Column

コラム

税理士監修|飲食店の利益改善につながる原価管理と経費処理の基本

飲食店経営では、売上を伸ばすことに意識が向きがちですが、実際に利益を左右するのは「どれだけ無駄なく経営できているか」です。
特に食材費は日々発生するコストであり、まかないや廃棄ロス、在庫管理の甘さなど、小さな積み重ねが大きな利益の差につながります。
また、「まかないは経費になるのか」「オーナーが食べた料理はどう処理するのか」「スタッフとの飲み会は経費になるのか」など、飲食店特有の経費処理について悩まれる方も少なくありません。
こうした原価管理や経費処理を正しく行うことは、利益を増やすだけでなく、税務上のリスクを防ぐことにもつながります。
今回は、飲食店経営者から特に相談の多い「原価管理」と「経費の考え方」について、現場と税務の両面から解説します。

監修:中村悦也(クロスポイント税理士法人)

調理師専門学校を卒業後、飲食店での現場経験を積み、その後公認会計士として大手監査法人にて飲食業向け会計監査に従事。さらに税理士事務所で中小企業支援の実績を重ねるなど、「飲食業界に強い」専門家として活動しています。
現場を知る会計・税務のプロだからこそ、飲食店オーナーが抱えるリアルな悩みや課題に寄り添い、資金繰り・税務・経営管理まで幅広くサポート。飲食店開業を目指す方々の夢の実現を力強く支援しています。

まかない費用を経費にするための条件とは

飲食店では、スタッフへのまかないを福利厚生の一環として提供しているケースが多くあります。
まかないは従業員満足度の向上につながるだけでなく、食費負担の軽減やスタッフの定着率向上にも役立つため、多くの飲食店で導入されています。
しかし、「まかないにかかった食材費はすべて経費になる」と考えられがちですが、実際には税務上のルールが定められており、一定の条件を満たす必要があります。
ポイントとなるのは、スタッフがまかないの価額の半額以上を負担しているかです。
一般的には、スタッフがまかないの価額の半額以上を負担していれば、会社が負担した部分は福利厚生費として経費計上できます。
一方で、完全無料で提供している場合は、税務上「現物給与」とみなされる可能性があります。その場合、従業員の給与として所得税の課税対象となるケースもあるため注意が必要です。
例えば、「スタッフは無料で食べ放題」「勤務日ごとに好きなメニューを無償提供」といった運用は、福利厚生ではなく給与と判断されるリスクがあります。
また、税務調査では「実際に徴収しているか」も重要な確認ポイントになります。
口頭で「負担してもらっていることになっている」だけでは不十分で、

給与からの天引き記録
現金回収の記録
社内規程や就業規則

など、実際に運用していることが分かる資料を残しておくことが大切です。
さらに、店長の判断で無料になったり、スタッフによって負担額が異なったりすると、制度としての整合性が取れなくなる場合もあります。
そのため、

まかないの提供条件
従業員負担額
対象者
利用ルール

を明文化し、全スタッフに周知しておくことをおすすめします。
私自身、飲食店の現場経験がありますが、まかないは単なる食事ではなく、スタッフ同士のコミュニケーションや職場環境づくりにも大きな役割を果たします。
だからこそ、税務上のルールを正しく理解したうえで運用し、従業員満足度の向上と適切な経費処理の両立を目指すことが重要です。

オーナーの飲食は経費にならない?家事消費の基本ルール

個人事業主の飲食店オーナーから特によくいただく質問の一つです。
「自分の店の料理を食べただけだから問題ないのでは?」
「余った食材を持ち帰っただけだから経費のままで良いのでは?」
と考える方も少なくありません。
しかし、結論から言うと、自分自身が食べた料理や持ち帰った食材は、原則として経費にはできません。
事業用に仕入れた食材を私的に消費した場合は、「家事消費」として処理する必要があります。
家事消費とは、事業のために仕入れた商品や食材を、事業主やその家族が個人的に利用することを指します。
飲食店では、

オーナーが営業後に店の料理を食べる
家族の夕食として食材を持ち帰る
知人に商品を無償で提供する

といったケースが該当する可能性があります。
税務上は、

仕入原価
通常販売価格の70%

のいずれか高い金額を売上として計上することになります。
例えば、店舗で提供している料理をオーナー自身や家族が食べた場合、その分の食材が消費されているにもかかわらず売上が計上されていない状態になります。
もし家事消費の処理を行わなければ、実際よりも経費が多く計上され、利益が少なく見えてしまうため、税務上適切ではありません。
そのため、「自分の店の商品だから無料」という考え方は認められず、事業とプライベートを明確に区分することが求められます。
特に家族経営の店舗では、

