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「借りすぎが怖い」は危険?飲食店の創業融資で失敗する人の共通点

こんにちは。 REDISHでサービスコーディネーターを担当している田邊です。
飲食店の開業相談に乗っていると、ほぼ例外なく聞くフレーズがあります。 それが「できるだけ借り入れは少なくしたい」「必要最低限でスタートしたい」という言葉です。

堅実で、リスクを抑えた正しい判断のように感じるかもしれません。ですが実際のところ、この考え方がその後の経営を苦しくしてしまうケースは少なくありません。

なぜなら、飲食店経営において本当にリスクなのは“借りすぎること”ではなく、“資金が足りないこと”だからです。

そしてもう一つ重要なのは、創業時というタイミングは、あとから振り返っても二度と戻ってこない「最も有利に資金調達ができる瞬間」だということです。

だからこそ、あえてお伝えしたいのはシンプルです。 創業時こそ、「借りられる最大額を確保する」という判断が、結果的にお店を守る最善の戦略になるということです。

なぜ創業時が最も借りやすいのか

創業期は実績がない状態です。通常、金融機関は実績がない事業者に対して慎重になりますが、日本の創業融資制度は例外的に優遇されています。

  • 低金利
  • 無担保
  • 保証人なしでも可能
  • 将来性ベースで評価される

つまり、「過去」ではなく「計画」を見てもらえるフェーズです。これはビジネスの世界において極めて特殊な状況です。

もう少し踏み込んで言えば、このタイミングでは「ストーリー」と「設計力」が評価されます。どんな店をつくるのか、なぜ勝てるのか、どうやって回していくのか。数字はもちろん見られますが、それ以上に“再現性のある計画かどうか”が問われる段階です。

一方で、ひとたび開業してしまえば状況は一変します。評価軸は「夢」から「数字」へと移行します。

  • 売上はどうか
  • 利益は出ているか
  • キャッシュフローは安定しているか

ここではもう「将来こうなります」という話は通用しません。現実にどうなっているか、その一点で判断されます。

さらに厳しいのは、飲食店の場合、立ち上がり直後に“綺麗な数字”が出ることの方が少ないという点です。

  • オペレーションが安定しない
  • 人件費が先行する
  • 無駄なコストが発生しやすい

つまり、最も資金が必要なタイミングで、最も評価が厳しくなる構造になっています。この段階では、たとえ少しの赤字や資金繰りの乱れがあっただけで、融資の難易度は一気に上がります。

加えて、一度「数字が悪い」という履歴がついてしまうと、それはしばらく消えません。金融機関は単年ではなく“推移”を見るため、立ち上がりの失速は長く尾を引きます。

つまり、「実績がないから借りにくい」のではなく、「中途半端な実績がある方が、むしろ借りにくい」 のです。

「あと300万円あれば…」は取り返せない

開業後、よく聞く後悔があります。

  • 「もう少し広告費をかけられたのに」
  • 「スタッフを増やせば回せたのに」
  • 「設備トラブルに対応できなかった」

そして最後にこう続きます。

「あと300万円あれば…」

この言葉は決して大げさではありません。実際に現場では、この“あと少しの資金”があれば回避できた失敗や、伸ばせた売上の機会が数多く存在します。

しかし、この「あと300万円」は、創業後にはほぼ手に入りません。なぜなら、その頃にはすでに“審査対象”が「実績」になっているからです。

さらに言えば、資金が必要になるタイミングほど、状況は悪化しています。

  • 売上が想定を下回っている
  • 資金繰りがタイトになっている
  • 改善のための投資ができていない

つまり、「お金が欲しい理由」がそのまま「貸しにくい理由」になってしまうのです。

開業直後は、

  • 売上が安定しない
  • 固定費が重くのしかかる
  • 利益が出にくい

という、最も評価が低くなりやすいタイミングです。ここで追加融資を受けるのは、想像以上に難易度が高い。

結果として、多くのオーナーが選ばざるを得なくなるのは、

  • コスト削減による縮小運営
  • 投資の先送り
  • 無理な回転で品質低下

といった、“攻められない経営”です。

だからこそ重要なのは、「借りられるときに、最大限借りておく」こと です。それは単に資金を厚くするという話ではなく、「未来の選択肢」をあらかじめ確保しておくという意味でもあります。

資金に余裕がある状態は、精神的な安定だけでなく、適切な意思決定を可能にします。そして結果的に、それが売上やブランドをつくり、本来目指していた経営に近づくための土台になります。

