Column
コラム
こんにちは。 REDISHで開業サポートを担当しているYです。
飲食店の開業を考えるとき、多くの方が最初にぶつかるのは「数字の不安」です。 「この売上は現実的なのか」「この資金で足りるのか」「本当に黒字になるのか」――こうした疑問に対して、明確に答えられる状態で開業に踏み切れる方は決して多くありません。
本コラムでは、別記事でご紹介している焼肉居酒屋の事例をもとに、売上・原価・人件費・資金計画といった数値をどのように設計しているのか、その“中身”を具体的に解説していきます。単なる成功事例ではなく、「なぜその数字で成立するのか」まで踏み込んで読み解いていきます。
売上や融資額、資金配分など、もう少し具体的な数値や計画の詳細については、こちらのコラムで詳しくご紹介しています。
【創業融資1,500万円】焼肉店店長×バーテンダーの経験で開業|地域密着型焼肉居酒屋の成功事例
https://redish.jp/columns/example_034/
売上231万円はどう作られているのか
まず注目すべきは、月商231万円という数字です。
この金額だけを見ると、「なんとなく達成できそう」と感じる方もいれば、「少し高いのでは」と感じる方もいるでしょう。しかし重要なのは、この数字が感覚ではなく、明確な分解によって設計されている点です。
本事例では、売上を「席数×回転数」といった単純な式で捉えるのではなく、時間帯ごとの来店動機に分解しています。具体的には、早い時間帯は仕事帰りの軽い食事、ピーク帯はしっかりとした飲食利用、そして深夜帯は2軒目・3軒目需要というように、それぞれ異なる客層と客単価を前提に設計されています。
ここで重要なのは、「1日の平均値」を作るのではなく、“売上が発生する瞬間”を分解している点です。
■ 実際の売上の組み立てイメージ
例えば本事例では、1日の売上は約10万円強で設計されていますが、その内訳は以下のように想定されています。
- ・17:00〜20:00(早い時間):来店8名前後 × 客単価3,000円
- ・20:00〜23:00(ピーク帯):来店14名前後 × 客単価4,000円
- ・23:00〜26:00(深夜帯):来店8名前後 × 客単価3,500円
このように分解すると、
👉 「どの時間に、どんな客層から、いくら取るのか」
が明確になります。単純な回転数の計算では見えない、“売上の取りどころ”が具体化されている状態です。
■ なぜ「満席前提」にしないのか
飲食店の計画で最も多い失敗が、「満席に近い状態」を前提に売上を組んでしまうことです。しかし実際の営業では、平日は空席が出る、天候で来店がブレる、時間帯ごとに偏りがあるといった変動が必ず発生します。
そのため本事例では、ピーク帯であっても「満席+回転」を前提にはしていません。あくまで“現実的に取り得る客数”に抑えて設計しています。結果として、上振れした日は利益が出る、下振れしても赤字になりにくいという、安定した構造になります。
■ 深夜帯の売上は“追加”ではなく“戦略”
もう一つのポイントは、深夜帯の扱いです。多くの計画では、深夜営業は「余力があればやるもの」として扱われがちですが、本事例では違います。
👉 最初から売上構造の一部として組み込んでいる という点が重要です。
具体的には、1軒目利用ではなく「2軒目需要」を取りにいく、滞在時間が短く、回転しやすい、ドリンク比率が上がり、利益が出やすい、という特性を前提にしています。つまり深夜帯は、👉 「売上を底上げする時間帯」ではなく 👉 「利益を取りにいく時間帯」として設計されています。
■ なぜ231万円に“落とす”のか
この設計をそのまま積み上げると、理論上は月商270万円前後も見込めます。しかし本事例では、あえてそこまでの数字は採用していません。理由はシンプルで、👉 「計画は達成するためのもの」であり、見せるためのものではないからです。
そのため、閑散日の発生、立ち上がりの遅れ、想定外の売上ブレといった要素をあらかじめ織り込み、231万円という水準に調整しています。この「安全側に倒した設計」によって、融資審査での信頼性が高まる、実際の経営でも心理的余裕が生まれる、という効果が生まれます。
■ 再現するための考え方
この売上設計は、特別なものではありません。重要なのは考え方です。
- 「平均値」で考えない
- 「時間帯」と「客層」で分解する
- 「満席」を前提にしない
- 「下振れ」を先に織り込む
この4つを押さえるだけで、売上の精度は大きく変わります。このように、月商231万円という数字は、単なる目標ではなく、営業の実態をそのまま数値化した結果として導き出されています。だからこそ、再現性があり、融資審査においても評価される計画になっているのです。