家族が店で食事をする
食材を自宅用に持ち帰る
子どもや親族に料理を提供する

といった場面が日常的に発生しやすく、家事消費が曖昧になりがちです。
税務調査でも確認されやすいポイントの一つであるため、日頃から記録を残しておくことが大切です。
例えば、

家事消費専用の記録表を作成する
持ち帰った食材をメモしておく
月末にまとめて集計する

など、自店舗で管理しやすい方法を決めておくとよいでしょう。
私自身、飲食店の現場経験がありますが、オーナー自身が店の商品を利用する機会は少なくありません。しかし、こうした日常的な利用ほど記録が漏れやすく、後から振り返ることも難しくなります。
利益を正確に把握し、税務上のリスクを避けるためにも、「事業のお金」と「個人のお金」を明確に分ける意識を持つことが、健全な店舗経営につながります。

福利厚生費になる飲み会・ならない飲み会の違い

飲食店では、忘年会や新年会、歓送迎会、決起会などを開催する機会も少なくありません。
こうした行事は、従業員同士のコミュニケーション促進やチームワークの向上、職場環境の改善につながるため、一定の条件を満たせば福利厚生費として経費計上できます。
特に飲食店はアルバイトスタッフの比率が高く、スタッフ同士の連携がサービス品質や店舗運営に大きく影響します。そのため、親睦を深める機会を設けること自体は、経営上も大きな意味があります。
福利厚生費として認められるかどうかの判断基準としては、

全従業員を対象としている
常識的な金額の範囲である
年に数回程度の一般的な頻度である
従業員の慰安や親睦を目的としている

といった点が挙げられます。
例えば、

忘年会
新年会
歓送迎会
社内懇親会

などは、多くの企業や飲食店で福利厚生費として処理されています。
一方で、

特定のスタッフだけを連れて行く
店長や幹部社員との私的な飲食が中心
一部の従業員だけが継続的に参加している
特定の従業員へのご褒美として実施している

といった場合は、福利厚生費として認められない可能性があります。
ケースによっては交際費として扱われたり、従業員への経済的利益と判断されて給与課税の対象となることもあります。
また、飲食店オーナーの中には、「スタッフとの食事だからすべて福利厚生費になる」と考えている方もいますが、税務上は開催目的や参加対象者が重要な判断材料になります。
例えば、店長と特定のアルバイト数名だけで頻繁に食事をしている場合は、福利厚生ではなく私的な飲食と判断される可能性もあります。
そのため、経費処理を行う際には、飲食代の領収書だけでなく、

開催日時
開催場所
参加者
開催目的

などを記録として残しておくことが重要です。
こうした記録があれば、税務調査が入った際にも福利厚生費として計上した根拠を説明しやすくなります。
私自身、飲食店の現場経験がありますが、スタッフ同士の良好な人間関係は離職率の低下やサービス品質の向上にもつながります。実際に、定期的な懇親会や交流の場を設けている店舗ほど、スタッフの定着率が高い傾向も見られます。
ただし、経営者の感覚だけで経費処理を行うのではなく、「誰のための飲み会なのか」「どのような目的で開催したのか」を明確にしておくことが大切です。
従業員とのコミュニケーションを深めながら、税務上も適切な処理を行うことで、安心して長く続けられる職場環境づくりにつなげていきましょう。

利益を圧迫する廃棄ロスの適正管理とは

廃棄ロスをゼロにしたいと考える経営者は多いですが、現実的には完全にゼロにすることは困難です。
飲食店では、天候や予約状況、季節要因などによって来客数が変動するため、ある程度のロスは避けられません。むしろ、ロスを恐れるあまり仕入れを減らしすぎると、品切れによる販売機会の損失や顧客満足度の低下につながる可能性もあります。
重要なのは「ロスをゼロにすること」ではなく、「適正な範囲でコントロールすること」です。
一般的には売上の3〜5%程度を目安に管理している店舗が多く見られますが、業態によって適正水準は異なります。
例えば、

生鮮食材を多く扱う居酒屋
刺身や寿司など鮮度重視の業態
日替わりメニューが多い店舗

では、一定のロスが発生しやすい傾向があります。
また、開業直後や新メニュー導入時は販売予測が難しく、一時的にロスが増えることも珍しくありません。
廃棄ロスが増える原因としては、

過剰発注
売上予測の誤り
仕込み過多
保存管理の不備
ポーション管理のばらつき

などがあります。
特に飲食店では、「売り切れを出したくない」という思いから必要以上に仕入れてしまうケースが少なくありません。しかし、食材を捨てることは仕入れたお金をそのまま捨てているのと同じです。
例えば、毎日数百円程度の廃棄でも、1年間積み重なれば数十万円規模の利益減少につながることがあります。
そのため、

