Column
コラム
こんにちは。
REDISHで開業サポートを担当しているYです。
「いつかは自分のお店を持ちたい」
そう考え始めたとき、多くの方が最初にぶつかるのは“ワクワク”ではなく、“不安”です。
- 本当にこの立地でやっていけるのか
- 自己資金が少なくても融資は通るのか
- 飲食未経験でも経営は成り立つのか
実際に私たちがご支援している方の多くも、こうした悩みを抱えながら、一歩ずつ準備を進めています。
今日は、実際に私たちが伴走した事例をもとに、開業を検討されていたご依頼主様が、どんな不安を抱えながら準備を進めていたのかを、少しだけお話ししたいと思います。
今回ご紹介するのは、異業種から飲食業に挑戦し、開業からわずか1年で月商300万円超えを射程圏に捉えた事例です。しかし、この結果に至るまでには、数字に向き合い、迷いながらも意思決定を積み重ねていったプロセスがありました。
ここからは、実際に私たちがどのようなサポートを行い、どんな迷いや判断のポイントがあったのかを、一緒に見ていきましょう。
また、売上や融資額、資金配分など、もう少し具体的な数値や計画の詳細については、こちらのコラムで詳しくご紹介しています。
【創業融資1,200万円】恵比寿の1階路面で成功した「カラオケ×ダーツ×定額バー」戦略
https://redish.jp/columns/example_036/
数字の裏にあった「本当の不安」と意思決定のプロセス
ここからは、実際の数値と照らし合わせながら、開業までのリアルな思考プロセスを紐解いていきます。
今回のご依頼主様が最初に抱えていた不安は、非常にシンプルでした。
「この計画、本当に成立するのか?」
立地は恵比寿駅徒歩3分の1階路面。飲食店としては申し分ない好条件ですが、その分、家賃は月額52万円と決して軽くはありません。つまり、この時点での本質的な問いはこうです。
「この家賃を払い続けても、事業は回るのか?」
判断①:家賃52万円は“高い”のか?
結論から言えば、この家賃は「高いかどうか」ではなく、“回収できる設計になっているか”で判断しました。ここで行ったのが、感覚ではなく分解による検証です。まず、固定費をベースに損益分岐点を算出します。
・家賃:52万円
・人件費:約73万円
・その他経費:約39万円
合計固定費:約164万円
原価率を約23%とすると、損益分岐点は月商約185万円となります。この数字を見たとき、ご依頼主様はこうおっしゃいました。
「思ったより低いですね」
ここが最初の大きな転換点です。“なんとなく高い家賃”が、“達成可能な売上で回収できる投資”に変わった瞬間でした。
判断②:月商300万円は現実的か?
次に向き合ったのは、「売上の再現性」です。目標月商は309万円。しかし、重要なのは“目標の高さ”ではなく、“構造の妥当性”です。本計画では売上を以下の3つに分解しています。
- ① ランチ(テイクアウト)
- ② ディナー(飲食)
- ③ アミューズメント収入(カラオケ・ダーツ)
特に特徴的なのは、アミューズメント収入の存在です。通常の飲食店は「席数 × 回転率 × 客単価」で売上が決まりますが、このモデルではそこに“在庫を持たない収益源”が加わります。つまり、
- 食材原価がかからない
- 提供時間に左右されない
- 利益率が非常に高い
という特性により、売上の質が大きく向上します。ご依頼主様が最も不安に感じていたのは、実はこの部分でした。
「本当にお客様は“遊び”にお金を払うのか?」
そこで行ったのが、競合調査です。恵比寿エリアの既存店舗を分析すると、高単価のオーセンティックバーと高価格帯のアミューズメントバーに二極化していることが分かりました。つまり、“気軽に遊べる価格帯”が存在していなかった。ここに明確な勝ち筋が見えた瞬間でした。
判断③:なぜランチをやるのか?
夜業態だけでも成立するモデルであるにも関わらず、あえてランチ(テイクアウト)を組み込んだ理由。それは、単なる売上の上積みではなく、リスクヘッジです。
- 家賃の一部を昼で回収できる
- 人通りへの露出が増える
- 認知獲得のコストが下がる
特に大きかったのは、「固定費の分散」という考え方です。家賃52万円を夜だけで回収しようとすると、心理的なプレッシャーは非常に大きくなります。しかし、
- 昼で30〜50万円
- 夜で250万円前後
という分担にすることで、精神的にも数値的にも安定します。この設計により、ご依頼主様の中で「夜がコケたら終わり」という不安が、「昼夜で支え合える構造」に変わっていきました。
判断④:自己資金400万円で1,200万円の融資は可能か?
