「AIを使っていない税理士は5年で消える」は本当か——データで検証する

生成AI利用経験率37〜39%。この数字を見て、多いと思うだろうか、少ないと思うだろうか。

一般企業の生成AI利用経験率が50〜55%であることを踏まえると、税理士業界はやや後れを取っている。しかしChatGPTの認知度は93%に達している。つまり「知ってはいるが、使っていない」というギャップが厳然と存在する。

このギャップを前に、「AIを使っていない税理士は5年で消える」という言葉がしばしば語られる。本当にそうなのか。データを基に検証してみたい。

構造的な危機は「AI」以前からあった

税理士事務所の休廃業・解散率(2024年)は5.61%で業種別ワースト。2023年の廃業数は81件、前年比+170%。税理士の平均年齢は60歳以上が半数超で、20代はわずか0.6%。有効求人倍率は全国平均2.31倍(大阪府3.07倍)、未経験者の育成コストは2〜3年かかる。

これらの数字が示すのは、税理士業界の構造的な危機がAI以前から存在していたという事実だ。AIの有無は、この危機を「加速するか、緩和するか」の変数の一つに過ぎない。

「AI導入=生き残り」ではなく「二極化」が進む

収入の二極化はすでに明確だ。500万円以下の事務所が30%、3,000万円超の事務所が26.8%。中間層が薄い。

この二極化を分けているのは、単純な「AI導入の有無」ではない。三京道税理士法人でテクノロジー特化事務所を率いる宮川大輔氏が指摘する通り、「中途半端な戦略は最大のリスク」という一点にある。AIを導入しても、戦略なく場当たり的に使えば効果は出ない。逆にAIを使わなくても、明確な戦略があれば事務所は変わりうる。税理士法人空場の手島是樹氏は「電話をなくす、出社をなくす」を先に実施してから業務フローを再設計する、逆算のアプローチを取っている。

海外との比較——1年で9%から41%へ

海外(Wolters Kluwer・Karbon調査)ではAI導入率が2024年9%→2025年41%→2026年92%(予測)という急伸を見せている。日本の37〜39%は、この推移で見ると「まだ足踏みしている」段階に近い。46%の会計士が毎日AIを使用し、77%の事務所がAI投資を増額予定という海外の実態と比べると、日本には猶予はあるが、無限にあるわけではない。

生存の兆しはすでにある

月額980円という破壊的価格で登場した「みんなの税務顧問」(ソルビス税理士法人)は、AI-OCR自動仕訳で記帳代行という業務モデルそのものを揺さぶっている。一方でPwC税理士法人と三菱商事の実証実験では、生成AIが契約書情報を読み込み97%の正答率で申告書ドラフトを作成した。大手はすでにここまで来ている。

必ずしも大手・ベテランだけの話でもない。32歳の税理士法人ハンズ代表・今村氏は、ChatGPT・Claude・NotebookLMを使った税務Bot構築までnoteで公開している。「小さく始めて静かに成果だけを積み上げる」——これも一つの生存戦略だ。

結論

「AIを使っていない税理士は5年で消える」は、半分正しく、半分ミスリードだ。正しくは、「AIの有無にかかわらず、戦略を持たない事務所」が淘汰される。ただし、AIという選択肢がある今、戦略なきまま「様子見」を続けるコストは、これまでより確実に大きくなっている。手島是樹氏の言葉を借りれば、「生成AIやAIエージェントの技術が定着するまであと2〜3年。その時にはもう遅い」。