原価率35%はどのように実現されているのか
次に重要なのが原価率です。焼肉業態において原価率35%という数字は、決して簡単に実現できるものではありません。ここには明確な戦略があります。
ポイントは、売上構成です。本事例では、フードが約60%、ドリンクが約40%というバランスで設計されています。焼肉はどうしても原価が高くなりがちですが、ドリンクは比較的高い粗利を確保できます。この2つを組み合わせることで、全体として原価率をコントロールしています。
さらに、仕入れにおいても工夫があります。既存の取引先との関係性を活かし、鮮度の高い食材を適正価格で仕入れる体制を構築しています。また、メニュー数を絞ることでロスを最小限に抑え、「売れるものだけを扱う」設計にしている点も見逃せません。つまり、この35%という数字は単なる目標ではなく、売上構成・仕入れ・メニュー設計といった複数の要素によって支えられているのです。
人件費31万円に収まる理由
人件費についても、単に「削っている」のではなく、「構造的に最適化されている」点が特徴です。店舗は約20席とコンパクトに設計されており、オペレーションの複雑さを抑えています。
営業は夕方から深夜までですが、常にフル人数で回しているわけではありません。売上が集中するピーク帯に人員を配置し、それ以外の時間帯は最小限の体制で運営することで、無駄な人件費を発生させない仕組みになっています。また、オーナー自身が現場に立つことで、固定費としての人件費を抑えつつ、サービスの質を担保しています。このように、人件費は「削減する対象」ではなく、「売上構造に合わせて設計するもの」として扱われています。
運転資金5ヶ月分が意味するもの
資金計画の中で特に重要なのが、運転資金です。本事例では約5ヶ月分を確保していますが、これは単なる安全策ではありません。
飲食店は、開業直後から安定した売上を作れるとは限りません。むしろ、最初の数ヶ月は認知を広げ、リピーターを獲得するための「投資期間」と捉えるべきです。この期間に資金的な余裕がないと、十分な施策を打てず、結果として立ち上がりに失敗するリスクが高まります。
本事例では、この期間を乗り切るだけでなく、あえて広告や販促に投資できる余力を持たせています。つまり、運転資金は「守りのため」だけでなく、「売上を作るための攻めの資金」として設計されているのです。この考え方が、融資審査においても高く評価されました。金融機関は、単に黒字になる計画よりも、「赤字になっても耐えられるか」「立て直す手段があるか」を重視します。その意味で、この資金設計は非常に合理的です。
損益分岐点という“経営の基準”
この計画における損益分岐点は、月商約190万円です。この数字は単なる計算結果ではなく、日々の経営判断における重要な基準となります。
売上がこのラインを下回る場合、どこに問題があるのかを検証する必要があります。例えば、来店数が減っているのか、客単価が下がっているのか、あるいは特定の時間帯が弱いのか。逆に、原価や人件費に問題がある可能性も考えられます。重要なのは、「なんとなく不安になる」のではなく、「どの数字が崩れているのか」を把握できる状態を作ることです。この分岐点を明確にしておくことで、感覚に頼らない経営が可能になります。
なぜこの計画は融資を通過できたのか
最後に、この計画が1,500万円の融資を実現できた理由について触れておきます。結論から言えば、「数字に根拠があること」に尽きます。売上の作り方、原価のコントロール方法、人件費の設計、資金の使い道――それぞれが経験と紐づいて説明されており、「再現性がある」と判断されたのです。融資審査では、「良さそうな計画」ではなく、「実現できる計画かどうか」が問われます。本事例は、その基準を満たしていたと言えるでしょう。
まとめ
この事例から見えてくるのは、開業計画において重要なのは「大きな数字を掲げること」ではなく、「その数字をどうやって作るのかを説明できること」だという点です。
売上は分解されているか、原価はコントロールできる構造か、人件費は無理のない設計か、資金は十分か――こうした要素が一つでも曖昧なままでは、計画は簡単に崩れてしまいます。
逆に言えば、これらを一つひとつ積み上げていけば、経験を活かした現実的な事業計画を作ることは可能です。
「自分の場合、この数字はどうなるのか?」と感じた方は、ぜひ一度ご相談ください。あなたの状況に合わせて、再現性のある計画へと落とし込むお手伝いをいたします。
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