創業計画書の記入例 日本政策金融公庫の記入例はこちら

創業融資を受けたいと思っている方にとっては、最初の難関が創業計画書を書くことだと思います。具体的にどんなことを書いたら良いのか、迷っているという人も多いでしょう。こちらの記事では、日本政策金融公庫の新創業融資を受ける際の、創業計画書の書き方について解説していきます。

 

創業計画書に書くのは9項目

 

創業計画書は、金融機関から融資を受ける際に提出する書類の一つで、これから興す会社の概要を記載する文書です。日本政策金融公庫の場合、専用の書式があり、ホームページからエクセルまたはPDFのファイルをダウンロードすることができます。創業計画書を書くにあたっては、手書きで書いてもPCで書いてもOKです。

 

まず最初に、創業計画書に書く項目は次の9つとなっています。

 

(1)創業の動機

(2)経営者の略歴等

(3)取扱商品・サービス

(4)取引先・取引関係等

(5)従業員

(6)お借入の状況

(7)必要な資金と調達方法

(8)事業の見通し(月平均)

(9)自由記述欄

 

このなかで、自由に書くことができるのは、(1)の「創業の動機」と(9)の「自由記述欄」で、あとは決められた書式に従って空欄を埋めていくという形になっています。とは言え、初めて創業計画書を書く人は、書式に従った項目でも、どう書いたら良いのか迷ってしまうことでしょう。そこで、以下の節で各項目の書き方の具体例などを解説していくことにします。

 

創業の動機

 

「創業の動機」の項目は比較的自由に書くことができ、あなたの会社をアピールする顔となる部分だと言えます。日本政策金融公庫のホームページでも記入例がアップロードされていますが、なかなか抽象的で分かりにくい、という意見もあるかと思います。「創業の動機」の項目は他社との差別化を図る際にも重要ですから、慎重に記入するようにしましょう。

 

具体例としては、次のような書き方をすると良いと思います。

 

▽調理師の専門学校を卒業した後、5年間イタリアン・レストランで厨房を担当していました。この度、調理師としての自信もついてきたことから、独立して自分の店を持つことを考えました。新規に開業する店舗を探していたところ、駅前で立地も良く、ある程度の顧客も見込めそうな物件を見つけましたので、こちらの店舗を借りて独立することを決めました。

 

この「創業の動機」については、熱く語った方が良い、いや誇張した表現はNGである、という異なった意見があるのですが、要は真摯に、誇張や大言壮語を含まないような書き方をすることが大切です。今後の具体的な会社経営の実態が分かるような書き方をしましょう。

 

また、美容院などを開業したいと考えている場合には、次のような書き方も可能です。

 

▽美容師の専門学校を経て、美容室〇〇で7年間仕事をしてきました。そのなかで、どうすればお客様が最大に満足してくれるのかを考えた結果、独立することを決意しました。美容室〇〇ではカットの代金は〇〇円ですが、新しく始める事業ではこれよりも安い単価にすることが出来ると考え、顧客の獲得にもある程度の見通しがついています。

 

このように、単なる創業の動機だけではなく、あなたの熱意や今後のビジネスの見通しについても書いておくと、好印象になります。

経営者の略歴等

 

こちらには、あなたのこれまでの経歴や、取得している資格などについて書いていくことになります。資格取得の欄は限られているので、今後の会社の方向性とマッチしている資格について記述すると良いでしょう。具体的な記載例については、次の通りです。

 

▽平成〇〇年 〇〇大学経済学部卒業

平成〇〇年 株式会社A社に就職 営業部門に勤務

平成〇〇年 営業部門から企画部門に異動

平成〇〇年 株式会社A社で新商品の開発に従事

令和○○年 同社退職。今までのビジネスの方向性を生かした新会社の設立を検討

 

これまでの履歴については簡潔で良いのですが、どのような部署に携わっていたか、どのような仕事をこなしていたのか、といった点は出来るだけ具体的に記述しましょう。これによって、金融機関の側では、あなたがどれくらいこの事業について専門的なスキルや知識を持っているのか、ということを判断するためです。

