地域密着の小さな焼肉店がクラウドファンディングで成功した理由 リピーター獲得までの緻密な戦略に迫る

東京・世田谷区経堂にある「焼肉きたむら」は、厳選された黒毛和牛をリーズナブルに楽しめる焼肉店。席数24席、ディナー単価は6,000円~7,000円ほど、普段は顧客の9割が地元住民という地域に根差した個店ですが、客数が激減したコロナ禍にクラウドファンディングを実施し、商圏外からの集客に成功しました。

決して繁華街ではない地域密着型の「焼肉きたむら」が、クラウドファンディングを実施した理由、また緻密に計算されたリピーター施策について話を聞きました。

<聞き手:河石>

■クラファンは高級店がやるもの?イメージを覆した新たな活用法

河石:そもそもクラウドファンデイング自体はご存じでしたか?

北村さん:「クラウドファンディング」という名前は聞いたことはありました。資金調達をするためのもので、どちらかというと高級店や実績があるところがお金を集めるためにやるようなイメージを持っていました。

河石:そのイメージを覆し、実際にご自身でクラウドファンディングを実施することを決めた理由はなんですか?

北村さん:実際自分でやるとなると、どんなお店がやっているのかリサーチするじゃないですか。調べてみたら、意外と個人店も多いんですね。ただモノを売って資金調達をするというよりも「思いを持って作ったモノをより多くの方に届ける」というプロモーションに近いアプローチの方が多いことを知りました。

自分もモノを売るだけではなく、思いを大切にしているので、「普段やっていることに加えて資金調達もできる」という具体的なイメージがついたんです。認知度が低い小さな店でも、思いに共感してもらうことでファンを増やし、資金調達にも成功している事例もたくさんありましたし、それなら私の店のように地域に根ざした小さな店でもできるんじゃないかと思いました。


河石:どちらかというと、資金調達ももちろんですが、より多くのお客さんに知ってもらうためのPRという意味合いが大きかったんですね。

北村さん:そうですね。うちの場合は、リターン(支援者への返礼品)で用意したのが「牛タン尽くしのフルコース」というとんがったものだったので、興味を持ってもらうことができても、クラファンをよく利用される方はいろんなサイトを比較しているので、目が肥えている。そういう方に「ここ、なんか良いな」と思ってもらうためには、商品力だけでは無理だと思いました。割引率の高さ、立地、知名度の高さなど、目の肥えた方に選ばれるにはいろんな要素が絡んでいるはず。

うちのようにそういう飛び道具がない小さな店の場合、自分たちの思いをどうやって言葉にできるか、それにどれだけ共感してもらえるかがカギだと思いました。

河石:そこを弊社でヒアリングし、言語化していったわけですね。


北村さん:はい。リディッシュさんに丁寧にヒアリングしてもらって、自分では表現しきれなかった思いを文章にできたことはすごく良かったと思っています。知人もクラウドファンディングをやっていたのですが、自分で文章を書くことに苦労していました。自分の頭の中にある思いを拾ってもらって、魅力的に表現する。これは手数料を払ってでもお願いして良かったと思う一番のポイントですね。

やっぱり飲食店からすると、「思いを言葉にする」というのが一番のハードルなんですよ。一時期、僕の周りでもクラウドファンディングに挑戦する人が増えましたが、手数料がもったいないと言って自分でやっている人が多かった。でも、やっぱり「書く」ことが大変だったみたいです。

例えば画像だけなら、センスのあるアルバイトの子がいれば美味しそうに見える写真は撮れたりする。個人店であれば、ある程度思いをもって経営されていると思うので、表現したい思いがない、ということはないはずです。でもそれらをわかりやすく限られた文字数の中で章立てして、共感を呼び、なおかつ購買に繋げられるページは自分だけでは作れなかったと思います。そう考えると、手数料は安かったですね。

あとは、リターン設計のアドバイスもありがたかったです。初めてのことでどの程度の金額に設定すればいいのか見当もつきませんでしたが、的確にフィードバックをもらえたので原価計算もしやすかったです。質問に対するレスポンスも早かったので、助かりましたね。ほかの業者さんではなく、リディッシュさんにお願いして良かったと思いました。

きっとこれからクラウドファンディングをやる人が不安なことは「やったことがないから不安」「思いをどう表現したらいいのかわからない」「手数料を払う意味があるのか」の3つだと思うんですよ。

手数料を払う意味があるのか、ここはやっぱり一番悩むところだと思います。お店をやりながら十分な時間も確保できない中で、自分の苦手なことに取り組むって大変ですよ。公開まで1か月半ほどでしたが、自分でやっていたらこのスピード感では進められなかっただろうし、トータルの支援金額も変わっていたと思います。手数料をかけた価値は十分にあったと思います。

■クラウドファンディングの費用対効果は?顧客情報をフル活用したリピーター戦略

河石:ありがとうございます。実際にご支援いただいたお客さまはどんな方でしたか?

