深夜割増と残業割増が重なるシフトの本当の時給|割増率50%の計算ルールと店舗のミス防止策

深夜割増と残業割増が重なるシフトの本当の時給|割増率50%の計算ルールと店舗のミス防止策

飲食店では、ディナー営業の延長や仕込み・締め作業により、勤務時間が深夜(22時〜翌5時)に及び、かつ1日の実労働時間が8時間を超えるシフトが発生しやすい業種です。

このようなシフトでは、「時間外労働の割増賃金(25%以上)」と「深夜労働の割増賃金(25%以上)」の双方が同時に適用され、割増率が合計で50%以上(基礎時給の1.5倍)になります。

本記事では、労働基準法第37条に基づき、深夜割増と時間外割増が重複する際の計算原則、シフトごとの区分計算手順、店舗運営で起こりやすい給与計算ミスを防ぐ管理ポイントを解説します。


※本記事は2026年10月時点の情報に基づいています。

1. 深夜手当(25%)と残業手当(25%)が重複した際の正しい割増率(50%)の仕組み

労働基準法が定める割増賃金の基礎原則

労働基準法第37条および関連する政令・省令では、労働者に一定の負担がかかる労働に対して、以下の割増賃金を支払うことが使用者に義務付けられています。

  • 時間外労働割増: 法定労働時間(原則1日8時間、週40時間。常時10人未満の飲食店は特例で週44時間)を超えた労働に対し、基礎時給の25%以上を加算
  • 深夜労働割増: 午後10時から午前5時までの間に労働させた場合、基礎時給の25%以上を加算
  • 休日労働割増: 法定休日に労働させた場合、基礎時給の35%以上を加算

これらの割増率は独立して規定されているため、事由が重複した場合はそれぞれの割増率を加算して適用する必要があります。

重複時の割増率一覧

労働時間帯と労働時間の長さに応じて、適用される割増率は次のように整理されます。

労働区分該当条件割増率支払額(基礎時給換算)
通常労働日中(5:00〜22:00)かつ実働8時間以内0%(加算なし)基礎時給 × 1.0
深夜労働(8時間以内)深夜(22:00〜翌5:00)かつ実働8時間以内+25%以上基礎時給 × 1.25
時間外労働(日中)日中(5:00〜22:00)かつ実働8時間超+25%以上基礎時給 × 1.25
深夜残業(時間外+深夜)深夜(22:00〜翌5:00)かつ実働8時間超+50%以上(25%+25%)基礎時給 × 1.50

※月60時間を超える法定時間外労働については、労働基準法第37条第1項に基づき時間外割増率が50%以上となるため、深夜と重なる場合は「50% + 25% = 75%以上(基礎時給の1.75倍)」となります(中小企業も2023年4月1日より適用対象)。

「法定内残業」と「法定外残業」の切り分け

給与計算で混同されやすいのが、契約上の所定労働時間を超えただけの「法定内残業」と、法律上の上限を超えた「法定外残業(時間外労働)」の区別です。

例えば、所定労働時間が6時間と定められているシフトで7時間働いた場合、超過した1時間は「法定内残業」となります。この1時間は1日8時間を超えていないため、時間外割増(25%)は発生しません。この時間帯が深夜(22時以降)であれば、深夜割増(25%)のみが適用され、支払額は基礎時給の1.25倍となります。

一方、実労働時間が8時間を超えた時点から「法定外残業」となり、その状態で22時以降に及んでいる時間が割増率50%(基礎時給の1.5倍)の対象となります。


2. 22時以降に8時間超となる飲食店の典型的なシフトパターンと具体計算例

飲食店の勤務シフトでは、休憩の取り方や出勤時間によって、どの時間帯に「8時間超(時間外)」と「22時以降(深夜)」が重なるかが変動します。自店のシフトを計算する手順と計算式を整理します。

労働時間を4つの区分に分解するステップ

1日のシフトにおいて、労働時間を以下の4つのブロックに分けて集計します。

  1. 日中通常時間: 5:00〜22:00の間で、実労働時間が8時間以内の時間
  2. 深夜通常時間: 22:00〜翌5:00の間で、通算の実労働時間が8時間以内の時間
  3. 日中時間外時間: 5:00〜22:00の間で、通算の実労働時間が8時間を超えた時間
  4. 深夜時間外時間: 22:00〜翌5:00の間で、通算の実労働時間が8時間を超えた時間

計算テンプレート(自店の数値代入用)

1日の支給合計額の計算式は以下の通りです。

1日の支給額 = (日中通常時間 × 基礎時給 × 1.0)
             + (深夜通常時間 × 基礎時給 × 1.25)
             + (日中時間外時間 × 基礎時給 × 1.25)
             + (深夜時間外時間 × 基礎時給 × 1.50)

シフトパターン別の分解例

パターンA: 14:00〜24:00(休憩1時間、拘束10時間、実働9時間)の場合

  • 14:00〜15:00(1時間): 休憩(無給)
  • 15:00〜22:00(7時間): 日中通常時間(実働累計1〜7時間目)
  • 22:00〜23:00(1時間): 深夜通常時間(実働累計8時間目)
  • 23:00〜24:00(1時間): 深夜時間外時間(実働累計9時間目・8時間超かつ22時以降)

