財産になります。婚礼の現場では、一瞬の判断やチームワークがサービスの質を左右します。
- 店舗運営の裏側を知る経験:仕入れ、在庫管理、売上管理、原価計算など、表には出ない業務を体験することは、独立やフードディレクションの際に大きな武器になります。
- 困難な状況に耐える経験:忙しい時間帯やトラブル対応を経験することで、臨機応変の力や精神的な強さが養われます。困難を乗り越えた経験は、技術や知識以上に成長に直結します。
意味のない修行
- 成長に結びつかない単純作業の繰り返し:理由も意味もわからず、ただ疲弊するだけの作業は、経験として残りません。技術や判断力が全く身につかない場合などです。
- 指導者のエゴによる無意味な制約:学ぶべき内容がないのに、威圧的な環境で時間を浪費することもあります。これは精神的なダメージだけが残り、成長にはつながりません。
- 健康や安全を害する修行:長時間労働で体調を崩したり、精神的に追い詰められる環境は逆効果です。体や心を壊してしまっては本末転倒です。
結局のところ、修行の価値は「自分が何を学び、どの経験を自分のものにできるか」にかかっています。理不尽だと思えることも、時間が経てば自分の判断力や対応力の基盤となることが多いのです。大切なのは、ただ耐えるだけでなく、「なぜこの経験をするのか」「これをどう自分の成長につなげるか」を意識すること。そうした視点を持つことで、修行は単なる苦行ではなく、自分のキャリアの最大の財産になります。
修行を最大限に活かすために
では、せっかく修行するなら、どうすれば意味のある経験に変えられるのでしょうか。現場経験者としておすすめしたいポイントを、具体例とともに紹介します。
目的を明確にする
「独立したい」「技術を磨きたい」など、自分の目標を常に意識することで、単純作業や理不尽な経験の中にも学びを見つけやすくなります。例えば、皿洗いや掃除の作業も、「効率よく動ける動線を覚える」「器具の扱いに慣れる」といった視点で取り組むと、技術や店舗運営力に直結する経験になります。
意識的に観察する
指導者の行動や店舗運営の流れを観察することは非常に重要です。なぜその作業をするのか、どの順序で指示が出るのか、時間配分やタイミングの理由は何か――こうした背景を理解することで、同じ作業でも学びの質が変わります。私自身も、先輩が皿を置くタイミングやソースの仕上げ方を注意深く見て学ぶことで、判断力が飛躍的に伸びました。
逃げずにやり抜く
やりたくない作業でも、逃げずに取り組むことで得られるものは必ずあります。長時間の皿洗いや清掃、準備作業の積み重ねが、忍耐力や柔軟性を養う土台になります。こうした経験は、トラブル対応や独立後のスタッフ教育など、後々の現場で大きな差となって表れます。「今は辛いけれど、後で必ず役立つ」と自分に言い聞かせながら取り組むことがポイントです。
振り返りを習慣化する
毎日の経験を振り返り、学びを言語化することは非常に効果的です。「今日の作業でうまくいったこと・改善点」「先輩の指示から学んだこと」をメモに残すだけでも、自分の成長を実感しやすくなります。振り返りを習慣化することで、同じ失敗を繰り返さず、経験を確実に自分のスキルとして定着させられます。らに、現場での経験を最大限活かすには「小さな改善や工夫を意識すること」も重要です。例えば、効率的な動線を考えながら作業する、盛り付けの手順を少し工夫して時間短縮を試みる、など日々の積み重ねが、技術力や判断力の差につながります。
まとめ
飲食店の修行は、単なる「苦行」ではありません。確かに辛く、理不尽なことも多いですが、それをどう捉え、どう学びに変えるかが重要です。新人時代は、夜遅くまでの皿洗いや準備作業、細かい指摘に心が折れそうになることもあります。しかし、そうした経験を積み重ねることで、技術だけでなく、精神力、判断力、人間関係のスキル、店舗運営の知識など、多面的な力が自然と養われます。
現場での修行は、単に「技術を覚える」だけの場ではなく、自分の成長や将来のキャリアに直結する学びの宝庫です。理不尽に思える作業ややりたくないことも、後から振り返れば、自分の対応力や判断力の基盤になっていることがほとんどです。私自身も、婚礼料理の現場やフードディレクションの経験で、辛い時間を乗り越えたことが独立やスタッフ教育の力となっています。
最終的に修行の価値は、本人の意識と目標次第です。逃げずに向き合い、意味を見出すことで、修行は自分のキャリアの最大の財産になります。苦しいときも、やりたくないときも、その経験が確実に自分の武器になる──これが、現場経験者として胸を張って言える修行の価値です。
修行の先には、技術だけでなく、自分自身の成長と自信、そして独立やキャリア形成に直結する「力」が待っています。だからこそ、修行の一つ一つを意味あるものにする意識が、将来の自分を支える大きな財産となるのです。
☎️ お急ぎの方は、お電話でもご相談いただけます!
受付時間:平日 9:00〜20:00
※時間外は留守番電話にメッセージをお入れください。折り返しご連絡いたします。
※田邊が出られない場合は、沢田または金山がご対応いたします。