多くの方が最も不安に感じるポイントです。今回のケースでは、自己資金は400万円。全体の25%という水準です。決して多いとは言えませんが、結果として満額1,200万円の融資に成功しています。
ここで重要だったのは、「金額」ではなく説明の一貫性でした。
- なぜこの立地なのか / なぜこの業態なのか / なぜこの売上が立つのか / なぜ返済できるのか
これらがすべて“数字でつながっている”こと。特に評価されたのは、Webマーケティングを軸とした集客設計です。
- SNSでの認知獲得 / 既存ネットワークの活用 / 来店導線の設計
これらが具体的に言語化されていたことで、「再現性のある売上」として評価されました。
判断⑤:最大の弱点「飲食未経験」をどう乗り越えたか
最後に残ったのは、最も根本的な不安です。「飲食未経験で本当に回せるのか?」この問いに対して、取った戦略は非常に明確でした。それは、“難しいことをやらない設計にする”という判断です。具体的には、
- 調理工程を極限まで簡略化
- フードは乾き物中心
- オペレーションを標準化
- 経験者アルバイトを配置
つまり、「スキルでカバーする」のではなく、構造で解決するというアプローチです。この設計により、“未経験”はリスクではなくなりました。
成功の本質は「特別な才能」ではない
ここまで見てきて分かる通り、今回の成功は決して偶然ではありません。そして同時に、特別な才能や一部の人だけが持つセンスが必要だったわけでもありません。むしろ本質は、とてもシンプルです。
数字に分解する / 仮説を立てる / 検証する / 不安を一つずつ潰す
このプロセスを、感情に流されず丁寧に繰り返したこと。それこそが結果を生んだ最大の要因です。ご依頼主様も最初から明確な勝算を持っていたわけではありません。「なんとなくやってみたい」「自分の経験を活かせる気がする」そんな、まだ輪郭の曖昧な状態からのスタートでした。
しかし、その“なんとなく”を放置せず、
- 家賃は本当に回収できるのか
- 売上はどのくらい現実的なのか
- 融資はどの条件なら通るのか
といった問いに対して、一つひとつ根拠を持たせていきました。重要なのは、「正解を当てること」ではありません。“納得できる仮説を持つこと”です。そして、その仮説を数字で裏付け、必要であれば修正する。このサイクルを回し続けることで、計画の精度は確実に高まっていきます。実際にご依頼主様も、当初の計画から何度も修正を重ねています。
- 売上の見込みが甘い部分は現実的な水準に引き下げる
- 固定費が重すぎる場合は構造から見直す
- 強みが活きない導線は思い切って捨てる
こうした“引き算の意思決定”を積み重ねた結果、最終的には金融機関からも評価される、再現性の高い事業計画へと仕上がっていきました。つまり、“なんとなくの夢”が“実現可能な計画”に変わったのは、才能ではなく、向き合い続けた時間とプロセスによるものです。そしてこれは、決して特別な人にしかできないことではありません。正しい順序で考え、数字と向き合い、曖昧さを一つずつ解消していけば、誰でも同じように「通る計画」に近づけていくことができます。成功か失敗かを分けるのは、センスではなく、“どこまで現実と向き合ったか”——その一点に尽きるのです。
あなたの不安も、分解すれば必ず解決できる
もし今、
- 自己資金が足りない気がする
- 良い物件だけど怖くて決断できない
- この計画で本当に融資が通るのか分からない
そんな不安を感じているのであれば、それはとても自然なことです。むしろ、不安があるということは、それだけ真剣に向きあっている証拠でもあります。ただし、ひとつだけ注意すべき点があります。それは、“不安を感覚のままにしておかないこと”です。重要なのは、その不安を放置するのではなく、“数字に変えて向き合うこと”です。
不安の正体は、多くの場合「曖昧さ」にあります。
- どれくらい売れれば成り立つのか分からない
- どこまでが安全ラインなのか見えていない
- 失敗のラインが定義されていない
こうした“見えない状態”が、不安を増幅させてしまいます。逆に言えば、
この3つを行うだけで、状況は一気にクリアになります。例えば、
- 「家賃が高い気がする」→ 損益分岐点に落とし込む
- 「売上が不安」→ 客単価 × 席数 × 回転率に分解する
- 「融資が通るか分からない」→ 自己資金比率と返済原資で検証する
このように、“感覚”を“構造”に変えることで、判断は驚くほどシンプルになります。そして何より大きいのは、「自分で納得して決められる状態になること」です。他人の成功事例や意見に左右されるのではなく、自分の計画を自分の言葉で説明できる状態。ここまで来ると、不安は完全になくならなくても、“コントロールできるリスク”へと変わっていきます。
最後に
開業は、人生の中でも大きな意思決定のひとつです。だからこそ、感覚や勢いだけで進めるのではなく、「納得できる判断」を一つずつ積み重ねていくことが何より重要です。
今回の事例のように、自分の強みを活かし、市場の隙間を見つけ、数字で裏付ける。この3つが揃えば、未経験からでも十分に戦うことができます。
そしてもうひとつ大切なのは、“完璧な状態になってから動こうとしないこと”です。多くの方が、「まだ不安だから」と準備を先延ばしにしてしまいますが、実際には、動きながらでしか見えない課題も多く存在します。
重要なのは、致命的なリスクは事前に潰し、それ以外は走りながら修正するというバランス感覚です。
あなたの中にあるそのアイデアも、正しく設計すれば“通る計画”に変えることができます。そしてそのプロセスは、一人で悩み続けるよりも、客観的な視点を入れることで一気に前に進むことが少なくありません。
「この状態でも相談していいのだろうか」「まだ具体的じゃないけど大丈夫だろうか」そう感じている段階でも、まったく問題ありません。むしろ、その段階だからこそ、方向性を間違えずに進める価値があります。
その一歩を、私たちは一緒に伴走します。
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