飲食店の開業資金はいくら必要?平均975万円・中央値600万円の実態と創業融資のポイント

飲食店の開業資金はいくら必要?平均975万円・中央値600万円の実態と創業融資のポイント

「飲食店を開業したいけれど、いくら準備すればいいのかわからない」

開業を考えるとき、多くの人が最初に悩むのが「開業資金」です。

日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」によると、新規開業にかかった費用は平均975万円、中央値600万円でした。

ただし、この数字は飲食店だけを対象にしたものではありません。日本政策金融公庫が融資した新規開業企業を対象とした調査なので、飲食店の開業資金としてそのまま当てはめることはできません。

重要なのは平均額を見ることだけではなく、

  • 自分の業態ならいくら必要なのか
  • 設備資金と運転資金をいくらに分けるのか
  • 自己資金をいくら用意するのか
  • 借入はいくらまでなら無理なく返済できるのか

を、自分の店舗条件に合わせて計算することです。

※本記事は2026年9月時点の情報に基づいています。

この記事の結論

日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」では、新規開業の開業費用は以下のとおりです。

指標金額・割合
平均値975万円
中央値600万円
250万円未満20.1%
250万〜500万円未満21.7%
500万円未満41.8%

250万円未満と250万〜500万円未満を合計すると、41.8%が500万円未満で開業しています。

平均975万円と中央値600万円には375万円の差があります。

そのため、「飲食店を開業するなら975万円必要」と考えるのではなく、自分の店舗条件から必要資金を積み上げることが重要です。

なお、同じ調査で開業時の資金調達額は平均1,219万円でした。

資金調達先平均額
自己資金279万円
配偶者・親・兄弟・親戚53万円
友人・知人等41万円
金融機関等からの借り入れ827万円
その他19万円
合計1,219万円

金融機関等からの借り入れは827万円、自己資金は279万円で、両者を合わせると資金調達額全体の90.7%を占めます。

ただし、これは「自己資金279万円あれば開業できる」という意味ではありません。調査対象は日本政策金融公庫が融資した企業であり、開業する業態や店舗規模、設備投資の内容によって必要な自己資金は大きく異なります。

自己資金については平均額をそのまま目標にするのではなく、自店に必要な総資金を計算したうえで、自己資金と借入金をどう組み合わせるかを考えることが重要です。

なお、「開業費用975万円」と「資金調達額1,219万円」は同じ指標ではありません。開業費用と、開業時にどのような資金を調達したかは別の観点から集計された数字なので、単純に差額を比較するものではありません。

1. 日本政策金融公庫の「975万円」は飲食店だけの数字ではない

まず注意したいのが、975万円という数字の母集団です。

日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」は、2024年4月〜9月に日本政策金融公庫国民生活事業が融資した企業のうち、不動産賃貸業を除き、融資時点で開業後1年以内だった企業8,517社を対象に実施されています。

2025年8月時点で調査され、2,165社から回答を得ています。

つまり、この数字は、

「日本全国の飲食店が実際に使った開業費用の平均」ではありません。

飲食店だけでなく、さまざまな業種の新規開業企業を含んだ数字です。

また、この調査は日本政策金融公庫国民生活事業が融資した企業を対象としているため、日本政策金融公庫から融資を受けずに自己資金のみで開業した事業者などは、調査対象には含まれていません。

したがって、975万円は「飲食店の開業費用の正解」ではなく、新規開業全体の資金規模を把握するための参考値として見るのが適切です。

2. 飲食店の開業資金は「業態×物件×設備」で決まる

飲食店の開業資金は、同じ飲食店でも大きく変わります。

たとえば、

  • 10坪程度の小規模店舗
  • 居抜き物件を利用する店舗
  • スケルトンから新装する店舗
  • 厨房設備を多く必要とするレストラン
  • テイクアウト中心の店舗
  • 家賃の高い駅前店舗