「予備費」を削る人ほど失敗する

もう一つ、致命的な誤解があります。それが「予備費は削ってもいい」という考え方です。多くのオーナーが、見積もり段階でこう判断します。

  • 内装費は削れない
  • 厨房機器も必要
  • じゃあ予備費を削ろう

一見すると合理的な取捨選択に見えますが、実際には“最も削ってはいけない部分”を削ってしまっている状態です。

なぜなら、内装や設備は「予定通りに進む前提」で組まれていますが、現実の開業プロジェクトは“予定通りにいかないこと”が前提だからです。

現場を知っている人間からすると、これは極めて危険です。なぜなら、開業プロジェクトにおいて「想定外が起きないこと」はほぼあり得ないからです。

例えば、

  • 配管トラブルで追加工事
  • 電気容量不足による工事変更
  • レジ・システム導入の遅延
  • 保健所対応での修正工事

これらは“例外”ではなく“日常”です。

さらに厄介なのは、こうしたトラブルは連鎖することが多い点です。一つの遅れや変更が、工期全体や他の工程に影響し、結果的に追加コストを生み出します。

そして重要なのは、これらの出費はタイミングが選べないということです。資金が尽きかけたタイミングで、平気で数十万〜百万円単位の支出が発生します。

ここで予備費がない場合、選択肢は一気に狭まります。

  • 工事の質を落とす
  • 無理にスケジュールを優先する
  • 本来必要な対応を後回しにする

どれも短期的には凌げても、中長期で必ず歪みが出ます。つまり予備費とは、「想定外に対応するための資金」であると同時に、意思決定の質を守るための資金でもあるのです。

飲食店経営や開業、税務・集客に関するご相談を受け付けています。

「売上でカバー」は幻想

「足りなくなったら売上でカバーすればいい」 この考え方も非常に危険です。なぜなら、飲食店は開業直後に黒字化するケースの方が稀だからです。

  • 認知が足りない
  • オペレーションが安定しない
  • リピーターがついていない

加えて、オープン直後は“見えないコスト”も多く発生します。

  • 無駄な廃棄ロス
  • オペレーションミスによる機会損失
  • 教育コストの増加

つまり、売上は不安定で、むしろ赤字が前提の期間が存在します。この状態で資金が足りなくなるとどうなるか。

  • 仕入れを削る
  • 人件費を削る
  • 広告を止める

一見すると合理的なコストコントロールですが、実態は違います。これは戦略的な判断ではなく、「お金がないからやらざるを得ない」という受動的な意思決定です。

結果として、さらに売上が落ちるという負のスパイラルに入ります。

  • 品質が落ちる
  • 顧客満足が下がる
  • リピートが減る

そして最終的には、「売上でカバーする」という前提そのものが崩壊します。これは経営判断ではなく、単なる“資金不足による強制的な縮小”です。

金融機関が評価するのは「余裕」

興味深いことに、金融機関の担当者は「ギリギリの計画」を高く評価しません。むしろ評価されるのは、

  • 余裕のある資金計画
  • 予備費が明確に組み込まれている
  • リスクを前提にしている

という設計です。なぜなら、金融機関は「うまくいく前提」ではなく、「うまくいかなかった場合でも返済できるか」を見ているからです。

つまり、予備費があるということは、

  • 想定外に対処できる
  • 資金ショートのリスクが低い
  • 経営が安定する可能性が高い

というシグナルになります。

そして、こういう計画を出すオーナーに対しては、担当者はこう感じます。
「この人は経営が分かっている」

さらに言えば、余裕のある計画は交渉にもプラスに働きます。条件面や追加相談においても、信頼がベースにあるため、柔軟な対応を引き出しやすくなります。

つまり、予備費とは単なる“余り”ではなく、信用を生む設計要素であり、同時に未来のリスクを吸収するクッションでもあるのです。

削ることで一時的に数字は整いますが、その代償として失うのは「余白」と「選択肢」です。そして飲食店経営において、この2つを失うことが、最も大きなリスクになるのです。

借入はリスクではなく「選択肢」

借入に対する心理的抵抗は理解できます。 「借金=怖いもの」という感覚は、多くの方が自然に持っているものです。

しかし、ここで一度整理しておきたいのは、借入=リスクではないということです。むしろ、経営における本質的なリスクは別のところにあります。

  • 資金が足りないこと
  • 打ち手が打てないこと
  • 撤退判断が遅れること

これらはすべて、「資金余力がない状態」で起きる問題です。

資金が足りないと、人は合理的な判断ができなくなります。本来であればやるべき投資を見送り、やめるべき状況でも続けてしまう。つまり、意思決定が“守り”ではなく“制約”に支配されるようになります。

一方で、十分な資金があればどうなるか。

  • 集客施策を打てる
  • 人員を適切に配置できる
  • 改善のための投資ができる
  • 一時的な赤字にも耐えられる
  • 冷静に撤退判断ができる

ここで重要なのは、「攻め」と「守り」の両方が機能するようになる点です。資金があることで初めて、“攻めるべきときに攻める”“引くべきときに引く”という当たり前の経営判断が成立します。

つまり、借入とは単なる資金調達ではなく、意思決定の自由度を高めるための手段であり、同時に経営の質を底上げするためのインフラでもあるのです。借りないことが安全なのではなく、“選択肢がない状態”こそが最大のリスクである。この視点は、ぜひ持っておいていただきたいポイントです。

まとめ:最初にすべてを決める

飲食店経営において、創業時の資金設計は“後から修正が効かない領域”です。

  • 融資条件は後から良くならない
  • 追加資金は簡単に手に入らない
  • 初期の資金不足は致命傷になる

さらに言えば、資金設計のミスは時間とともに複利的に効いてきます。余裕のない状態でスタートすると、小さな判断ミスやトラブルが積み重なり、気づいたときには立て直しが難しい状態になっていることも珍しくありません。

だからこそ、「創業融資は一生に一度きりのボーナスタイム」という認識を持つことが重要です。このタイミングは、「今いくら必要か」ではなく、「どれだけの不確実性に耐えられるか」で設計すべきフェーズです。

そして取るべき戦略はシンプルです。

  • 借りられる最大額を確保する
  • 予備費を明確に組み込む
  • 想定外を前提に計画する

この3つはどれか一つではなく、セットで機能します。いずれかが欠けると、資金戦略としては不完全になります。これができるかどうかで、半年後、1年後の生存確率は大きく変わります。

慎重さは美徳です。しかし、資金戦略においては“守り”がそのまま“リスク”になることもある。だからこそ必要なのは、「借りない勇気」ではなく、「適切に借りる覚悟」です。

最初の一手で、未来の選択肢を狭めないこと。
そして、どんな状況でも打ち手を持ち続けられる状態をつくること。
それが、飲食店経営における最も重要な意思決定のひとつです。

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