 

取扱商品・サービス

 

「取扱商品・サービス」ですが、主幹となるサービスについては、3行だけとスペースが限られています。ここには、あなたの会社の一押しとなる商品やサービスについて書くようにすると良いでしょう。一例として美容院の例を書くと、次のようになります。

 

▽カット(洗髪なし):1,500円

カット(洗髪込み):2,000円

パーマ(ストレート、ソバージュなど):3,000円

 

ここでは、具体的な金額についても明示しておいたほうが良いです。その後に「セールスポイント」「販売ターゲット・販売戦略」「競合・市場など企業を取り巻く状況」といった記載項目もありますから、「取扱商品・サービス」の欄で書き切れなかったことは、こちらで補完することができます。

 

取引先・取引関係等

 

「取引先・取引関係等」には、あなたが今後予定している、あるいは継続してきた取引先などを書くことになります。この項目は主に次の3つに分かれています。「販売先」「仕入先」「外注先」の3つです。

 

それぞれについて、住所とシェア割合、掛取引の割合、回収・支払の条件などを記入します。この項目は、主に経費に関する情報を記載する欄です。これくらいの金額が予定されている、今までは個人事業主だったがこれくらいの金額がかかっていた、という情報を具体的に記入するようにしましょう。

 

記入例に関しては、次のようになるかと思います。

 

▽販売先 レストラン〇〇(自社) シェア100% 掛割合0% 都度回収

▽仕入先 〇〇青果店 シェア50% 掛割合100% 末締め翌月15日支払い

▽外注先 〇〇インテリア シェア40% 掛割合100% 末締め翌月15日支払い

 

日本政策金融公庫の創業計画書の場合、これらの欄を書くスペースも限られているので、規模の大きな取引先について優先的に書くようにすると良いと思います。

 

従業員

 

この「従業員」の欄には、現在働いている従業員数、または将来見込まれる従業員数を記載します。

 

書く項目は3つで、「常勤役員の人数(法人の方のみ)」「従業員数(3カ月以上継続雇用者)」「そのうち家族従業員やパート社員数などの内訳」となっています。

 

例として、次のように書いてみると良いでしょう。

 

▽常勤役員の人数 3人

▽従業員数(3カ月以上継続雇用者) 25人

▽うち家族従業員 2人

 うちパート従業員 13人

 

お借入の状況

 

この「お借入の状況」に関しては、会社創業に関する借り入れだけでなく、マイホームについての借り入れや、自動車購入時のローンについても記載します。場合によっては、この借り入れの状況が融資にとって重要な判断材料となることもあるので、なるべく正確に、嘘のないように記入しましょう。具体例に関しては次の通りです。

 

▽〇〇銀行〇〇支店 「住宅」にチェック お借入残高 〇〇円 年間返済額 〇〇円

 

このとき、「お使い道」については、「事業」「住宅」「車」「教育」「カード」「その他」の6つの選択肢があります。借り入れたお金が「事業」に該当することが分からない時には、「その他」にチェックを入れましょう。「住宅」の費用などは、私邸をオフィスなどに使っている場合、ある一定の額まで必要経費とみなされますから、その点はよく吟味して記入するようにしてください。

 

必要な資金と調達方法

 

「必要な資金と調達方法」は、融資の審査に当たっては重要な項目です。とくに、自己資金の欄が注視されます。この項目は二つに分かれていて、「設備資金」と「運転資金」に分けて書かなければいけません。それぞれ、予想される金額についての正確な記述が必要です。

 

「設備資金」には、「必要な資金の内訳」「見積先」「金額」について書きます。「運転資金」には、「必要な資金の内訳」「金額」の2項目が用意されています。これに対して「資金の調達方法」の項目では、「自己資金」「親・兄弟・知人・友人からの借入」「日本政策金融公庫・国民生活事業からの借入」「他の金融機関等からの借入」と、資金の調達先を仔細に記入するようになっています。