では、必要な資金が大きく異なります。

そのため、「カフェなら○万円」「居酒屋なら○万円」という一律の金額だけで資金計画を作るのはおすすめできません。

開業資金は大きく「設備資金」と「運転資金」に分けて考える

開業資金を考えるときは、まず以下の2つに分けると整理しやすくなります。

設備資金

  • 物件取得費
  • 内装工事費
  • 厨房設備
  • 空調設備
  • POSレジ
  • 看板
  • 家具・什器
  • 食器・備品

運転資金

  • 家賃
  • 従業員人件費
  • 食材・飲料の仕入れ
  • 水道光熱費
  • 通信費
  • 広告宣伝費
  • 消耗品費
  • その他の経費

そして、設備資金だけでなく、開業後に売上が計画どおりに伸びなかった場合に備えた運転資金まで含めて調達額を決めることが重要です。

3. 開業資金の内訳を具体的に積み上げる

開業資金を考える際は、最初から「1,000万円必要」と決めるのではなく、必要な項目を一つずつ積み上げます。

たとえば、月商150万円を基準とする店舗を想定し、以下のように整理できます。

項目金額
内装工事費600万円
厨房設備250万円
物件取得費150万円
家具・什器50万円
初期仕入50万円
販促費30万円
その他70万円
運転資金250万円
合計1,450万円

この場合、

必要資金=600+250+150+50+50+30+70+250=1,450万円

となります。

このように、「必要資金を項目別に積み上げる」ことが、創業融資の資金計画を作る基本です。

重要なのは「見積書ベース」で作ること

開業資金を精度高く計算するなら、概算だけでなく、できるだけ実際の見積書を集めます。

特に内装工事や厨房設備など金額が大きくなりやすい項目は、実際の見積額を反映しましょう。

4. 運転資金はいくら用意すればいい?

飲食店の開業では、設備資金ばかりに目が向きがちです。

しかし、開業後に売上が計画どおりに伸びなかった場合、家賃や従業員人件費などの支払いは続きます。

日本政策金融公庫の2025年度調査でも、開業時に苦労したこととして、

  • 「資金繰り、資金調達」56.9%
  • 「顧客・販路の開拓」49.9%
  • 「財務・税務・法務に関する知識の不足」36.4%

が上位に挙げられています。

そのため、運転資金は「最低○ヶ月あれば必ず安心」と決めるのではなく、売上が計画を下回った場合に、どの程度の期間を乗り切れるかという考え方で設計しましょう。

運転資金の計算方法

たとえば、月商150万円を基準とする店舗で、毎月の支出が以下の場合を考えます。

支出月額
家賃15万円
従業員人件費45万円
水道光熱費10.5万円
通信費・システム費5万円
その他固定費7万円
合計82.5万円

月商150万円、原価率30%とすると、原価は、

150万円 × 30%=45万円

です。

そのため、上記の支出を前提とすると、

150万円 − 45万円 − 82.5万円=22.5万円

となり、営業利益は22.5万円、営業利益率は15%となります。

また、毎月の支出82.5万円を基準にすると、

82.5万円 × 3ヶ月=247.5万円

となります。

第3章で例示した運転資金250万円は、この3ヶ月分を概ねカバーする水準です。

ここでは毎月の支出を中心に単純化していますが、実際の資金繰りでは、売上に応じて発生する仕入れなどの変動費、税金・社会保険料、借入金の返済なども含めて確認します。

また、個人事業主の場合、事業主本人の生活費は従業員人件費として経費計上するものではないため、資金繰りを考える際は事業主自身の生活費も別途考慮する必要があります。

重要なのは「3ヶ月分が絶対に必要」ということではなく、売上の立ち上がりや固定費、自己資金、借入条件などを踏まえて、自店に必要な運転資金を判断することです。

人件費や損益構造について詳しく知りたい場合は、飲食店の人件費に関する解説記事もあわせてご覧ください。

5. 創業融資なら日本政策金融公庫も選択肢

開業資金をすべて自己資金だけで用意する必要はありません。

日本政策金融公庫では、創業者向けの「新規開業・スタートアップ支援資金」を取り扱っています。

この制度は、新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方を対象とし、設備資金・運転資金に利用できます。

