飲食店開業の初期投資はいくら?店舗の内外装・設備にかかる費用内訳と節約のポイント

飲食店の開業を目指す方や開業したばかりのオーナーにとって、最大のハードルとなるのが「初期投資の資金繰り」です。
「家賃や保証金は計算していたけれど、内装や設備工事に思った以上にお金がかかって資金がショートしそう……」という失敗談は少なくありません。
店舗を構えて営業をスタートするためには、物件の取得費用以外にも多額の「店舗投資費用」が必要です。費用は業態・立地・物件の状態によって大きく変わるため、この記事では「絶対にいくら」という決め打ちではなく、費用の内訳と考え方の目安をお伝えします。居抜き・スケルトンによる違い、無駄な出費を抑える賢い節約ポイントまでわかりやすく解説します。
※本記事は2026年9月時点の情報に基づいています。内装・設備費用は資材価格や地域、工事業者、物件の状態によって変動するため、実際の見積もりは複数の業者に確認することをおすすめします。
1. 居抜きとスケルトンでどう違う?店舗投資費用の基本
店舗投資費用は、選ぶ物件のタイプ(居抜き物件かスケルトン物件か)によって大きく変動します。
居抜き物件の場合
前のテナントが使っていた内装や厨房設備をそのまま引き継げる物件です。
- 必要な主な費用:一部の内外装改装費、厨房機器のメンテナンス・追加購入費、食器・備品代、造作譲渡料
- 特徴:既存の設備を活用できるため、内装・設備の工事費用そのものは抑えられます。ただし、前テナントから内装・設備一式を引き継ぐ対価として「造作譲渡料」を支払うのが一般的です。相場は100万〜300万円程度で、ラーメン・焼肉等の重飲食は200万〜300万円、カフェ・バー等の軽飲食は100万〜200万円が目安(立地・設備の状態により変動)です。なお、設備が古い物件や早期に退去したい前テナントの場合は無償(0円)で引き継げるケースもあれば、好立地で設備が充実した物件では500万円を超えるケースもあります。内装工事費が抑えられても造作譲渡料が上乗せされるため、開業時にかかるお金の総額はスケルトンとそれほど変わらないケースもあります。 「居抜きだから安い」と単純に考えず、造作譲渡料まで含めた初期費用全体で比較することが重要です。加えて、設備の老朽化による修繕リスクや、レイアウトの自由度が制限される点にも注意が必要です。
スケルトン物件の場合
コンクリート打ち放しの状態(内装や設備が一切ない状態)で引き渡される物件です。
- 必要な主な費用:内外装工事費、配管・電気・空調工事費、厨房機器一式、食器・備品代
- 特徴:完全に一からレイアウトやデザインを設計できるため、理想の店舗づくりが可能です。一方で、設備工事費用がすべてゼロからの計上となるため、工事費用自体は大きくなります(造作譲渡料はかかりません)。
2. 店舗自体の投資費用の内訳と相場
物件取得費(敷金・礼金・仲介手数料など)を除いた、店舗投資費用の主な内訳を見ていきましょう。費用は業態・坪数・物件の状態によって大きく変わるため、以下はあくまで目安です。
なお、この章の内訳はスケルトン物件から工事する場合を前提としています。居抜き物件では、ここで紹介する工事費の一部が不要になる代わりに第1章の造作譲渡料がかかるため、この内訳に造作譲渡料をそのまま上乗せして二重に計上しないよう注意してください。
① 内装・外装工事費(坪単価の目安)
一般的に「内装工事費」という場合、内装の造作だけでなく、電気・給排水・ガス・空調といった設備工事、場合によっては外装まで含めた「坪単価」として語られることが多くあります。どこまでを坪単価に含めるかは工事業者・見積もりによって差があるため、実際の見積書ではその範囲を必ず確認してください。
業態別の坪単価目安(スケルトンを想定)
- 中華料理:約30万〜60万円/坪(強火力の中華レンジ・大型排気ダクト・太いガス配管が必要なため、見た目以上に設備負荷が高い業態です。居抜きで中華用の排気設備を引き継げる場合は25万〜45万円/坪程度に抑えられることもあります)
- 居酒屋・バー・洋食:約25万〜80万円/坪(内装のこだわり度合いによって差が大きい業態です)
- 和食(個室・造作あり):約35万〜90万円/坪が目安です。カウンターの一枚板、格子・障子・土壁、畳の小上がりや床の間などオーダーメイドの造作が多いため高くなりやすく、高級割烹・懐石料理店では60万〜130万円/坪以上になることも珍しくありません。
- 焼肉・鉄板焼き(無煙ロースター等):約100万〜150万円/坪(居抜きで既存の無煙ロースターや排気設備を引き継げる場合は、20万〜40万円/坪程度に抑えられることもあります)
同じ業態でも、シンプルな内装かこだわった造作かで坪単価は大きく変わります。また、内装工事費は近年の資材価格・人件費の上昇により上昇傾向にあります。日本銀行「企業物価指数」によると、2020年平均と比べてセメントは約1.7倍、生コンクリートは約1.6倍、鉄筋は約1.5倍の水準まで上昇しており、数年前の相場感を参考にすると実際の見積もりより低く見積もってしまうことがあります。上記はあくまで目安の幅として捉え、必ず最新の見積もりで確認してください。
内訳の一例(15坪・居酒屋・バー・洋食、坪単価35万円〈標準的でやや抑えめな仕上げを想定〉の場合)
坪単価はあくまで総額の目安のため、内訳が総額と一致するよう、具体的な試算を示します(業態・坪数・仕上げのグレードが変わると比率も変わる一例です)。
| 項目 | 金額目安 |
|---|---|
| 電気工事 | 90万円 |
