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AI には、答えだけでなく「手順と理由」を教える — 会計士のための AI の育て方|REDISH の仕事

AI に仕事を手伝わせると、最初はよく当たるのに、少し条件が変わると急に外れることがあります。私たちはその原因の多くが、AI に「答え」しか渡していないことにあると考えています。

新人に仕事を教えるとき、答えだけを覚えさせる人はいません。どんな順番で確かめたか、なぜその結論にしたかを一緒に伝えます。AI も同じです。この記事では、リディッシュが社内で実際に決めている AI の育て方を、会計士の仕事に当てはめて紹介します。

1. 渡すのは「結果・手順・理由」の 3 点

AI に覚えてもらいたいことがあるときは、結果だけでなく、手順と理由をセットで書きます。

たとえば、備品の購入の処理を AI に任せたいとき。

  • 結果: 消耗品費で処理した
  • 手順: 領収書の品目と金額を見た。1 個あたりの金額を確かめた。前の年の同じ品目の処理と照らした
  • 理由: 1 個あたり 10 万円未満の備品なので、資産に計上せずその年の費用にした

答えだけを覚えた AI は、金額が 10 万円を超えた品目にも同じ処理を当ててしまいます。手順と理由を知っている AI は、「1 個あたりの金額」を確かめる手順を自分で踏み、違うときに違うと気づけます。応用が利くのは、理由を渡したときです。

これからの専門家の仕事は、自分で答えることだけではなく、AI が学べる材料(結果・手順・理由)を用意することに広がっていきます。

2. 短く、密度を高く。動画より文字で

AI に渡す情報は、多いほど良いわけではありません。多すぎると、AI は判断の材料と雑音を混ぜてしまい、かえって判断がぶれます。

いまの AI は賢くなったので、細かい手順を 100 行並べるより、「何を大事にして判断するか」という原則を短く詰めて渡す方が、見たことのない場面にも応用が利きます。

たとえば、仕訳の作業を任せるときの原則なら、次の 3 行で足ります。

  • まず税法と会計の決まりに合うかを見る
  • 次に、その会社が過去に同じ取引をどう処理してきたかに合わせる
  • 決まりと過去の処理が食い違うとき、どちらとも言えないときは、作業を止めて人の判断に回す

3 行目が大事です。迷ったときの止まり方を先に決めておくと、AI はもっともらしい答えで空白を埋めなくなります。

もう 1 つは、渡す形です。人には動画の方が伝わりやすいことが多いのですが、AI には重く、雑音も多くなります。AI に覚えてもらうなら、結果に手順と理由を添えた短い文章にします。

3. 「これでいいですか」ではなく、提案の形で投げる

AI に「この処理でいいですか」と聞くと、AI はたいてい「いいと思います」と答えます。聞き方が、答えの幅を狭めているからです。

私たちは「こういう仕組みにしたい。足りない観点を挙げて」と、提案の形で投げます。返ってきた文もそのまま使わず、どこが足りないかを指示で直して、質を上げていきます。

そして、AI が「分からない」と答えた質問こそ大事にします。そこに人が答えて書き残せば、次からは AI が答えられるようになります。分からないと言われた場所が、次に育てる場所です。

4. 手料理を、レシピにして会社に残す

1 人の専門家が手元で AI を上手に使えている状態は、「家の手料理」のようなものです。おいしくても、その人がいないと再現できません。

それを、お店の厨房とレシピ(仕組みと手順)にして会社に残すと、誰が作っても同じ味になり、仕事として広がります。

だから私たちは、頭の中にある判断のコツを、個人のメモや表計算のファイルに閉じ込めないようにしています。会社のシステムを通して言葉にし、AI に渡す。AI の道具そのもので差はつきません。差がつくのは、業務の手順とお客様の暗黙知を早くつかみ、仕組みに残したかどうかです。

5. AI に任せないこと

ここまで AI の育て方を書いてきましたが、AI に任せないことも決めています。

  • 税務の判断は、AI に答えさせません。 事務的な質問には AI がすぐ答え、税務の判断が要る質問は必ず税理士に回す。これをシステムの決まりとして入れています。作業は AI が担い、判断は人が持ちます
  • 数字の意味を考えるのは人です。 計算は AI がします。原価率が上がった理由が仕入れなのか、廃棄なのか、メニューの組み方なのかを考えるのは人の仕事です
  • 相手の気持ちを考えるのも人です。 経営者がその数字を見て何に不安を感じるか。そこを徹底的に考えることは、AI には代わってもらえません