融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)、設備資金は20年以内、運転資金は10年以内の返済期間が設定されています。元金返済の据置期間は設備資金・運転資金ともに5年以内です。

日本政策金融公庫では、創業にあたって適正な事業計画を策定し、その計画を遂行する能力が十分あると認められることなどを利用条件として示しています。

そのため、融資を考える場合は、

  • 自己資金はいくらあるか
  • なぜその金額を借りるのか
  • 借入金を何に使うのか
  • 開業後にどう返済するのか
  • 売上予測にどのような根拠があるのか

まで一貫した計画を作ることが重要です。

融資の詳しい仕組みについては(【飲食店向け】創業計画書の書き方完全ガイド!融資審査を通すポイントと業態別作成例(公認会計士監修))もあわせてご覧ください。

飲食店なら生活衛生関係の融資制度も確認する

飲食店は生活衛生関係営業に該当するため、創業時には「生活衛生新企業育成資金」も選択肢になります。

この制度は、生活衛生関係の事業を創業する方、または創業後おおむね7年以内の方が対象です。

ただし、資金使途は生活衛生同業組合の振興計画認定組合の組合員かどうかなどによって異なり、組合員の場合は設備資金・運転資金、それ以外の場合は設備資金が対象です。

また、利用にあたっては推せん書等が必要となる場合があります。

そのため、「飲食店だから必ずこちらが有利」と決めつけず、開業時点の最新条件を確認することが重要です。

6. 創業融資で重要なのは「借りられる金額」ではなく「返せる金額」

融資を受ける際に注意したいのが、「できるだけ多く借りる」という考え方です。

重要なのは、

必要資金 − 自己資金 = 借入必要額

という単純な計算だけではありません。

借入後には毎月の元金返済が発生します。

たとえば、600万円を5年間、元金均等で返済すると仮定すると、

600万円 ÷ 60ヶ月=月10万円

が元金返済の目安になります。

実際には金利が加わるため、毎月の返済額はこれより大きくなります。

したがって事業計画では、損益計算書上の利益だけでなく、税金等の支払い、借入金の元金返済などを含めた実際の資金繰りまで確認し、返済後にも手元資金が残る計画にすることが重要です。

なお、借入金の元金返済は経費にはなりません。一方、返済によって実際の預金残高は減少するため、損益計算書上の利益と手元資金には差が生じます。

7. 開業前に作っておきたい「3つの売上シナリオ」

売上計画を1パターンだけ作ると、計画どおりに売れなかったときの資金繰りが見えません。

そこで、

  • 強気シナリオ
  • 基準シナリオ
  • 慎重シナリオ

の3パターンを作る方法があります。

第4章と同じ店舗を前提として、客数だけを変えると、以下のように整理できます。

シナリオ1日客数客単価営業日数月商原価30%毎月の支出営業利益
強気50人1,500円25日187.5万円56.25万円82.5万円48.75万円
基準40人1,500円25日150万円45万円82.5万円22.5万円
慎重30人1,500円25日112.5万円33.75万円82.5万円△3.75万円

計算式は、

月商=1日客数 × 客単価 × 営業日数

です。

営業利益は、

営業利益=月商 − 原価 − 毎月の支出

として計算しています。

さらに、売上が計画を下回った場合に、どの程度の資金が必要になるのかを確認します。

たとえば、慎重シナリオでは営業利益が約3.75万円の赤字となるため、この状態が続けば手元資金が減少していきます。

こうしたシナリオを作っておくことで、売上が計画を下回った場合に、どの程度の資金不足が発生するのかを事前に把握できます。

損益分岐点や必要客数の計算について詳しく知りたい場合は、開業判断ワークシート — 自分の数字で「1日何人来れば黒字か」を出す全手順もあわせてご覧ください。

これは融資審査だけでなく、実際の経営にも重要な考え方です。

8. 開業成功のために、資金以外で準備すべきこと

日本政策金融公庫の2025年度調査では、開業時に苦労したこととして「資金繰り、資金調達」だけでなく、「顧客・販路の開拓」や「財務・税務・法務に関する知識の不足」も上位に挙げられています。

