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借入がある中で売上が下振れしたとき、経営者が最初にやるべきこと

こんにちは。 REDISHで飲食店の開業サポートを担当している弓逹です。
事業を運営している以上、売上のブレは避けられません。特に創業期や成長過程においては、計画通りに進むことのほうが稀です。その中で借入がある状態で売上が下振れすると、多くの経営者が強い不安を感じます。

しかし、ここで重要なのは「不安に引きずられて場当たり的に動くこと」ではなく、「状況を正しく把握し、打ち手を順序立てて実行すること」です。適切な初動を取ることで、資金ショートは十分に回避可能ですし、むしろ経営の質を高める機会にもなり得ます。
本コラムでは、売上が下振れした際に取るべき実務的な対応を、資金繰り・コスト構造・金融機関対応の観点から整理します。

1. まずやるべきは「資金繰りの見える化」

売上が落ちたときに最も危険なのは、「どのタイミングで資金が尽きるのか分からない状態」です。これが見えていないと、意思決定がすべて後手に回ります。
そこで最初に行うべきは、資金繰り表の作成です。資金繰り表とは、今後の現金の出入りを時系列で整理したものです。最低でも3ヶ月、可能であれば6ヶ月先までの見通しを作成します。

ここで重要なのは、利益ではなく「現金ベース」で考えることです。例えば以下のような項目を洗い出します。

  • 売上入金のタイミング(掛け・現金)
  • 固定費(家賃、人件費、リース料など)
  • 変動費(仕入、広告費など)
  • 借入返済(元本・利息)
  • 税金や社会保険料の支払い

この作業によって、「いつ資金が不足するのか」「どれくらい不足するのか」が明確になります。多くのケースで、問題は「今すぐ」ではなく「数ヶ月後」に顕在化します。つまり、早い段階で可視化できれば、打てる手は一気に増えるということです。

さらに一歩踏み込むなら、「複数シナリオ」での資金繰りも作るべきです。例えば、

  • 計画通りの売上
  • 売上が20%下振れしたケース
  • 売上が半減した最悪ケース

といった具合に、前提を変えたシミュレーションを行います。これにより、「どのラインを割ると危険なのか(デッドライン)」が明確になります。加えて重要なのが、「固定的に見えて実は変動する項目」を見逃さないことです。例えば人件費も、シフト調整や業務委託への切替で一定の可変性がありますし、広告費も完全固定ではありません。こうした“調整余地”を把握しておくことで、いざというときの意思決定スピードが上がります。また、資金繰り表は一度作って終わりではありません。毎週、少なくとも毎月は実績と差分を確認し、「ズレ」を把握することが重要です。このズレこそが、現場で起きている変化のシグナルであり、早期修正の起点になります。

2. 次にやるべきは「経費構造の見直し」

資金繰りの見通しが立ったら、次に行うべきはコストの再設計です。ここで注意すべきなのは、単純な「コストカット」に走らないことです。やみくもに削ると、売上回復の芽まで潰してしまいます。
重要なのは、コストを以下の3つに分解して考えることです。

① 固定費(すぐに削れないがインパクトが大きい)

  • 家賃
  • 正社員人件費
  • 長期契約のサービス

② 準固定費(条件変更で調整可能)

  • 外注費
  • サブスク
  • 広告費の最低出稿額

③ 変動費(即時調整が可能)

  • 仕入
  • 広告費(運用型)
  • 消耗品

優先順位としては、まず③→②→①の順で見直します。特に見落とされがちなのが「惰性で続けている支出」です。例えば、効果が曖昧な広告や使っていないツールのサブスクなどは、即時に停止しても事業へのダメージが小さい一方で、キャッシュ改善効果は高いです。
一方で、売上に直結している広告や、人材などは慎重に扱うべきです。短期的な資金改善のために中長期の成長を犠牲にする判断は、本末転倒になりやすいからです。

ここでさらに重要になるのが、「コストの“意味”を再定義すること」です。すべての支出に対して、「これは何のためのコストか?」「削った場合、どのKPIにどんな影響が出るか?」を明確にします。例えば広告費であれば、

  • 新規顧客獲得のための投資なのか
  • 既存顧客のリピート促進なのか
  • ブランド認知のための中長期投資なのか

によって、削るべきか維持すべきかの判断は変わります。また、人件費についても同様です。単なるコストではなく、「売上を生む能力」や「オペレーションを支える機能」として分解して考えることで、単純な削減ではなく再配置という選択肢が見えてきます。さらに一段踏み込むなら、「変動費化できる固定費はないか」という視点も有効です。例えば、内製業務の一部を外注化する、固定給の一部をインセンティブに変える、オフィスコストをシェア型に見直すといった施策により、売上連動型のコスト構造へと転換することができます。最後に、コスト見直しの目的は「削ること」ではなく「生き残る確率を上げること」である点を忘れてはいけません。短期的な延命だけでなく、回復局面に入ったときに再加速できる状態を維持することが、経営判断としてはより重要です。