AI に頭を使わせる時間が増えた分、人は判断と、経営者の隣に立つことに時間を使えます。

6. 社内の定例で、代表がメンバーに伝えている AI の使い方

ここまでの育て方に加えて、社内の定例で代表がメンバーに伝えていることを紹介します。

  • 大きく広げてから、事業の目的で絞る。 発想の枠を外して広げなければ AI の力は出ず、絞らなければ成果になりません
  • 自分で速く進め、最後の確認だけを人に頼む。 人に頼りすぎると、そこが詰まりどころになります
  • 迷ったら、自分で判断して先へ進める。 速さと直す回数が大事で、間違えたらやり直せばよいと考えています
  • 資料は、構成(目次)の段階で見てもらう。 仕上げてから見せるより手戻りが減り、学びが速く回ります
  • 毎日の振り返りを AI と回す。 続けること・困ったこと・次に試すことを書き、AI と振り返って次の 1 手を磨きます
  • 業界の専門家でなくてよい。 売上の組み立てと客単価をつかめば、お金の専門家としてどの業種にも向き合えます。足りない業界の知識は AI で補います

7. 会計士の仕事に当てはめると

ここまでの育て方を、監査で数字を確かめてきた会計士が、経営の側で数字を使う 3 つの場面に当てはめてみます。

月次の数字の所見 今月と前月・前年同月の数字を渡すだけでは、AI は「売上が 5% 増えました」と数字を言い直すだけになりがちです。自分がいつも見る順番(売上 → 原価率 → 人件費率 → 手元の資金)と、その順番で見る理由(利益を左右する大きい順・資金が尽きる前に気づくため)を添えると、AI は「どこから先に経営者に伝えるべきか」まで整理できるようになります。何をどう伝えるかを判断し、経営者に届けるのは人です。

経営者への説明文 専門用語のまま伝えても、仕込みと接客の合間に数字を見る経営者には届きません。「この経営者は数字より、今週何をすればいいかを知りたい」という相手の前提と、過去に伝わった言い回しを渡すと、AI の書く文が経営者の言葉に近づきます。

お客様からの質問の振り分け 届いた質問を、事務的な質問(書類の出し方・期限など)と、税務の判断が要る質問に分ける作業は、AI に任せやすい仕事です。ここでも、振り分けた理由を AI に書かせておくと、人が判断するときに速く、AI の誤りにも気づきやすくなります。判断が要る質問は、必ず人が答えます。

今日から試せる 3 つ

  1. 次に AI に何かを頼むとき、答えの例に「手順」と「理由」を 1 行ずつ足してみる
  2. 「これでいいですか」を「足りない観点を挙げて」に言い換えてみる
  3. AI が「分からない」と答えた質問を 1 つメモし、自分の答えを手順と理由つきで書き残してみる

この学び方を、毎日の仕事で回せる環境

リディッシュの代表は公認会計士として監査法人で上場企業の監査からキャリアを始め、M&A、IPO の準備と資産運用、投資会社の経営を経て 2015 年に創業しました。いまは AI 活用の最先端を走り、AI と一緒に会社の業務システムそのものを作っています。1 週間に 30〜40 のテーマを、AI と並行して進めています。この記事に書いた育て方は、その日々の中で決めてきたものです。

私たちは、AI を使って中小事業者の CFO(財務の責任者)の役割を担う「CFO テック」を目指しています。これを一緒に目指すことで、会計士の専門性の可能性は、監査の中よりずっと広がります。そのためには、財務を軸に多彩なキャリアを歩き、AI 活用の最先端を走る経営者の隣で働くのが、いちばんの近道だと考えています。

少人数の会社なので、経営の定例に同席し、生成 AI では代わりにくい生きた経営判断と、AI で仕組みを作る方法を、経営トップから直接学べます。飲食店を中心に、開業から税務・集客までを一気通貫で支える事業の中で、専門性を AI と一緒に広げたい若手の会計士の方を探しています。

選考はカジュアル面談から始まります。応募の前提でなくても構いません。 → 採用ページ

募集の要項

項目内容
募集主リディッシュ株式会社
住所東京都港区西麻布 1-12-5 SW 六本木通ビル 3F
連絡先https://redish.jp/careers/apply(応募フォーム)
業務内容公認会計士・税理士として、AI を使った中小事業者の財務と経営の支援(CFO テック)と会計・税務
就業場所フルリモート可(本社: 東京都港区西麻布)
賃金年収 600〜1,000 万円+業績賞与