 

ここでは、空欄を書式に従って記入していけば良いのですが、一つ注意点があります。すなわち、自己資金には、タンス預金など出所のはっきりしないお金は含まれないということです。一般的に、自己資金が多ければ多いほど融資は受けやすいとされていますが、それは預金通帳など、出所がはっきりしているお金である必要があります。

 

事業の見通し(月平均)

 

「事業の見通し(月平均)」では、今後予想される会社の「売上高」「売上原価」「経費」「利益」について書くことになります。「経費」については、さらに「人件費」「家賃」「支払利息」「その他」の4つに項目が分かれています。もし、これらの項目について、どこに何を記載したら良いのか分からない、という場合には税理士事務所や会計事務所などに相談をしましょう。

 

いずれにしても、この項目も必要な空欄を埋めていくだけです。ですが、今後の事業がある程度目安が立っているようでしたら、出来るだけ具体的な金額を記載しましょう。

 

最近では、例えば〇〇駅近くに店舗を開業した場合、どれくらいの顧客が予想されるのか、といったこともインターネットで調べることができます。これに販売する予定の消費やサービスなどの価格を掛け合わせれば、売上高は比較的簡単に計算することができます。

 

以上二つの項目は、お金が中心でした。現金のやり取りはなかなか予定通りにはならず、捕らぬ狸の皮算用ということにもなってしまいかねません。こうした経済的な面で予測される数字は、起業に詳しい税理士事務所などにあらかじめ問い合わせたほうが良いでしょう。前の項目の「必要な資金と調達方法」と「事業の見通し(月平均)」とは、融資の審査においては重要な部分ですから、慎重かつ正確に書くように努めましょう。

 

自由記述欄

 

最後に、「自由記述欄」になりましたが、これは今まで書ききれなかったことを補足するための記入欄ということで重要です。ここに記入する内容は、「追加でアピールしたいこと」「事業を行ううえでの悩み」「欲しいアドバイス」等、ということになっています。ですが、あまりにも消極的な内容を書いてしまうと、審査には通りにくくなってしまいます。

 

また、自由記述欄であるからと、この項目を記載しない人もまま見られます。しかし、せっかく自社のアピールができるときに、それを書かないというのはもったいないです。ここには、これまでの項目で書ききれなかったことを書くようにしましょう。

 

「自由記述欄」には、欲しいアドバイスや悩み事などを書くよりも、今までの項目では不十分な情報、例えば予想される顧客の数や、起業までの期間に準備したこと、過去の営業成績などを書くのが良いです。会社員として働いていた人であれば、こんな形で会社に貢献した、そのことで表彰を受けた、といったことを書いてみても良いかもしれません。

 

では、具体例としては、どんな風になるのでしょうか。飲食店を開業する際の例を挙げておきます。

 

▽今回起業しようとしている、〇〇線の〇〇駅では、一日に〇万人の乗降客がおり、そのなかの〇割程度の人が帰宅前に飲食店を利用していると考えられます。そのうち、自社の顧客として認められるのは〇%ほどになります。これくらいの顧客がつくのであれば、十分に採算の取れる営業が可能です。また、同業他社との競争または相乗効果によって、駅前の街並みそのものも活性化できると考えられます。

 

まとめ

 

いかがでしたか? ところどころ省略しましたが、創業計画書を書く際の具体例について、何らかのヒントは得られたのではないでしょうか。インターネットには、それぞれの業種で創業計画書を書く際のサンプルなども掲載されていますが、これを丸々書き写すようなことは止めておいたほうが良いでしょう。

 

創業計画書は会社設立の際の顔になるものです。あくまでも自分の言葉で、正直に真摯に書くことが求められています。あなたも、ぜひこちらの記事を参考にして、あなたらしい創業計画書を書けるように頑張ってみてください。

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