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3. 「売上対策」と「資金対策」は分けて考える

売上が下がると、多くの経営者は売上回復に意識を集中させます。もちろん重要ですが、それだけでは不十分です。なぜなら、売上施策は効果が出るまでに時間がかかる一方で、資金は日々減っていくからです。
つまり、

  • 売上対策(中期施策)
  • 資金対策(短期施策)

この2つを分けて同時に進める必要があります。ここでよくある誤りは、「売上さえ戻ればすべて解決する」という前提で動いてしまうことです。しかし現実には、売上が回復する前に資金が尽きてしまえば、その回復を待つことすらできません。したがって、短期的に“時間を買う”ための資金対策は、売上対策と同じかそれ以上に重要な打ち手になります。
資金対策の代表例が「支払い条件の調整」です。

  • 仕入先への支払いサイト延長交渉
  • 分割払いへの変更
  • 一部支払いの後ろ倒し

これらは交渉次第で実現可能なケースも多く、キャッシュアウトのタイミングを後ろにずらすことで資金繰りを安定させる効果があります。
加えて、見落とされがちなのが「入金の前倒し」も有効な手段です。

  • 早期入金割引の提示(例:前払いでディスカウント)
  • サブスク化・回数券化による先行回収
  • 請求・回収フローの短縮(請求書発行の即日化など)

これは単なる資金繰りのテクニックではなく、「キャッシュフロー設計そのものの見直し」です。特にBtoBビジネスでは、入金サイトの長さが資金繰りに大きな影響を与えるため、ここに手を入れるインパクトは小さくありません。さらに一段踏み込むと、「やらないことを決める」ことも資金対策の一部です。例えば、回収サイトが長い大型案件、利益率が低く資金負担が大きい取引、先行投資が重い新規事業などは、資金が潤沢なときは問題にならなくても、下振れ局面では一気にリスク要因になります。あえて受けない、縮小するという判断も、資金を守るうえでは合理的です。

4. 最も重要なのは「金融機関への早期相談」

そして、最も重要でありながら、多くの経営者が後回しにしがちなのが金融機関への相談です。
結論から言うと、資金が尽きる前に相談することがすべてです。
資金が完全にショートしてからでは、選択肢は極端に限られます。しかし、まだ余力がある段階であれば、金融機関も柔軟に対応してくれる可能性が高いです。
具体的な選択肢としては「返済条件の変更(リスケジュール)」があります。

  • 元本返済の一時停止
  • 返済期間の延長
  • 毎月返済額の減額

などを行うことで、キャッシュアウトを抑える手法です。ここで大切なのは、「相談=評価が下がる」という誤解を捨てることです。むしろ、問題が顕在化する前に相談できる経営者のほうが、金融機関からの信頼は高まります。なぜなら、それは「状況を把握し、適切に対応できる経営者」であることの証明だからです。
加えて、相談の“質”も重要です。ただ「厳しいです」と伝えるのではなく、

  • 現在の資金繰り状況(数値ベース)
  • 売上下振れの要因
  • すでに実施している改善施策
  • 今後の見通しと追加打ち手

これらを整理したうえで説明することで、金融機関は「支援すべき先かどうか」を判断しやすくなります。言い換えれば、金融機関対応もまた“準備されたコミュニケーション”であるべきです。さらに現実的な話として、金融機関は「時間」と「情報」があればあるほど動きやすくなります。逆に、情報が不十分で時間もない状態では、リスク回避的な判断(=支援が難しくなる)になりがちです。この構造を理解しておくことが重要です。

5. 早期対応が再建の成否を分ける

売上の下振れ自体は、どの企業にも起こり得るものです。重要なのは、その後の対応です。

  • 資金繰りを可視化する
  • コスト構造を見直す
  • 資金対策と売上対策を分ける
  • 金融機関に早期相談する

これらを迅速に実行できれば、多くの場合、致命的な事態は回避できます。ここで強調したいのは、「小さな違和感の段階で動けるかどうか」が分岐点になるという点です。売上の微減、在庫の滞留、広告効率の悪化——こうした兆候は、いずれも資金繰り悪化の前兆です。この段階で手を打てるか、それとも「まだ大丈夫」と見過ごすかで、数ヶ月後の状況は大きく変わります。逆に、問題を直視せずに「何とかなるだろう」と先送りしてしまうと、打てる手は急速に減っていきます。経営において「時間」は最も重要な資源の一つです。早く動けば選択肢が増え、遅れれば制約が増える。このシンプルな原則を、常に意識しておく必要があります。

まとめ:借入はリスクではなく「コントロール対象」

借入があること自体が問題なのではありません。問題なのは、「状況を把握せず、コントロールできていない状態」です。資金繰りは管理できるものであり、改善できるものです。そして、そのための手段も数多く存在します。

加えて言えば、借入は適切に扱えば「時間を生み出す手段」でもあります。問題は借入の有無ではなく、その時間をどう使うかです。無計画に消費してしまうのか、それとも構造改善や成長投資に振り向けるのかで、結果は大きく変わります。

売上が下振れしたときこそ、経営者としての意思決定力が問われます。不安に流されるのではなく、数字と向き合い、順序立てて対応する。
この積み重ねが、結果的に事業の生存確率を高め、強い経営体質を作っていきます。

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