北村さん:普段は地元のお客様が90%のローカル店なので、15キロ以上離れた商圏のお客様へのアプローチは定期的に何十万という広告費をかけないと難しいと思っていました。ただ、クラウドファンディングの場合、グルメ好きなお客様が集まるプラットフォームなので、飲食店を探しているお客様がいるところに自分たちのページを出すというのは、普通に広告を打つより費用対効果が高かったのではないかと思います。

例えば手数料に20万円かけて広告を打ったとしても、商圏外からお客さまを呼ぶことはほぼ無理です。ですが、今回のクラウドファンディングでは、遠いところだと葛飾区や港区、23区外からもご来店いただいています。すでにリピートしてくださっている方もいますし、資金調達と新規集客を同時にできたと考えると、手数料ベースの費用対効果は十分ですね。

河石:クラウドファンディングで獲得できた商圏外のお客様の割合はどれくらいですか?

北村さん:普段は95%が地元の方で、残りの5%がネットでたまたま見た、というようなお客さまなのですが、クラウドファンディングでは、支援者のうちの30%くらいが商圏外の方だと思います。

河石:商圏外にも広くリーチできたんですね。リピート率はいかがですか?

北村さん:それはこれからですかね。リターンの利用期限は最大半年間ですが、ちょうどその期間を過ぎた頃がコロナのピークだったので、クラウドファンディングでつながったお客さまにご連絡をしようにも時短営業だったりして…。

ただ、リターンのコースチケット利用が終わった後も、プラットフォームのメッセージ機能でお客さまとやり取りができるので、支援してくださった150人以上の方と今後もやり取りすることができることは大きい。一度の来店だけでなく、今後につながる顧客情報を得ることができるというのも、クラウドファンディングのメリットのひとつだと思います。


河石:クラウドファンディングで得た顧客情報をどのように活用しているんでしょうか。

北村さん:例えばインスタで広告を打ったところで、お客さまの来店がなかったらこちらからアプローチはできないじゃないですか。うちはメルマガもやっていますが、遠くからいらっしゃる方に登録を促しても「次はもう来ないしいらないです」と断られてしまうんですよ。皆さんもたまたま行った旅先のお店の会員にはならないですよね。

その点、クラウドファンディングはコースの事前販売なので、ご来店前に顧客情報がわかっている。うちの場合はリターンの価格帯を幅広く設定したので、性別や年齢、購入してくださったリターンの金額で振り分けて、「この年代の男性には〇円くらいのコースが良さそう」という仮説が立てられる。リピートを促すサービス改善だけでなく、次の商品開発にも役立てることができるんです。

商品開発以外にも、通販のリターンを支援してくださった方に向けて新しい通販のご案内を出したり、戦略が立てやすくなりました。

河石:なるほど。顧客情報をそんなふうに活用していただいていたんですね。

北村さん:事前に得ていたデータと、ご来店いただいた方の感想を照らし合わせることも大切です。思い切って2万円のコースを支援してくださった方と、日常的に2万円を食事に使っている人なら、アプローチは違ってきます。例えば「普段はコース料理を食べる機会があまりないんです」とお話しされている方は、前者の奮発して2万円のリターンを買ってくださった方です。となると、きっと年に数回の記念日利用ですよね。

一方で、「いろんなお店のクラファン買ってるんだよね」という一言が出たお客さまなら、日常的にこのくらいの金額を使っているんだろうなと推測できる。今後、高単価の商品をおすすめしたいと考えた時、後者にあたった方が確率は高いでしょう。

なので、ご来店されたお客様には「なぜ購入したのか」「どういうシチュエーションでの利用を想定して購入したのか」を必ず聞くようにしています。

ご予約の時点でクラファンで支援してくださった方だとわかっているので、難しいテクニックがなくてもちょっとした会話の中で料理にどのくらいお金を使う方なのか、予想を立てることができる。すると、アルバイトでも高価格帯のおすすめができるようになるんですよ。

逆に記念日利用のお客さまは、かけられる金額の天井が決まっている。そういった方にさらにおすすめするのは、テクニックが必要ですし、アルバイトにはなかなか難しいでしょう。