【時間の集計結果】

  • 日中通常時間(× 1.0): 7.0時間
  • 深夜通常時間(× 1.25): 1.0時間
  • 日中時間外時間(× 1.25): 0.0時間
  • 深夜時間外時間(× 1.50): 1.0時間

※基礎時給が仮に [ 自店の基礎時給 ___ 円 ] の場合: (7.0時間 × 時給 × 1.0)+(1.0時間 × 時給 × 1.25)+(1.0時間 × 時給 × 1.50)として計算します。

パターンB: 17:00〜翌3:00(休憩1時間、拘束10時間、実働9時間)の場合

  • 17:00〜22:00(5時間): 日中通常時間(実働累計1〜5時間目)
  • 22:00〜23:00(1時間): 休憩(無給)
  • 23:00〜翌2:00(3時間): 深夜通常時間(実働累計6〜8時間目)
  • 翌2:00〜翌3:00(1時間): 深夜時間外時間(実働累計9時間目・8時間超かつ22時以降)

【時間の集計結果】

  • 日中通常時間(× 1.0): 5.0時間
  • 深夜通常時間(× 1.25): 3.0時間
  • 日中時間外時間(× 1.25): 0.0時間
  • 深夜時間外時間(× 1.50): 1.0時間

このように、休憩を挟むタイミングや出勤時刻によって「何時から実働8時間を超えるか」が異なるため、タイムカードの打刻データから通算実労働時間を正しく追跡する必要があります。 ※日付をまたいで続けて働いた場合も、始業した日の1日の労働として通算します。0時で実労働時間がリセットされるわけではありません。


3. 店舗で頻出する深夜残業代の計算間違いと労務・人件費管理の注意点

給与計算の実務において、飲食店の現場で誤りが発生しやすい代表的なポイントを整理します。

誤り1: 22時以降の労働を一律「25%増」で一括処理している

タイムレコーダーの集計設定や手計算において、22時以降の全労働時間を単に「深夜時間」として25%増のみで計算し、8時間を超えている部分の「時間外割増(+25%)」を加算し忘れるケースです。

22時以降の労働であっても、その日の実労働時間が8時間を超えている時間帯は必ず50%以上の割増を支払わなければ労働基準法違反となります。 例えばパターンA(基礎時給1,300円)で22時以降をすべて25%増で計算すると12,350円となり、1日325円の不足になります。月20日勤務なら6,500円の未払いです。

誤り2: 算定基礎となる賃金(基礎時給)から除外できない手当を除外している

月給制の従業員(店長・調理師など)や各種手当が支給されている従業員の割増賃金を計算する際、割増の基礎となる時給(算定基礎賃金)の算出方法に誤りがあるケースです。

労働基準法第37条第5項および同法施行規則第21条により、算定基礎から除外できる手当は以下の7種類に限定列挙されています。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金(慶弔手当など)
  7. 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

上記に該当しない手当(役職手当、職務手当、皆勤手当、業務手当など)は、すべて基礎賃金に算入して基礎時給を算出しなければなりません。 ただし、家族手当・通勤手当・住宅手当は、名称ではなく実態で判断します。扶養家族の数や通勤距離、家賃額にかかわらず一律で支給している場合は除外できず、基礎賃金に算入する必要があります。

基礎時給 = (基本給 + 算入すべき諸手当) ÷ 月の所定労働時間数

※月によって所定労働時間が異なる場合は、1年間の月平均所定労働時間数で割ります。

誤り3: 休憩時間の未取得・打刻管理の不徹底

飲食店のピークタイムのズレなどにより、「シフト上は1時間休憩の予定だったが、実際には客足が途絶えず30分しか休めなかった」という状況が生じた場合、実労働時間が30分増え、8時間を超える時刻も30分早まります。なお、実労働が8時間を超える日は、少なくとも1時間の休憩を与える必要があります(労働基準法第34条)。

その結果、予定より30分早く「8時間超」のラインに到達し、深夜割増と重複する時間外労働時間が増加します。休憩時間の変更がタイムカードに正しく反映されていない場合、未払い賃金が発生するリスクが生じます。

店舗の労務管理セルフチェック項目

月末の給与計算時および日々のシフト作成時に、以下の項目を確認する体制を整えましょう。

  • 勤怠管理システムまたは集計表は、「深夜通常(25%)」と「深夜時間外(50%)」を分けて集計できる設定になっているか
  • 1日の実労働時間が8時間を超えた正確な時刻を特定して割増計算を行っているか
  • 実態として取得できていない休憩時間を、自動的に控除していないか
  • 月給者の割増基礎賃金に、除外が認められていない役職手当等を含めて計算しているか
  • 週の合計実労働時間が40時間を超えた場合の時間外割増(週40時間超のチェック)も連動して処理されているか

正確な割増率を把握してシフトを組むことは、労使トラブルの防止だけでなく、適正な人件費コントロールを行うための基礎となります。

REDISH 税務DXコンサルを見る

飲食店経営や開業、税務・集客に関するご相談を受け付けています。

お店のお悩み、無料でご相談ください

飲食店の税務・開業・集客のことなら REDISH へ。専門家があなたの状況に合わせてお答えします。

無料で相談する