| 水道工事(グリストラップ含む) | 80万円 |
| ガス工事 | 55万円 |
| 空調設備 | 90万円 |
| 内装・造作工事(壁・床・照明・什器の造作等) | 210万円 |
| 合計(=35万円/坪×15坪) | 525万円 |
- 電気工事:50〜60アンペア以上の容量確保が一般的に必要です。電力会社との契約アンペアの変更自体は、申し込みのみで工事費がかからない場合が多くあります。一方、建物側の幹線(引き込み線)や分電盤の容量が足りない場合は、その改修工事が別途必要になり、数十万円以上かかることもあります。また、三相動力を使う機器(大型冷蔵庫・食洗機等)を新設する場合は、動力電源の引き込み工事も別途かかることがあります。
- 水道工事:グリストラップ(油脂分離阻集器)の設置を含みます。全国一律で設置を義務付ける法律はありませんが、下水道法・建築基準法関連の告示や自治体条例(東京都では条例で全飲食店に義務化)により、実務上は必須の設備です。設置を怠ると排水管詰まりや階下漏水などの重大なトラブルにつながる恐れがあります。
- ガス工事:ガス機器の台数・火力、建物の引き込み状況により変動します。すでに厨房用の配管がある物件なら抑えられます。
- 空調設備:厨房の熱量や客席の広さ、設置台数により変動します。
外装費(素材ごとの単価目安)
外装は内装工事費の坪単価に含めて見積もられる場合と、別途計上される場合があります。使用する素材による単価の目安は以下のとおりです。
- モルタル塗り壁:約2,000〜8,000円/㎡
- サイディング(窯業系・金属系):約3,000〜15,000円/㎡
- タイル仕上げ:約13,000〜35,000円/㎡(施工方法により幅があります)
- 漆喰などの左官仕上げ:約10,000〜15,000円/㎡
飲食店の場合、上記の壁面仕上げとは別に、看板・のれん・入口まわりのファサード(店舗の顔となる正面部分)の工事費もかかるのが一般的です。外観は集客に直結する部分のため、外装とあわせて予算に組み込んでおきましょう。
② 厨房機器(什器)
内装工事費の坪単価とは別に、厨房機器は個別に購入・リースする費用がかかります。意外と予算オーバーになりやすいポイントです。以下は内訳の一例です。
| 項目 | 金額例 |
|---|---|
| 業務用冷蔵・冷凍庫 | 65万円 |
| 製氷機 | 45万円 |
| 食器洗浄機 | 55万円 |
| シンク | 15万円 |
| オーブン | 40万円 |
| フライヤー | 30万円 |
| 合計 | 250万円 |
機種のグレードや台数によって金額は変動します。各項目のおおよその幅は、業務用冷蔵・冷凍庫30万〜70万円、製氷機30万〜70万円、食器洗浄機40万〜70万円(庫内が大きいドアタイプは80万〜100万円程度)、シンク・オーブン・フライヤーは各10万〜45万円です。グレードの高い機種を揃えると、合計は300万円程度まで上振れすることもあります。
③ 開業時の諸経費(約50万〜300万円)
看板の施工費用や、POSレジの導入費用(1台あたり15万〜30万円+月額利用料5,000円〜2万円程度)など、細かな設備・システムの導入費用も計上しておく必要があります。なお、iPadなどのタブレットを使うタブレット型POSレジであれば、初期費用は端末・周辺機器代の数万円〜十数万円程度、月額利用料も無料〜数千円のプランがあり、導入コストを抑えられるケースもあります。
3. 店舗の投資費用を賢く節約するポイント
店舗投資費用を抑えるポイントは、設備の整った物件を選ぶことです。
- 電気・ガス・給排水・ダクトの容量を契約前に確認する
- インフラ設備の増設や大幅な引き直し工事には高額な費用がかかります。物件選定の段階で、希望する業態の必要容量を満たしているか確認しましょう。
- 居抜き設備の状態を見極める
- 居抜き物件の場合、エアコンや厨房機器がそのまま使えるかプロに見てもらいましょう。修理費用がかさむ場合は、新品への入れ替えやリース・中古品の活用も検討してください。
- 居抜き・スケルトンは初期費用全体で比較する
- 前述のとおり、居抜きは内装工事費が抑えられても造作譲渡料がかかります。工事費だけでなく、造作譲渡料や物件取得費まで含めた総額で比較しましょう。
安さだけで物件を選んでしまうと、後からインフラ追加工事で何百万円も余計にかかるケースがあります。物件自体の「設備力」をしっかり見極めることが、大きなコスト削減につながります。
4. まとめ:適切な投資計画で無理のない開業を
店舗自体の投資費用は、業態や物件タイプ(居抜き/スケルトン)、店舗の坪数によって大きく異なります。
特に居抜きとスケルトンを比較する際は、内装工事費だけを見て「居抜きの方が安い」と判断せず、造作譲渡料も含めた初期費用全体で検討しましょう。費用をただ削るだけでは、客席の居心地や厨房のオペレーション効率を損ない、開業後の売上に悪影響を与えてしまいます。抑えるべきコストと投資すべき部分にメリハリをつけ、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。
自己資金や融資だけでなく、ファンづくりを兼ねたクラウドファンディングや各種補助金の活用など、幅広い資金調達方法を視野に入れて準備を進めましょう。お金の使い方や資金繰りに不安がある場合は、飲食専門のコンサルタントや税理士などの専門家に相談しながら進めるのが安心です。
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