河石:どんな人で、どんなコースを買ったのか、つまり何を欲しがっている人なのかわかっているからこそ、次の来店での単価も上げやすくなるんですね。

北村さん:そうです。例えばクラファンからのリピートで、日常的に食事にお金をかけているタイプの方から予約が入った時、アルバイトには「クラファンで高単価のコースを買ってくれた方のリピートだから、通常より良いお肉をおすすめしてごらん。金額ではなくて美味しいものを求めてきてくれているお客様だから、思い切って!」と伝えています。お客様に喜んでもらうことが一番ですが、おすすめが成功するとアルバイトも自信がつきますしね。

クラウドファンディングって、お客様からしてもお店からしても便利なサービスだと思うんです。決済までネット上で完結しますし、やり取りも簡単で、データを活用できる。

ただ、来店後のアプローチの仕方はアナログです。同じ単価のコースが売れたといっても、買う理由は人それぞれ。メインリターンであるコース利用ではなく、会員特典につけたワインの持ち込み無料を気に入ってくれたのかもしれない。であれば、次回来店時の飲み物にはワインをおすすめすべきです。

いかにお客様のニーズを会話から引き出せるか。ベースのデータがあるので、どこに惹かれて買ったのか、何が好きなのか、しっかりヒアリングしてデータとして残しスタッフにも共有しておけば、サービスの強化にもつながります。

河石:なるほど。リピーター獲得の設計まで考えられていたんですね。

北村さん:本当はもっと全体でシナジーをかけるイメージでした。コロナの影響でどうしてもご来店の間隔が空いて分散するので、データ検証がしづらいのが残念です。

例えば会員特典としてご来店時に毎回ワンドリンクサービスを付けたとしても、来なかったらそのサービスは受けられません。普通はモノをもらう喜びより、失う痛みの方が大きい。であれば、そもそものコース利用券の有効期限を可能な限り延ばす方が、お客さまとしては安心して買えると思います。

有効期限は半年が上限ですが、コロナ禍での実施だったので、「コロナの影響により、有効期限内のご来店が難しい方は、ご相談にのります」と一言入れるなど、もう少しお客さまの不安を取り除くように動けたらよかったなと思います。

河石:たしかに長引くコロナ禍ですから、そういったフォローがある店の方が安心できますね。

 

■今後クラウドファンディングで伸びそうな飲食店はどんな店?

河石:今後、どんなお店がクラウドファンディングを活用すべきだと思いますか?

北村さん:高齢者の方が経営している地域密着のお店を、飲食業界での活躍を夢見る若者が継承するというストーリーは、特に思いが伝わりやすいと思います。そういうお店がクラウドファンディングを活用している事例はあまりありません。

この辺りでも、コロナの影響で閉店したお店はありますが、おじいちゃんおばあちゃんがやっているような和菓子屋さんや定食屋さんなど、店を閉めるケースが特に多いように感じます。

協力金をもらって経営はできたとしても、お客さまが来ないということ自体、働くモチベーションがなくなってしまうんでしょう。年齢を重ねてもお店を続けている理由って、来てくれるお客さまから元気をもらっているからだと思うんですよね。

そういうお店の火を消さないというのはすごく大事ですし、人の心を動かすと思います。そういったお店を地域一丸となってサポートするとか、若くして起業しているような人が入って店を継ぐとか。ネット上で名前が知られていない小さな店でも、せっかくファンのついているお店ですから、ちょっと知識のある人がうまく絡むだけでお店を続ける方法はあると思うんです。高齢者の方がクラウドファンディングをやるということがまず難しいでしょうし、若者の思いだけでは共感を呼びづらいので。

河石:歴史もあるお店ですから、思いに共感してくれる方は多いでしょうね。

北村さん:お店からすると、単純な売上がほしいわけじゃない。自分の思いを残したい、受け継いでほしいという気持ちが大きいはず。後継者になった若い人は、すでにファンのついた思いのあるお店を受け継ぎながら、お金も集めることができる。時代に合ったビジネスモデルになるんじゃないかなと思います。

今の20代とか若い世代の人は、自分でゼロから立ち上げて何かをやるより、誰かと組んで伸ばす能力の方が高い。20代で独立して飲食店をやりたいと思っていても、コロナ禍でそれもなかなかできない。不安が先行して、飲食業界を去ってしまう若い人が最近多いんですよ。飲食店を続けたいのに続けられない人(高齢者)と、始めたいのに始められない人(若者)がいる。それがマッチングすれば思いも一層強くなりますし、共感を呼んで支援も伸びるんじゃないかな。

■クラウドファンディング成功の秘訣とは?「思いが先行しているプロジェクトは伸びない」

河石:クラウドファンディングの成功の秘訣はどんなところにあると思いますか?