曜日別の売上傾向を分析する
天候による来客変動を把握する
予約状況を仕入れに反映する

といった取り組みが重要になります。
また、余った食材や端材を活用したメニュー開発を行うことで、ロス削減と利益改善の両立を図ることも可能です。
例えば、

野菜の端材をスープに活用する
肉の切れ端をまかないや限定メニューに活用する
日替わりメニューとして販売する

などの工夫を行っている店舗もあります。
利益が出ている店舗ほど、「どの食材が」「いつ」「どれだけ」廃棄されているのかを記録し、改善活動につなげています。
廃棄ロスは単なる経費ではなく、発注精度や店舗運営の課題を映し出す重要な経営指標として捉えることが大切です。

原価率だけでは利益は見えない!FLコストで考える経営管理

飲食店経営では「原価率を下げれば利益が増える」と考えられがちです。
確かに原価率は重要な指標ですが、実際の経営ではそれだけで利益を判断することはできません。
なぜなら、飲食店の利益を左右するのは食材費だけではなく、人件費や店舗運営コストも大きく影響するからです。
例えば、

原価率は低いが仕込み時間が長い
調理工程が複雑で人件費がかかる
家賃負担が大きい
回転率が低い
光熱費が高騰している

といった場合は、原価率が優秀でも十分な利益を残せないことがあります。
例えば原価率25%のメニューであっても、提供までに多くの人手と時間がかかる場合は、人件費を含めると利益率が低くなってしまいます。
反対に原価率がやや高くても、

オペレーションがシンプル
提供スピードが速い
回転率が高い
少人数で運営できる

といった店舗では高い利益率を実現できるケースもあります。
飲食店経営では原価(Food)だけでなく、人件費(Labor)も含めたFLコストで考えることが重要です。
例えば、

原価率30%
人件費率30%

であれば、FL比率は60%になります。
飲食業界では一般的にFL比率60%以内が一つの目安とされていますが、業態によって適正水準は異なります。
重要なのは、「原価率を下げること」ではなく、「FLコスト全体を最適化すること」です。
実際に利益が出ている店舗ほど、

商品ごとの原価率
人件費率
FL比率
営業利益率

を定期的に確認しながら経営判断を行っています。
私自身、飲食店の現場と会計・税務の両方に携わってきましたが、利益改善に成功している店舗ほど「原価率だけ」に注目していません。
むしろ、
「このメニューはどれだけ利益が残るのか」
「この仕込み時間に見合う利益が出ているのか」
「人件費を含めても利益が確保できているのか」
という視点で数字を見ています。
原価率はあくまで経営指標の一つです。利益を正しく把握するためには、原価と人件費をセットで捉え、FLコスト全体から店舗経営を分析する視点を持つことが重要です。

食材の持ち帰りが招く原価管理と税務上のリスク

「少しくらいならいいだろう」
「余った食材だから問題ないだろう」
と曖昧な運用になっている店舗もありますが、実は大きなリスクがあります。
特に家族的な雰囲気の店舗ほど、善意から食材や商品を持ち帰らせているケースがあります。しかし、ルールが曖昧なまま運用すると、原価管理や税務面で思わぬトラブルにつながる可能性があります。
無断での持ち帰りを放置すると、

横領や窃盗への心理的ハードルが下がる
在庫管理が曖昧になる
原価率悪化の原因になる
スタッフ間で不公平感が生まれる

といった問題につながります。
例えば、「今日は認められた」「前回は何も言われなかった」という状況が続くと、店舗としてのルールが形骸化し、不正行為との線引きが難しくなります。
また、会社が認めている場合でも、無償提供であれば給与課税の問題が発生する可能性があります。
従業員に対して継続的に商品や食材を無償提供している場合、その economic な利益が給与として扱われるケースもあるため注意が必要です。
さらに、「廃棄予定だった食材だから問題ない」と考えるケースもありますが、誰が何を持ち帰ったのか管理できなくなることで、在庫管理そのものが機能しなくなるリスクもあります。
実際には、

本当に廃棄予定だったのか
売れる商品ではなかったのか
どれだけ持ち帰られたのか

が把握できなくなり、理論原価と実原価の差異を生む原因になることもあります。
そのため、

社員割引制度
従業員販売制度
持ち帰り可能な商品の明確化
承認フローの整備
持ち帰り記録の作成

などを整備し、ルールを明文化して運用することが大切です。
ルールが明確な店舗ほど、原価管理の精度も高い傾向があります。
食材や商品の持ち帰りは小さな問題に見えるかもしれませんが、利益管理や職場環境にも影響する重要なテーマです。だからこそ、「善意」や「慣習」に頼るのではなく、店舗として明確なルールを定めておくことが重要です。