つまり、開業資金を用意できれば、それだけで経営が安定するわけではありません。

① 商圏とターゲットを確認する

「この場所なら人が来る」という感覚だけではなく、

  • 商圏人口
  • 世帯構成
  • 年齢層
  • 昼夜人口
  • 競合店舗
  • 競合店の価格帯
  • Googleマップ等の口コミ
  • 人通り・交通量

などを確認します。

② 売上を「客数×客単価」に分解する

「月商300万円を目指す」だけでは根拠が弱くなります。

たとえば、

40人/日 × 3,000円 × 25日=300万円

のように分解すると、必要な客数と客単価が明確になります。

さらに、

席数 × 回転数 × 客単価 × 営業日数

など、業態に応じた売上構造まで分解すると、より具体的な計画になります。

③ 開業後の集客まで開業前に設計する

開業してからSNSを始めるのではなく、

  • Instagram
  • Googleビジネスプロフィール
  • LINE公式アカウント
  • 開業前の告知
  • プレオープン
  • 近隣への認知施策

などを、開業スケジュールに組み込んでおきます。

9. 成功事例を見るときも、自店の条件に置き換えて考える

飲食店には、

  • 地域密着型のカフェ
  • 独自性の高いラーメン店
  • 低コスト型のフードトラック

など、さまざまなビジネスモデルがあります。

ただし、これらをそのまま「成功する型」と考えるのは危険です。

同じカフェでも、

  • 商圏
  • 客層
  • 客単価
  • 営業時間
  • 席数
  • 家賃
  • 原価率
  • 人件費

が違えば、必要な戦略も変わります。

成功事例から学ぶべきなのは、「その店と同じことをする」ことではなく、

なぜそのビジネスモデルが成立したのか

を分解することです。

たとえば、

ターゲットを絞る

ターゲットに合った商品を作る

商圏内で認知を獲得する

初回来店をつくる

再来店につなげる

というように、自店の仕組みに置き換えて考えます。

10. 飲食店の開業資金を決めるチェックリスト

最後に、開業資金を決める際は以下を確認してみてください。

設備資金

  • 物件取得費を見積もった
  • 内装工事の見積書を取得した
  • 厨房設備を洗い出した
  • 家具・什器を洗い出した
  • 看板・外装費を確認した
  • POSレジ等のシステム費を確認した
  • 初期仕入を見積もった
  • その他の初期費用を洗い出した

運転資金

  • 家賃を計算した
  • 従業員人件費を計算した
  • 水道光熱費を計算した
  • 仕入費を計算した
  • 広告宣伝費を計算した
  • その他固定費を計算した
  • 売上が計画を下回った場合の資金繰りを確認した
  • 税金・社会保険料・借入金返済も含めて資金繰りを確認した
  • 個人事業主の場合は、事業主自身の生活費も別途考慮した

資金調達

  • 自己資金額を確認した
  • 借入必要額を計算した
  • 借入後の月々の返済額を確認した
  • 返済後にも資金が残るか確認した
  • 融資の使途を明確にした
  • 創業計画書の売上根拠を説明できるようにした

まとめ

日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査では、開業費用の平均は975万円、中央値は600万円でした。

ただし、これは飲食店だけの数字ではなく、日本政策金融公庫の融資先を対象とした新規開業企業全体の統計です。

そのため、飲食店を開業する際は、

平均975万円を目標にするのではなく、自分の店舗に必要な資金を積み上げる

ことが重要です。

特に確認したいのは、

  1. 設備資金はいくら必要か
  2. 開業後の運転資金はいくら必要か
  3. 自己資金はいくら用意できるか
  4. 借入はいくら必要か
  5. 借入後に無理なく返済できるか
  6. 売上が計画を下回っても資金ショートしないか

という6点です。

創業融資では、単に自己資金や借入額だけを見るのではなく、物件・業態・売上計画・資金使途・返済計画が一つのストーリーとしてつながっていることが重要です。

「いくら借りられるか」ではなく、「いくらなら無理なく事業を続けられるか」から逆算して資金計画を作りましょう。

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