北村さん:最初クラウドファンディングをやると決まった時、支援が伸びていないプロジェクトを一通りリサーチしたんです。伸びているお店は、大体資金力もブランド力も違うのでその通りに真似はできない。それなら逆に上手くいかなかったお店をリサーチして、なぜダメだったのかを分析すればいいんじゃないかと。飲食店だけでなく、飲食以外の伸びていないプロジェクトもリサーチしました。そこで見えてきたのが、「思いが先行しているプロジェクトは伸びない」ということです。

河石:それはどういうことですか?

北村さん:独りよがりで、お客さまに共感してもらおうと思ってないんです。なおかつ、目的やお客さまへのメリットがわかりにくいページになってしまっている。

例えば、「ものすごくニッチなジャンルの料理を提供して、世界遺産を守ります。支援してください」というプロジェクトがあったとします。客観的にみると「それって支援したお客さまにとってどんなメリットがあるの?」と思いますよね。でも、実行者の方からすると、すごく熱い思いが詰まっている。こういった思いと商品のミスマッチを起こさないことが大切だと思います。

そして、お客さまにも「当事者意識」を持ってもらうことが応援購入に繋がります。先ほど話した飲食店をやりたい若者とお店を閉めざるをえない高齢者の方のマッチングは、「当事者意識」をすごく持ちやすいと思うんですよ。

河石:たしかに。自分の慣れ親しんだお店が潰れてしまったらと考えると、支援したくなりますね。

北村さん:それもそうですし、本当はお店を続けたいのに何らかの事情でお店を続けられない同じような境遇のオーナーさんも、応援したくなるでしょう。

先日、閉店してしまった近所のお店の前を通りかかった時、開くことがないシャッターに昔からのファンからのメッセージが残されているのを見つけたんですよ。「もうこのお店はないけれど、〇〇さんにメッセージを残しましょう」って。その周りに「今までありがとう」とかたくさんのメッセージが書かれていて。それを見て「応援や支援ってこういうことなんだ」と思いましたね。そういうお店がクラウドファンディングをやったら、応援する人はたくさんいるはず。どこかで自分がこういったプロジェクトができたら面白いだろうなと思っているんですけどね。

河石:人と人をつないで、店を受け継いでいくためのクラウドファンディング。面白そうですね。

北村さん:美味しいものってもう世の中にあふれているので、これ以上美味しいものを作るって相当大変だと思うんですよ。ですが、そのまま再現はできないにしても、老舗の定食屋の味に近いものを作ることは難しくありません。

味も店の雰囲気もそのまま継承すれば、固定のファンもついてくるし、なによりなくなったものが復活するってワクワクしますよね。それを地域の学生や若者が町おこしとして取り組んでいるとなれば、まさに応援や支援の輪が広がると思います。


河石:たしかにそういったプロジェクトはすごく意義がありますね。すでにファンがついているので、リスクも少ないですし。

北村さん:新しい商品を新しい市場に出すのってリスクが高いし、難しい。個人経営の飲食店ではまず無理です。新商品を既存客に売るということであれば、アイデア次第でなんとかなるんですが、次がないんですよ。1回目ほどインパクトのある商品がなかなか思いつかない。

既存商品を新しい市場に売る方法は、今どこもやっています。店舗で売っていたものをテイクアウトや通販で売るパターンがそれです。すでにシェアを抑えられているところに後から入っても勝てません。

そうすると、やっぱり「今あるものを、今いるお客さまに」というパターンが一番勝ちに近いと思うのですが、すでに飽きられているので、「美味しい」だけではない切り口が必要です。応援したくなるような切り口。僕はそのキーワードが「高齢者」「若者」「継承」「伝統」あたりではないかと思っています。

飲食店のクラウドファンディングは、どうしても原価ありきの発想になってしまうのですが、モノを仕入れること以外の価値で集められたら、もちろん原価はかかりません。例えば、なくなりそうなお店の復活をかけたクラウドファンディングをやったとして、5000円で名札が飾れるとなったら多分常連さんは買うでしょう。一緒に通っていた子どももお小遣いで参加できるように安いリターンも用意すれば、子どもにとっても有意義な経験になる。特に地域密着でやっているようなお店は、あらゆる年代から支援を集めやすいのではないかと思います。

河石:次は事業継承系のプロジェクトでご一緒したいですね!様々な切り口からのお話、ありがとうございました。


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