利益を残する店舗に共通する原価管理の仕組み

利益を安定して残している飲食店には共通点があります。
それは、感覚ではなく数字で原価を管理していることです。
「なんとなく原価率は大丈夫そう」
「仕入れは経験で調整している」
という運営では、利益の悪化に気付くのが遅れてしまいます。
原価率は毎月少しずつ変動するため、気付いたときには利益が大きく減少していたというケースも少なくありません。
利益が出ている店舗ほど、日々の数字を確認しながら経営判断を行っています。
具体的には、

定期的な棚卸しを行う

月末だけでなく、週単位で確認する店舗もあります。
棚卸しを行うことで、帳簿上の在庫と実際の在庫の差異を把握できます。
また、在庫量を正確に把握することで過剰発注の防止にもつながります。

ポーションを統一する

1人前の量がスタッフによって異なると原価率が安定しません。
レシピや盛り付け基準を標準化することで、原価のブレを防ぐことができます。
特に人気メニューほど、盛り付け量のわずかな差が年間では大きな原価差になることもあります。

理論原価と実原価を比較する

計算上の原価と実際の原価の差を毎月確認することで、

廃棄ロス
過剰提供
発注ミス
不正持ち出し

などを早期に発見できます。
利益が出ている店舗ほど、この差異分析を定期的に実施しています。

データを活用して発注する

経験や勘だけでなく、

売上実績
曜日別傾向
予約状況
天候予測
季節イベント

などを参考に発注精度を高めています。
近年はPOSレジや予約管理システムを活用し、データをもとに発注量を調整する店舗も増えています。

数字を「見える化」して共有する

原価管理はオーナーだけが行うものではありません。
利益を残している店舗ほど、

原価率
廃棄ロス
売上目標

などをスタッフと共有し、店舗全体で改善に取り組んでいます。
現場スタッフが数字を意識することで、盛り付けや食材管理に対する意識も高まりやすくなります。

原価管理がうまい店舗ほど、「管理のための管理」ではなく、利益改善につながる数字を継続的に確認しているのが特徴です。
私自身、飲食店の現場と会計・税務の両方に携わってきましたが、利益を安定して残している店舗ほど、特別な仕組みを導入しているわけではありません。
むしろ、

棚卸しを欠かさない
発注データを確認する
ロスを記録する
数字を振り返る

といった基本を徹底しています。
原価管理は一度仕組みを作って終わりではなく、継続的に改善を積み重ねていくことが大切です。その積み重ねが、利益体質の店舗づくりにつながります。

まとめ

原価管理は単なるコスト削減ではありません。
利益を残しながら、お客様満足度や商品品質を維持するための重要な経営活動です。
特に飲食店では、

食材費
人件費
廃棄ロス
在庫管理

が密接に関係しており、どれか一つだけを改善しても十分な効果は得られません。
飲食店経営では、

まかないや福利厚生のルールを整備する
家事消費を正しく理解する
廃棄ロスを管理する
FLコスト全体で利益を考える
定期的な棚卸しを実施する
理論原価と実原価を比較する

ことが重要です。
私自身、飲食店の現場と会計・税務の両方に携わってきましたが、利益を安定して残している店舗ほど、「感覚」ではなく「数字」をもとに経営判断を行っています。
数字を正しく把握し、小さな改善を積み重ねることが、利益体質の店舗づくりへの第一歩です。
原価管理を単なる経費削減ではなく、店舗の未来を支える経営改善活動として取り組んでいきましょう。

飲食店の原価管理や税務についてお悩みの方へ

原価率や廃棄ロス、まかないの取り扱い、家事消費の処理など、飲食店の経営には業界特有の会計・税務のポイントがあります。
「自店の原価率は適正なのか知りたい」
「利益が残らない原因を分析したい」
「税務処理に不安がある」
このようなお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
飲食店の現場経験と会計・税務の専門知識を持つ専門家が、店舗の状況に合わせてサポートいたします。

飲食店経営や開業、税務・集客に関するご相談を受け付けています。

☎️ お急ぎの方は、お電話でもご相談いただけます!

受付時間:平日 9:00〜20:00

※時間外は留守番電話にメッセージをお入れください。折り返しご連絡いたします。

※田邊が出られない場合は、丹治または新藤がご対応いたします。